異世界転移の……説明なし!

サイカ

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 翌朝、目が覚めると少しだけ頭がボーッとして……熱はなさそうなのに身体が熱いような気がした。


なんだろう……まぁとにかく今日はイシュマの家に戻るから家に着いたら少し休ませてもらおう。

起き上がるとノックがしてヨシュアが入ってきた。

「おはよう、トーカ。起きていたんだね」

おはよう、と挨拶をしてから顔を洗わせてもらう。

「朝食を用意した。俺は後で食べるからトーカが食べたら仕事に行ってくる」

って…………

「ヨシュア、私今日イシュマの家に戻るんだよね?」

夜とかになるのかな……

「あー……、そのつもりだったんだが……すまない。二、三日は無理そうなんだ」

え…………

「念のためイシュマへの置き手紙には、状況によって二、三日俺がトーカを預かることになるかもしれないとは書いておいたから心配はないと思うが……」

……確かにジョシュアがイシュマの家に来たときもそんなことを言っていたけれど……

「……そうなんだ……三毛猫さんのことが心配だけれど……」

三毛猫さんも心配しているかも……

「すまない……」

うっ…………めちゃくちゃ申し訳なさそう……

「……そ、それじゃぁもう少しお世話になろうかな。ごめんね、迷惑をかけてしまって……」

ヨシュアが眉を下げて微笑み

「迷惑ではないさ。俺はトーカにずっとここにいて欲しいくらいだ」

な……何を急にそんな甘いことを……いや、本人にそのつもりはないのかも……
危うく社交辞令を真に受けてしまうところだった。

「それで申し訳ないのだが午前中はトーカの部屋のドアに鍵を掛けさせて欲しい。メイドや執事が俺の部屋に出入りすることもあるだろうから念のために」

そうか……掃除とかシーツの交換とかもあるしね。

「わかった、私もなるべく静かに過ごすね」

そう言うとホッとしたように微笑むヨシュア。

「昼は少し遅くなるかもしれないが食事を持ってくるから待っていてくれ」

そう言ってまたお菓子とお茶を私の部屋……ではないけれど使わせてもらっている部屋に運んでくれた。

あまり長居をすると太りそうだな……

そんなことを思っていると

「それじゃぁ、いってくる」

そう言って私を抱き締めて流れるように頬にキスをした……
いや……恋人か…………

頬を押さえて離れると

「トーカはしてくれないのか?」

と……からかわれているな……これは……

「はい、しません」

キッパリとお断りするとトーカは固いなぁ、と笑われた……

「今度こそ行くよ」

「行ってらっしゃい」

と見送ると鍵をかけて行った。

ハァ…………と息を吐き頬を押さえる……

キスをされた感触がいつまでも残っている……抱き締められた感覚も……肌なのか……身体なのか……敏感になっているような……
変な気分になってしまう……バレていないよね…… 

気持ちを落ち着かせようとベッドに横になる。

しばらくそうしているとヨシュアの部屋に誰かが入って来た。
どうやらメイドさんが二人で掃除とシーツの交換をしているらしい。

二人の話し声が聞くつもりはなくても聞こえてきてしまう。

「今朝も素敵だったわね、リアザイアの王子様方」

やっぱりそういう話しになるよね。

「えぇ、うちの王子様も素敵だけれど、何て言うのかしら……年上の大人の色気があるのよねぇ」

ノバルトは確かに……ノクトはどうだろう?

「騎士団長様のあの逞しい身体も素晴らしいわ。最初は怖かったけれども私が洗濯物を抱えているときに通りかかって……運んでくださったの」

申し訳ないからとお断りしたのだけれど……と続けて

「私もこちらに用があるからと言って軽々と……あんなに逞しくて……大きな剣も振るうのにこんな気遣いができるなんて反則よ!」

私……好きになってしまうわぁ……と。
そうなんです。うちのオリバーは優しくて気遣いのできる人なんです、と勝手に会話に混ざる。

キャッキャッと可愛い会話を聞いていると、ところで……と話が変わる。

「奥のお部屋には入らないよう言われたけれど……ヨシュア殿下……またなのかしら?」

また? 

「後片付けが大変なのよね……」

ため息をつくメイドさん……なに? ……後片付けが大変って……何なの? 私はお部屋、綺麗に使うよ?

