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山月 春舞《やまづき はるま》

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【PW】AD199907 《新しい道》

背後にあるもの 4

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   陰陽寮、確か陰陽師達が所属していた組織名だ。全身は飛鳥時代からでその名で広まったのが平安時代だったか。
   星を読み、土地を読み、時刻、暦を司った組織だ。

「歴史上は明治維新の時に解体、無くなっとされているが実際は違う、名前を変えて一部の陰陽師達は国に仕えた、それが俺達【三本柱】だ、まぁ表向きは文部省、特殊風土調査室と名乗っているけどね」

   陰陽寮を源流に持つ組織…そんなの聞いた事はない。だがハルが嘘ついている様には思えない、だとしたらこの話は本当なのか…
   もし本当だとしてその陰陽寮がリンクがどうして繋がるのか?

「なんで、陰陽寮って顔してるけど、要は同じなのさ全部」

「同じ?」

「そっ、天国、地獄、霊界、幽世、色んな宗教や神話、国の歴史から紡がれてきたもうもう1つの世界、それを俺達は【想念の根源】と呼び、陰陽師、魔術師、呪術師、法師なんかの術者を【リンク】と呼んでいる」

   壮大な話に客観的な理解は追いついても、それ以上の感覚的な理解が追いつかない。
   何を言っているのか理解できるが何を語っているのか理解が出来ない。

   唐突にハルから並べられる言葉に暁は、呆然とする事しか出来なかった。
   ハルもそれは理解しているのだろう、黙る暁を見ながら肩を竦めると話を続けた。

「俺が何を言いたいかと言うなら、呼び名が違うだけなんだよ、時代、国、宗教、途中経過が違うだけで、あとは同じなのさ、だから俺達の組織は昔からある」

「なら、こんな事は昔から起きていた事なのか?」

   とりあえず、客観的な理解だけで暁は言葉を放つとハルはゆっくりと首を傾けた。

「あった、だがここまでの大きな規模ではなかった、拡大したんだ今年に入って唐突にね」

「拡大?また何が?」

「見識者達が多く現れた、今までも居なかったわけじゃない、だが数十年に1人2人現れればいいねって位だったのが何千、下手したら何万という単位で現れた可能性がある」

   見識者、確か少し前に崇央から教えられた、近い未来から来た接続者の事だと言っていたが…それが何千、何万という単位で現れた…
   話がいきなり壮大な事になり暁は、困惑する事しか出来ずにいた。

「なんでそんな事に…」

   困惑の中に生まれた素朴な疑問だった。

「それは、いずれ。今の問題はそこじゃなく、その見識者の還ってきたって事実さ」

「見識者が還ってきたらなにがあるんだ?」

   暁がそれを聞くと突然、出入り口から3人の人影が入ってきた。
   暁より先に部屋に居た、高岩と泰野、そしてもう1人の物静かそうな壮年の男だった。

「それ以上は、いち監視官に話すべき内容では無いと思うが?」

   そう口を挟んできたのは、泰野と呼ばれた若い男だった。
   重大な秘密なのか、その表情には焦りの色さえ見えた。

「そうか?むしろ俺からすると説明するのが遅過ぎるとさえ思うが?」

   ハルは、そう言いながら泰野の顔を覗き込む様に言ったがそれを庇う様に物静かそうな壮年の男が立ちはだかった。

「ハル、本当にそれは話して大丈夫な内容か?それは私さえ知らない内容だぞ?」

   物静かそうな壮年の男がそう聞くとハルは、首を横に傾けたかと思うとゆっくりと天を仰いだ。
 
「まぁ知っててもいいし知らなくてもいいかもね、それにこの人ならその事実をいずれ知る事になるだろうし」

   ハルは、そう言うと興味が失せた子供の様にユラユラしながら立ち上がると部屋を後にした。
   全員が無言でその背中を追っているとハルは、すぐに出入り口から顔を出してきた。

