241 / 251
241
「何度かノックをしたのだけれど、驚かせてしまったかな」
ノバルトが少し首を傾げ眉を下げて微笑む。
考え込んでしまっていて気が付かなかった……イシュマをチラリと見ると目をそらされた……イシュマ?
もしかして……ノバルトのノックを無視したの? こっちを見なさい。
「こんな遅くにどうかされたのですか、ノヴァルト殿」
ニコリと笑顔を作ってノバルトに視線を移すイシュマ……こっちは見ないな……
「イシュマ殿もこんな遅い時間に私のトウカの部屋で何をしているのかな」
と微笑むノバルト……微笑んで……い……る?
お……
「お茶でもいれようかっ」
もう遅い時間だけれど。
「もう寝ようよ、トーカ」
イシュマッ……一緒に寝る感じで言わないで
ノバルトの微笑みは変わらない……けれど……
「トウカ、迎えにきたのだよ。私の部屋にきてくれるね?」
珍しく少し強引な言い方と……私の髪を一房手に取り口付けをするノバルト。王子か。
「トーカ……」
イシュマ……そんな目で見ないで……
ノバルトの部屋に行ったらどうなるんだろう……やっぱり一緒にベッドに入ったりするの……? 婚約者っていってもそうなったばかりだし……
こ……心の準備が……とグルグルと考えていると
「トウカ、すまない。寝る前にトウカの顔を見にきたのだよ」
どうしたらいいかわからない状況に動きを止めてしまった私の頬に触れながらノバルトがそう言う。
そっか……ホッとしたような残念なような……
「……それじゃぁ……そろそろ寝ようか」
なんか疲れたし……もちろんそれぞれの部屋でね。
ノバルトに少し屈んでもらって頬にキスをする。
これくらいはさせてもらおう。
イシュマがいるからさすがに唇にはできなかったけれどノバルトからは唇にキスをされた。
イシュマが私に頬を向けている……しないよ?
おやすみなさい、と諦めたイシュマが部屋を出ていく。
ノバルトは私を抱き締めてからゲートでお城の部屋に戻っていく。
ふぅ……
「寝ようか、三毛猫さん」
布団に入り三毛猫さんを抱き締めて目を閉じる。
……というようなことが何日か続き……
だから明日はお城に行ってそれから皆さんに…………
目を覚ますと朝だった。
いつの間にか寝てしまっていたけれど寝る前に考えていたことは覚えている。
よしっ! と起き上がり身支度を済ませる。
イシュマと朝食を取りながら今日は一緒にお城に行こう、という。
「いいけど……どうしたの?」
お城に行ったら話すよ、ゲートを使って行こうね、というと
「それじゃぁ、行く前にエマの世話をするね」
朝食を食べ終えて後片付けをしてから私もイシュマと外に出てエマと遊……エマのお世話を手伝う。
それから私だけゲートで先にお城のノバルトの寝室へ行く。
結界を張って寝室のドアをそっと開け隣に続く応接室を覗くと廊下へ続くドアが開きノバルトが入ってきた。
「トウカ?」
結界を解く。
「ごめんね、突然きちゃって」
しかも寝室から入るという……
「トウカならいつでも歓迎だよ」
ありがとう……あのね、と考えていたことをノバルトに話す。
ノバルトは……あまり賛成ではなさそうだったけれど、皆に集まってもらおう、と言ってくれた。
ただし、と条件を出されたけれど……
それから一度イシュマの家に戻りイシュマと一緒にもう一度ゲートでお城に移動した。
部屋にはノバルト、ノクト、オリバーとジョシュア、ヨシュアが来てくれていた。
ノシュカトはリアザイアに戻っているらしい。
「みんな忙しいのに集まってくれてありがとう」
注目されると少し緊張するけれど
「私、少しの間ベゼドラ王国を離れます」
驚いた様子を見せるけれどまだ誰も口を開かない。
「また突然いなくなったと思われたら迷惑をかけてしまうから、ちゃんと伝えてから行くね」
ノバルト達がリアザイアに帰る時まで
「レクラスでやりかけの仕事をしてくる。お世話になった方にもご挨拶をしてくるよ」
そうか、と頷くジョシュアと俺も行こうかなぁ、と呟くヨシュア。
「レクラスに行くということはまた男装するのか」
と笑うノクト。
「トーカは男装しても可愛いから心配だな」
オ……オリバーありがとう。
「夜は僕のところに戻ってくるよね?」
相変わらず誤解を招くような言い回しをするイシュマ……
ノバルトは私が困るとわかっているから眉を下げて微笑むだけに留めている。
「レクラスで勤めていたお屋敷に寮があるから戻らないよ」
たぶん私の部屋はまだあるはず……セオドアが使っていたと思うし。
「リアザイアへ行ったら一緒に過ごす時間はたくさんあるだろう? 少しの間我慢だな」
寂しそうな顔をするイシュマをなだめるヨシュア。
たまにはお兄さんっぽいこともするんだ……
「今何か失礼なことを考えていなかったか」
おっと、顔に出てしまったみたい。
「とにかく、しばらく留守にするから心配しないでね」
出発は明日。ちゃんとみんなに伝えられたから安心して出発できる。
みんな忙しいのにありがとう、ともう一度お礼を言って解散した。
