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山月 春舞《やまづき はるま》

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【PW】AD199907 《新しい道》

背後にあるもの 3

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「中継か?」

   白い狐のお面は、机の横に立ち黒い狐のお面に確認すると黒い狐のお面はゆっくりと頷いた。

「その様ですね、恐らくその子は薬が酒で酩酊状態だったんでしょ、そこに入り込まれたみたいです、それでその時にリンクに初めてダイブしたようですね」

   黒い狐のお面の応えに白い狐のお面は納得した様に頷くと岩倉の横に立ちその肩を叩いた。

「それで、お前はリンクに目覚めてからどうした?」

   次に質問をしたのは、白い狐のお面だった。
   岩倉は、何が起きているのか分からないまま微かに震えながら白い狐のお面の男を見ていた。

「どうやら、目覚めた力で何人かにその効力を試していたようで、最初はオヤジ狩りのサラリーマン、次にヤクザ、そして自分のグループのリーダーに使用して、グループを乗っ取った様です」

   しかし、その質問に応えたのは岩倉ではなく黒い狐のお面だった。

「なるほどね、それなら何でその歳にしてグループのリーダーになれたか説明はつくな、テストは良好って感じだな」

「はい、本題は何時でも大丈夫です」

   黒い狐のお面が応えると白い狐のお面はゆっくりと岩倉の顔を覗き込んだ。

「お前が最初に殺した竹田を抜いた3人、あれはどういう経路で言われた?」

   岩倉は、表情を強ばらせたまま首を横に振ったがその抵抗に意味は無く、黒い狐のお面がすぐに応えを告げた。

「リストを渡された様です、1人目から中渡の名前から全員分に渡されていた様です」

「計何人殺す予定だった?」

「約20名、全員の前の横にカタカナでナガタ、クダン、ハンゾウ、タケバシと書かれています」

「次に何故藤を狙った?あれはお前の意思であってその後ろにいるヤツの指示じゃなかったろ?」

「最初はそうらしかったですけど、竹田の一件以降にどうやら、接触があったらしく藤を学校で狙えとの指示だったらしいです」

「その指示は誰から?」

「やはり、別のギャルが接近してきて伝えてきてますね」

「なんなんだよ!!お前ら!!」

   白黒の狐のお面達のやり取りに岩倉が怯えながら立ち上がると白い狐のお面から平手打ちが飛んできた。その一発で岩倉の戦意は喪失し、呆然と立ち尽くすだけだった。

「ゴチャゴチャ動くな面倒臭い」

   白い狐のお面は、平手打ちで呆然としている岩倉の両肩を掴み再度その場に座らせた。

「何故、学校で藤を襲えって聞かなかったのか?」

「えぇ、学校に乗り込むって事がスリル満点で楽しそうだって思って聞いてませんね」

   白い狐のお面の男は呆れた溜息を漏らしながら岩倉を見下した。

「まだ聞きたいことはありますか?」

   黒い狐のお面からの問いにもう無いと言う様に白い狐のお面は、肩を竦めた。

「もし無いなら私が聞きたい事を一つ」

   岩倉は、怯えながら黒い狐のお面に目を向けた。

「3月15日、貴方は稗田阿徒という人物を襲いましたね?彼の名前はリストになかった、それなのに何故彼を?」

   岩倉は、口をへの字にしながら首を横に振った。

「織部の独断に対して彼等からの警告などの注意は?」

   織部その名前に肩をピクりと揺らしながら岩倉は、顔を俯かせたが白い狐のお面が頭と顎を掴み無理矢理顔を上げさせた。

「なるほど、わかりました」

   黒い狐のお面もその質問を終えるとマジックミラーに目を向け、何も反応がないのを確認すると次に暁の方へ目を向けた。

「何かありますか?」

   暁はそう聞かれ、岩倉の方へ目を向けた。
