LINK

山月 春舞《やまづき はるま》

文字の大きさ
47 / 108
【PW】AD199908《純真の騎士》

残滓の想い

しおりを挟む
「ブチかませ!!煌佑!!」

   響く声に縁は、防御の腕を下ろすと金髪を探す為に視線を走らせた。
   ミスった、何をやっているんだ!!
   自分への悪態をつきながら状況が最悪な方にむかっている事を確認した。

   一瞬の目眩し、その一瞬が事態を最悪な方へと向けている。
   金髪が何かを隠しているのは気づいていた、だがそれが何かまでは、わかっていなかったからこそ、慎重に攻撃をしていた。
   間合いを測り、持久戦を仕掛けていた。しかし、今はそれが逆に事態を悪化させている。

   暁の咆哮が向いてる先に視線を向けると既に金髪はフェンスを飛び越え公園内に入っていた。
   間に合うのか!?ハルは何をしている!?
   周囲に視線を軽く向けながら縁は、フェンスを飛び越え様として足をかけた時に違和感で足を止めてしまった。

   最初の違和感は、ハルだった。
   一番、金髪から距離があったのはハルだ、つまり直ぐに動けるのはハルの筈、本来なら公園内に居てもおかしくないのに、その姿は道路で公園の方を見ながら突っ立ている。
   何をしているんだ!?
   苛立ちに近い、疑問を抱えながら視線を巡らせるとそこに翡翠の煙が目に付いた。

   その煙は、ゆらりと揺れながら人の姿を象っている。
   縁は、その姿に視線が止まり、そして足が止まった。
   まさか…
   そして、直ぐに視線を公園内に向け、もう1つの人の姿を象る煙を見つけた。
   それは、正面を向き、しっかりと戦う意志を見せる姿、見間違う筈がない。

「煌…佑…」

   気づくと縁は、その名を呟いていた。
   暁の体、そして、小さな煌佑の体からかつて縁がしっている2人のその当時の姿がユラリと蜃気楼の様に揺れていた。

   金髪のもつ包丁が陽光に反射してキラリと光る。
   振りかぶられた包丁は、守る様に立ちはだかる煌佑に向けられている、煌佑はバットを正眼の構えで待ち受けていた。

   縁は、陽光の反射に我に返るとフェンスを飛び越していた。
   間に合わない…迫る金髪に煌佑が金髪の胸元を狙い突きを出すがギリギリで気づいたのか最初からそれが狙いだったのだろうか、金髪の体は急停止し、突きの威力を殺す様に躱した。

   突き出された、バットが引く様に空中で弧を描くと同時に金髪が再度前に出る。

   狙いは、煌佑の肩口か蹴りで退ける事だろうか。
   金髪の片足がゆっくりと後方に引かれる。

   やはり蹴って退かすつもりか、しかし、それよりも早く煌佑は膝折、前屈みなると気づくと肩に担ぐ様に持っていたバットをスライディングしながら一気に金髪の軸足の脛を目掛けて振り抜いていた。

   鈍い音共に響く悲鳴、脛を打ち抜かれた金髪は、その勢いのまま煌佑から逸れる様に前に転げ倒れていた。

「クッソがぁぁぁキィィィ!!」

   金髪は、痛みに顔を歪めながら体を捻り、包丁を横にいる煌佑に向かい振り抜く。

「そうは、させねぇよ」

   その手を追いついた縁が地面へと踏みつけた。
   金髪の悲鳴が再度響き渡る。 
   縁は、その金髪の顔面目掛けて拳を振り落としその意識を絶った。

《あざっす》

   その声に縁の目がゆっくりと煌佑へと向き、自然とその視線は上に上がっていく。

   翡翠の煙で象られたその大人の煌佑は苦笑いしながら軽く会釈をすると粒子になり空へと消えていった。

「バカヤロ…」

   縁は、そんな煌佑を見送ると小さな煌佑の頭を撫でながら暁の方へ視線を向けた。

   そこには、翡翠の煙の暁の残滓がハルと縁を見ながら、いつものふてぶてしい笑顔で手を振り、そして粒子となって空へと消えていった。

「最後の最後まで、コイツらと来たら…」

   そう呟きながらハルが苦笑いを零し縁に近づくと気絶する金髪に対して結束バンドで拘束した。

「全く、本当に、コイツららしいよ…」

   縁もまた、そう言って苦笑いを零した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...