「でもずいぶんと久しぶりよね、よっぽど好みだったのかしら……」

「ヨシュア殿下は……愛が深いというか重いというか……愛されたらそれはそれは大切にされるんだろうけれども……」

けれども……?

「けれども……なによ」

私も気になっているともう一人のメイドさんが聞いてくれた。

「私の母から聞いた話なのだけれどね……」

どうやら彼女のお母さんもお城でメイドとして働いていたらしい。

「ヨシュア殿下が子供の頃」

ノックの音が聞こえてヨシュアの部屋のドアが開く音がした。

「あなた達、時間が掛かりすぎですよ。今はお客様も多いのだから丁寧に手早く済ませられるようにして下さい」

「も、申し訳ありませんっ、メイド長」

バタバタと二人ともいなくなってしまった……
えーー気になるんですけど…………まぁ仕方がないか。

ベッドの上で足をバタつかせて何をしようかと考えるけれども…………そうだ、昨日貸してもらった本を読もう。

昨日の夜は全然読めなかったから最初から。
一人だし部屋は静かだし……怖いもの見たさも手伝って読書がはかどる。

半分ほど読んだところでふぅ、と息を吐き一度本を閉じる。

…………これは……今日も明るいうちにお風呂に入らせてもらおう。

それにしてもメイドさん達、忙しそうだったな……私はすることがないから手伝いたいくらいだ。

何気なくクリーンを試してみるとできた。

え!? ……できた……

急いで起き上がりヒールも試すと身体の変な感覚もなくなって頭もスッキリ。
風邪でも引きかけていたのかな。

フライ……もできたけれどまだ高いところや遠くまで飛ぶのはやめておこう。電池切れのように突然使えなくなると怖いから。

やっぱり使えると便利な力だなぁ。

そんなことを考えながら三毛猫さんも心配だしちょっと抜け出して様子を見に……と思ったけれど戻って来られなくなったらヨシュアに余計な心配と迷惑をかけてしまうよね……

二、三日中には帰れるみたいだからそれまで我慢しよう。
その間にいろいろ試してこの力の様子もみよう。

ドアに耳を当ててヨシュアの部屋から物音がしていないか確認する。

静かだ…………

風魔法を使って鍵を開ける。
結界を張ってからドアをそっと開けてヨシュアの部屋に入り、もう一つのドアに耳を当てる。

誰もいないみたい。
こちらのドアもそっと開けるとやっぱり応接室のような部屋だった。

勝手に出歩くのは気が引けるけれど……廊下に続くドアもそっと開けて誰もいない廊下へ出る。

ヨシュアが一度戻ってくるお昼までに部屋にいればいいよね。
ずっと部屋にいたから少し外にも出たい。

階段を下りて外へ出られるドアを探して廊下を歩いていると忙しそうなメイドさん達とすれ違う。

昼食を食べてヨシュアが仕事に戻ったら、午後からは使用人に変装してお手伝いをしようかな。やることもないし。

そう考えながら歩いていると使用人用の出入口を見つけた。
周りに誰もいないことを確認してからドアを開けて外に出る。
少し離れたところに馬屋がある。低空フライを使いながら近づいていくとやっぱりいた。

ノクトとオリバーの愛馬のメイヒアとグリア。

久しぶりー! と思わず駆け寄ると馬達もパカパカとこちらに近づいてくる。

可愛いねぇ、綺麗だねぇ、大きいねぇ、偉いねぇ、と、とにかく褒めて褒めて撫でて撫でる。

「こんなに遠くまで……会えて嬉しいよ」

私の肩に顎を乗せて甘えてくるメイヒアとグリアにヒールをかける。
ついでに周りに集まり始めた馬達と馬屋にいるみんなにもヒール。

馬達に癒されてまたくるね、とお別れをしてから部屋へ戻る。
ベッドに座り本を開きしばらくするとノックの音が。

「トーカ、待たせたな。昼食にしよう」

ヨシュアが戻ってきた。

「うん、ありがとう」

本を閉じて立ち上がりヨシュアの部屋へ移動して……少し罪悪感を感じつつ食事をする。


それからヨシュアにこの後の予定を確認しながら午後からのことを考え始めた……

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