   何か聞きたいこと…

「何故、竹田を殺した?」

「どうやら、彼女を襲った後に近所を警察が捜査しているのを知ってかなり恐れていた様で自首しようとして目障りになったらしいです」

「最初から自分で藤を殺そうとは、思わなかったのか?」

「織部が4月の殺し以降、姿を消したので派手な動きはしたくなかったみたいですね、だから竹田に襲う様に命令したらしいです」

「その織部って誰だ?」

「協力者ですね、最初の3件は2人で行動していたらしいですが、3件目以降に織部は行方不明になった」

「その織部も接続者か?」

「そうみたいですね、どうやら存在を隠す能力だった様です」

「それは、織部の姿をそれとも自分以外の人間も隠せるのか?」

「の様です、3件目までの犯行は織部によって姿を隠してもらって背後から氷のナイフで刺す、というのが彼等の手口のようです」

   暁の質問に黒い狐のお面が澱みなく応える。
   その度に自分の所業が暴かれていく岩倉は、少しづつ肩を落とし、顔を悲痛に歪め、その問いが終わる頃にはなんとも情けない顔になっていた。

「最後にお前に四課の情報を流してたのは誰だ?それもさっきのギャルみたいなやつか?」

「どうやら、違うみたいです、連絡は携帯電話、声の主は男で、口振りからすると同じグループと捉えられますが、彼にそれ以上の情報はないみたいです」

   暁が全ての質問を終えると、それが分かっていたかの様に白衣を着た体格の男達が入ってきた。

「終わったようなので病室へ移送しますがよろしですか?」

   そう声をかけられ暁は頷き、白と黒の狐のお面達も頷いた。

「にしても、挑発とは久し振りに面白もの見せてもらったよ」

   岩倉が引き摺られる様に部屋から連れ出されると白い狐のお面が暁の肩を叩きながら言ってきた。

「今日はボイスチェンジャー使ってないんだな」

   暁がそう軽く言うと白い狐のお面はピタリと止まったかと思うと豪快に笑いだした。

「こりゃ驚いた!よく俺だと気づいたね!」

   本当に驚いているのか大きく手を叩きながら笑い、白い狐のお面は黒い狐のお面の方を向いたが黒い狐のお面はそんな白い狐のお面に呆れている様な雰囲気だった。

「体格と雰囲気でな、あとは態度」

「それでも、気づけるのはいい観察力の持ち主だね、大浦暁警部補殿」

   白い狐のお面は、そう言いながら暁に向かい敬礼をした。

「そいつは、どうも、褒めてくれるならご褒美くれよ、お前らは何もんだ?」

   暁がそう聞くと白い狐のお面は、マジックミラーを方を向いた。

「褒美だなんて、聞いてくれれば幾らでも答えるさ、俺達は文部省の特殊風土調査室、別名【三本柱】のモノさ」

   文部省?
   急に思いもしない機関の名前を出され暁は、戸惑った。

「何故、文部省なのか?ってツラだね?」

   そんな暁の戸惑いを見透かしたかの様に白い狐のお面が言うと暁は咄嗟的に黒い狐のお面を見ていた。

「残念ながら、私は人の記憶は読めても心情までは、読めません」

   だとしたら…
   暁は、そう思うと自分の両頬を叩いた。
   もし、考えを読んでいないのなら今の自分のポーカーフェイスが解けているという事になる、だとすると自分は今目の前の起きている状況に冷静に対応出来ていない何よりの証拠とも言えた。

「いいね、やっぱり、アンタは面白い、バカ真面目って感じだな」

「隊長」

   尚も暁を揶揄う様に話す白い狐のお面に対して黒い狐のお面が窘めたが白い狐のお面は、お構い無しに暁へと近づいて行った。

「俺の名前はハル、その黒いお面はテツって名前だ、アンタは陰陽寮ってのを知ってるよな?昔江戸時代まで存在していた占星術なんかを駆使して、国を支えた組織だ」

   唐突な白い狐のお面、ハルの言葉に何を言いたいのかわからなかったがとりあえず話の先を聞く為に静かに頷いた。
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