私はイシュマと家に戻りお茶をいれる。
「トーカ……」
寂しそうな目をしたイシュマと目があってしまった。
「ごめんね、突然こんなこと言って」
驚かせてしまったことを謝る。
「レクラスでもお世話になった人達がいて、私が突然いなくなって心配しているかもしれないから」
ちゃんとお礼と挨拶をしてくるよ、と。
イシュマは納得しているようなしていないような顔で頷く。
今は、私に依存しているようなところもあるけれど……
「リアザイアではたくさん出掛けてたくさん友達を作ろうね」
トーカがいればいいんだけど……と言うイシュマの呟きは聞こえなかったことにして少し乱暴に頭を撫でる。
「それから今夜は私、部屋にはいないから……」
「なんで!?」
一緒に寝ようと思っていたのに……って……寝ませんよ。
そう……これがノバルトが言っていた条件。
「今夜は私の部屋で過ごすこと」
そう言っていた……そう言っていたんだよ……
「……ノバルトのところに行くから……」
なんとなく声が小さくなってしまう……
「っノヴァルト殿の部屋で一晩過ごすの!? それってっ……」
と大きな声で繰り返すイシュマの口を手で塞ぐ。
「と……とにかく、明日はそのままレクラスに向かうから」
そう言うとイシュマは夜まで私の後ろをついて回って大変だった……
けれどもノバルトのところに向かう直前には
「気を付けて……ちゃんと帰ってきてね」
と見送ってくれた。
三毛猫さんも一緒に来るかと思ったけれども今夜はここに残るらしい……なんか……気を遣われているような……
ゲートに三毛猫さん用の小さな出入口を作ってあるから好きなところに出入りできるからね、と伝えて撫でる。
行ってきます、と言いゲートをくぐりノバルトの部屋へ……
「今晩は、トウカ。約束通り来てくれたね」
いつものきっちりとした格好とは違いゆったりとしたパンツにガウンを羽織っているノバルト。
色気がすごいんですけど……
「……今晩は、ノバルト」
ノバルトは微笑み私をベッドに座らせてからお茶をいれてくれた。
「来てくれてありがとう。少し話しをしよう」
そういえば……プロポーズを受けた後、いろいろとありすぎてノバルトとゆっくり話す時間がなかった。
「トウカに一人で考えさせてしまっているのではないかと思って……」
珍しく不安そうな顔をするノバルトが少し幼く見える。
確かに……国王になるノバルトと結婚するということは私が考えている以上の責任が伴うものだと思う。
私はまだまだ知らないことも学ばなければならないことも多くて正直不安だらけだ。
「私の妻になることでこれからのことを不安に思っていると思う」
妻……なんか嬉しい……
「トウカ、不安に思っていることはどんなに小さな事でも私に話して欲しい」
二人で考えよう、と。
ノバルトは凄いなぁ……たくさんの仕事をこなして私のことまで考えてくれて……
「……うん、ありがとう」
嬉しくて微笑む。
「トウカの心の準備が出来るまで無理に話しを進めるようなことはしないからね」
優しい……その優しさが嬉しい。
「ただ、トウカは今のままでも国民に受け入れてもらえると私は思っている」
そうかな……
「この世界をよく知らなくても、トウカはすでに各国の王族と信頼関係を築いている。これは私でも難しいことだ」
私達はただ純粋に手を差しのべること、差し出された手をとることが難しくなっていた、と。
利害、損得……立場上考えなければいけないのだろう……
「私がトウカに望むことは……」
ノバルトが優しく微笑む。
あなたにおすすめの小説
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
【完結】「元カノが忘れられないんでしょう?」と身を引いた瞬間、爽やか彼氏の執着スイッチが入りました
恋せよ恋
恋愛
「元カノが忘れられないなら、私が身を引くわくべきよね」
交際一周年、愛するザックに告げた決別の言葉。
でも、彼は悲しむどころか、見たこともない
暗い瞳で私を追い詰めた。
「僕を捨てる? 逃げられると思っているの、アン」
私の知る爽やかな王子の仮面が剥がれ落ち、
隠されていた狂おしいほどの独占欲が牙を剥く。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
魔物が棲む森に捨てられた私を拾ったのは、私を捨てた王子がいる国の騎士様だった件について。
imu
ファンタジー
病院の帰り道、歩くのもやっとな状態の私、花宮 凛羽 21歳。
今にも倒れそうな体に鞭を打ち、家まで15分の道を歩いていた。
あぁ、タクシーにすればよかったと、後悔し始めた時。
「—っ⁉︎」
私の体は、眩い光に包まれた。
次に目覚めた時、そこは、
「どこ…、ここ……。」
何故かずぶ濡れな私と、きらびやかな人達がいる世界でした。
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。