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ユニークスキル【黄泉返り】
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僕を残した後の5人は全員神託の儀にてスキルを賜った。
スキルを得た元クラスメイト達の表情は様々だ。大いに喜ぶ人、不敵な笑みを溢す人、眉間に皺を寄せている人、悔しそうな表情をしている人、全く表情に出さない人本当様々だ。その前に僕は皆の事を元クラスメイト達と表現した。その理由は至ってシンプルだ。何故なら、僕達はこの異世界においてライバル同士だからだ。これは松平君が言っていた事と同じ、お互いが今日からライバルであり、ライバルに態々賜ったスキルは教えたりはしないだろう。
そんな事を思っているとハイエルフじいさんが最後の一人である僕に声を掛けてきた。
「さて、ここに残す最後の勇者候補の方は貴方様お一人だけですな。どうされますか?【神託の儀】を受けられますかな?」
「はい。勿論。」
受けるに決まってるじゃありませんか!じゃないとイキナリ戦闘になったら直ぐ死んじゃうんでしょうよ。そんな無理ゲーは真っ平御免だ。
「流石は勇者候補殿!ささっ!では此方へ。」
そう言ってハイエルフじいさんと僕は社殿の奥へと向かった。
ゴクリッ!僕は思わず息を飲んだ。こんな緊張したのは入試の時の面接とクラス全員に教壇の前で自己紹介をした時以来だ。
光の射す社殿の奥へと進むとそこには一本の御神木が陽の光を一身に浴びて何とも幻想的というか荘厳というか、兎に角凄い。御神木にはしめ縄がされ、小さな鳥居が立っている。僕は鳥居をくぐり御神木の前にある大きな盃の前に立った。そこには神酒が並々と注がれている。
「では勇者候補殿!この神水に勇者候補殿の血を1滴垂らして下さいませ。その血が水面となって勇者候補殿に相応しいスキルを指し示す事でしょう。」
そう言ってハイエルフじいさんは己の腰に下げている小さな短剣を手に取り僕に差し出してきた。
おいおい!その短剣大丈夫なの?消毒とかさ!皆同じ短剣を使ったのかな?本当大丈夫なの!?後で化膿とかしない訳?逆に異世界だから大丈夫なのかな?
僕はこれからこの世界で最初の分岐点に立たされているのにも関わらずこんなしょうもない事を頭の中で考えていた。
僕は渡された短剣を手に取り、切っ先を自分の右人差し指の腹に押しあてた。ほんの少しだけ力を入れると指先から鋭い痛みが走る。
するとそこからじわりと赤い血液が滲み出てきた。
僕は先程ハイエルフじいさんから説明を受けた通り血液を1滴だけ神水の入った盃に垂らした。
すると神水の入った盃に波紋が広がりそこから何やら文字の様な物が浮かび上がってきた。ハイエルフじいさんは盃を覗き込み何やら渋い顔をしている。
「うぅ・・・むぅ・・・この【神託の儀】を取り仕切る神官の職に就いてから随分経ちますが、この様なスキルは初めてですじゃ。どんな効果のあるスキルか皆目見当がつきませぬ。」
「えっ!?そんなに悪いの?僕のスキル!?」
思わず口に出してしまった。
「いえ。そうではございませぬ。儂も何人何十何百の人のスキルを見て来ましたが、貴方様のスキルは初めて眼にするスキルにございます。」
「えっ!?そうなんですか?結局僕の賜ったスキルって一体何なんですか?」
「それは・・・貴方様本人が直接ご覧になると宜しいでしょう。」
僕はスキルが記された盃を覗き込んだ。
そこには【黄泉返り】と記されていた。
【黄泉返り】!?何それ?僕自身も驚きを隠せないでいる。元いた世界のライトノベルやゲームでも目にした事の無いスキルがそこには確かに記されていた。これが僕の賜るスキル。
「勇者候補殿、貴方様のスキルはもしかしたらユニークスキルと呼ばれる大変珍しいスキルなのかも知れませぬ。これから貴方様にはそこに記されたスキルの入った盃を一気に飲み干して頂きます。それで体内にスキルを取り込むのです。これにて【神託の儀】終了となりまする。」
何かこのじいさん今サラッと面倒臭い事言ったよね?
えっ!?この並々と神水が注がれた盃を飲み干せって言った?
しかも自分の血液が入った盃を!血文字が書かれた盃をですか?
うへぇ・・・滅入る。でもこれを飲まないとスキルを修得出来ないって事でしょ?僕は意を決して両手で神水の入った盃を手に取り一気に飲み干した。
「ぷはーうっ!流石にちょっと血生臭い。それにお腹が水分の摂りすぎでガボガボだよ。うぷっ!」
今にも口からリバースしそうだったけど、両手で口を必死に押さえて何とか喉の奥から込み上げてくる何かを飲み込んだ。
ほんの少し経つとお腹の辺りが少し温かい感じがしたと思ったら急に光輝き頭の中で声が響き渡った。
「ユニークスキル【黄泉返り】を修得しました。」
!!!何っ!?今の声は!?頭の中に声が響いたけど?