「そうだ、大浦さん、アンタにお土産があるんだった。後で稗田さんに渡しておくから受け取っておいて」

   それだけ言うと手を振りながらハルは行っていしまった。

「稗田さん…って誰?」

   暁は、徐に呟くと物静かそうな壮年の男が暁に向かい手を挙げた。

「私が稗田です」

   改めてそう言われて暁は、稗田に会釈をしていた。


   ハルが出ていってから部屋の中には、妙な沈黙が流れていたが誰とも言わずにゆっくりと部屋を後にし、最後に残った暁はハルの言葉の真意を頭の中で追い求めていた。
   大量の見識者達の帰還、それが何を意味するのか…
   何故ハルは、それを態々あの場で話したのか…
   何かがある気がしてどうしようもなかったがその答えを得る為には情報とそれを本当の意味で理解出来る経験が足りなかった。

   埒が明かない、暁は、そう結論を出すと部屋を後にして、隣の部屋に向かうと崇央がマジックミラーを呆然と眺めていた。

「大丈夫か?」

   暁がそう声を掛けると崇央は盛大な溜息を漏らし天を仰いだ。

「わからん…」

   相変わらずな不遜な態度だが、疲労が溜まっているのは良くわかった。

「以前、お前が口走った三本、あの組織の名前だったんだな」

   暁がそっと聞くと崇央は、盛大な溜息を漏らしながら天を仰いだ。

「そう、アイツらは、昔から有った組織だ、だけどそれを知っていたのは警察でも極一部の上層部だけ、高岩さんも今回の事が起きない限り知らなかった…なぁ俺騙されてないよね?」

   崇央が弱々しく聞いてきた。
   その気持ちも十分に理解出来る。自分もあの時、岩倉にやられたり、星見の言葉に助けらたり、そして伊澄の事件がなければ到底今でも壮大なドッキリを仕掛けられているのでは無いかと疑ってしまう。
   それも、これも、捜査員、管理職としてのテストだったと言われた方がまだ現実的だとさえ思う。

   だがあれは、現実に起きた事だし、感じた事だ。信じられないという頭と事実だと言う肉体の感覚。
   完全に受け入れるまで時間が掛かるがその土台があると言うのは、まだ幸のなのかもしれない。
   恐らく崇央は、暁がした様な体験はしていないのだろう、だからこそ管理者で有りながら1人だけ置いて行けぼりを感じているのだろうから。

「残念ながら現実だ、先に帰るけどお前は?」

   暁がそう言うと崇央は、疲れた様に俯いた。

「ここの奴等の書類をある程度、把握持っておきたい、それを見てから帰るからお先にどうぞ」

   崇央にそう言われ、暁は軽く手を挙げながら病院の出口へ向かった。
   途中の出入り口で1人の男が立っていた。
   黒い狐のお面のテツだった。
   テツは、暁に会釈するとゆっくり近づいてくると持っていた肩掛け鞄を渡してきた。

「ハルからです、これを貴方に渡してくれと」

   暁は、それを受け取り中を確認すると5本の小太刀サイズの木刀が入っていた。

「これってさっき岩倉に使ってた」

   暁は、そのウチの1本を取り出しそっと掲げた。

   漆が塗られているのだろう、窓から射す光を反射させ黒く光るそれは何処か威厳のあるモノだと思わせた。

「それは、貴方に1本、残りの4本を接続者達に渡して欲しいそうです」

「これを?何の為に?」

「それは、きっと渡せばわかります。それと伝言を、もし俺と話したければ藤にハルと話したいと言えば伝わる様にしておくとの事です」

   それだけを伝えるとテツはその場から離れて行こうとする。

「ちょっとまて、なんでこれを?」

   そんなテツの背中に暁が話し掛けるとテツはゆっくりと振り返った。

「さぁ、私にはわかりかねます。ただ…」

「ただ?」

「忠告を一つだけ、貴方は岩倉の言う、上位者に目をつけられた、それだけは覚えていおいた方が良いと思います」

   テツは、そう告げると再び会釈をして歩いて去っていった。

   暁は、テツのその背中をただ黙って見送ることしか出来なかった。

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