戸惑って挙動不審になっている僕を尻目にハイエルフじいさんが話出す。
「無事にスキルを賜ったみたいですな。これにて【神託の儀】を終了となりまする。」
今のがスキルを賜ったっていう合図なの?確かに頭の中に声が響いたみたいだけど・・・まだまだこの世界は知らなければならない事が多すぎるみたいだ。
僕達はまだ勇者候補としてのスタートラインに漸く立ったばかりなのだと自覚しなければならなかった。
スキルを得た元クラスメイト達の表情は様々だ。大いに喜ぶ人、不敵な笑みを溢す人、眉間に皺を寄せている人、悔しそうな表情をしている人、全く表情に出さない人本当様々だ。その前に僕は皆の事を元クラスメイト達と表現した。その理由は至ってシンプルだ。何故なら、僕達はこの異世界においてライバル同士だからだ。これは松平君が言っていた事と同じ、お互いが今日からライバルであり、ライバルに態々賜ったスキルは教えたりはしないだろう。
そんな事を思っているとハイエルフじいさんが最後の一人である僕に声を掛けてきた。
「さて、ここに残す最後の勇者候補の方は貴方様お一人だけですな。どうされますか?【神託の儀】を受けられますかな?」
「はい。勿論。」
受けるに決まってるじゃありませんか!じゃないとイキナリ戦闘になったら直ぐ死んじゃうんでしょうよ。そんな無理ゲーは真っ平御免だ。
「流石は勇者候補殿!ささっ!では此方へ。」
そう言ってハイエルフじいさんと僕は社殿の奥へと向かった。
ゴクリッ!僕は思わず息を飲んだ。こんな緊張したのは入試の時の面接とクラス全員に教壇の前で自己紹介をした時以来だ。
光の射す社殿の奥へと進むとそこには一本の御神木が陽の光を一身に浴びて何とも幻想的というか荘厳というか、兎に角凄い。御神木にはしめ縄がされ、小さな鳥居が立っている。僕は鳥居をくぐり御神木の前にある大きな盃の前に立った。そこには神酒が並々と注がれている。
「では勇者候補殿!この神水に勇者候補殿の血を1滴垂らして下さいませ。その血が水面となって勇者候補殿に相応しいスキルを指し示す事でしょう。」
そう言ってハイエルフじいさんは己の腰に下げている小さな短剣を手に取り僕に差し出してきた。
おいおい!その短剣大丈夫なの?消毒とかさ!皆同じ短剣を使ったのかな?本当大丈夫なの!?後で化膿とかしない訳?逆に異世界だから大丈夫なのかな?
僕はこれからこの世界で最初の分岐点に立たされているのにも関わらずこんなしょうもない事を頭の中で考えていた。
僕は渡された短剣を手に取り、切っ先を自分の右人差し指の腹に押しあてた。ほんの少しだけ力を入れると指先から鋭い痛みが走る。
するとそこからじわりと赤い血液が滲み出てきた。
僕は先程ハイエルフじいさんから説明を受けた通り血液を1滴だけ神水の入った盃に垂らした。
すると神水の入った盃に波紋が広がりそこから何やら文字の様な物が浮かび上がってきた。ハイエルフじいさんは盃を覗き込み何やら渋い顔をしている。
「うぅ・・・むぅ・・・この【神託の儀】を取り仕切る神官の職に就いてから随分経ちますが、この様なスキルは初めてですじゃ。どんな効果のあるスキルか皆目見当がつきませぬ。」
「えっ!?そんなに悪いの?僕のスキル!?」
思わず口に出してしまった。
「いえ。そうではございませぬ。儂も何人何十何百の人のスキルを見て来ましたが、貴方様のスキルは初めて眼にするスキルにございます。」
「えっ!?そうなんですか?結局僕の賜ったスキルって一体何なんですか?」
「それは・・・貴方様本人が直接ご覧になると宜しいでしょう。」
僕はスキルが記された盃を覗き込んだ。
そこには【黄泉返り】と記されていた。
【黄泉返り】!?何それ?僕自身も驚きを隠せないでいる。元いた世界のライトノベルやゲームでも目にした事の無いスキルがそこには確かに記されていた。これが僕の賜るスキル。
「勇者候補殿、貴方様のスキルはもしかしたらユニークスキルと呼ばれる大変珍しいスキルなのかも知れませぬ。これから貴方様にはそこに記されたスキルの入った盃を一気に飲み干して頂きます。それで体内にスキルを取り込むのです。これにて【神託の儀】終了となりまする。」
何かこのじいさん今サラッと面倒臭い事言ったよね?
えっ!?この並々と神水が注がれた盃を飲み干せって言った?
しかも自分の血液が入った盃を!血文字が書かれた盃をですか?
うへぇ・・・滅入る。でもこれを飲まないとスキルを修得出来ないって事でしょ?僕は意を決して両手で神水の入った盃を手に取り一気に飲み干した。
「ぷはーうっ!流石にちょっと血生臭い。それにお腹が水分の摂りすぎでガボガボだよ。うぷっ!」
今にも口からリバースしそうだったけど、両手で口を必死に押さえて何とか喉の奥から込み上げてくる何かを飲み込んだ。
ほんの少し経つとお腹の辺りが少し温かい感じがしたと思ったら急に光輝き頭の中で声が響き渡った。
「ユニークスキル【黄泉返り】を修得しました。」
!!!何っ!?今の声は!?頭の中に声が響いたけど?
戸惑って挙動不審になっている僕を尻目にハイエルフじいさんが話出す。
「無事にスキルを賜ったみたいですな。これにて【神託の儀】を終了となりまする。」
今のがスキルを賜ったっていう合図なの?確かに頭の中に声が響いたみたいだけど・・・まだまだこの世界は知らなければならない事が多すぎるみたいだ。
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