96 / 108
【PW】AD199909《箱庭の狂騒》
揺れる波
しおりを挟む
「俺は……」
彼は、そういって自分のしでかした事を知り、ただ言葉を失っていた。
降り出した雨に晴人は、何も言わずその場をゆっくりと去っていた。
彼にも罪があるなら自分もまた同じ様に罪がある。
わかっていた、止める者が居なければいずれは、力は、暴走し、余計な破壊を生むと。
わかっていた筈だ、気をつけていた筈だ。
だけど、止める事が出来なかった。
爺さんが亡くなり、2人の兄姉弟子達は、それぞれの道を歩んでいる。
そんな中にあった、自分が気を許せる存在を失うのが怖かった。
だから目を背けた、その結果、失ってしまった。
あの時、なにか声掛けていたら変わっていたのか。
そんな後悔の自問自答を何度も繰り返しながら同じ結果に辿り着く度に晴人は、溜息と同時に煙を吐く。
そんな自分の背中見ていたたからこんな事をしたのか?
だとしてもこれは、間違っている。
「コイツは、驚いたな」
目の前の中性的な顔立ちの男は、悪戯な笑みを浮かべながら晴人の様子を伺っていた。
多分、何か話すのを待っているのだろう。
自分でもよくわかっている、明らかな動揺した表情を浮かべた事、そして何かに気づき表情を歪めてしまった事も。
「本当に驚いたよ」
晴人は、そう言いながら目の前に座ると煙草に火をつけて天を仰ぎながら煙を吐いた。
「それだけか?」
「それだけだ」
「なら、教えてくれ、どうして消えた筈のあの男の魂の欠片が今のあの男の中に入ったのか?」
さぁなっと言うおうとする晴人に向かい人差し指を立てて首を横に振った。
それは、通じないぞ。っと暗に言ってるのだが晴人は、煙草の先で蔦を差すと中性的な男は、甘い笑みを浮かべた。
「こっちの会話を聞ける程にアイツに余裕は、ないさ」
「それは、楽観的過ぎないか?」
「そうか?だとしてもアイツらの気配は、どちらも感じないがな」
どうしても、話をさせたいらしい。こうなるとこの男のしつこさは、嫌っと言う程に知っている。
「ノアの方舟、って何処までが本当の話なんだ?」
晴人がそう訊くと中性的な男の眉が少しだけ上がる。
「どこも何も、全てだよ、ある地域で大洪水が起こる事が知ったとある奴がリンクを経由し、人間に忠告した、それが時が経ち、神話の一部になった、それだけさ」
「それは、お前達の中の誰だ?」
「さぁ、大昔だし、自分以外の事など気にしたこともない、それで何故、今更ノアの方舟なんだ?」
その問いに晴人は、ゆっくりと笑いながら首を傾けると何が言いたいのかわかったのか中性的な男は、軽く頷いた。
「なるほど、存在するが存在しないノアの方舟っと言う事か」
そう言いながら中性的な男は、ゆっくりと立ち上がると周りを見渡した。
「それで、彼は、どうなる?」
その問いに晴人は、ゆっくりと煙を吐きながら目を瞑った。
「それは、お前もわかってんだろ、定着するには、ある程度の接続が必要だ、だけど今の現状アイツは、繋がればそれまで、無防備になり、殺されるかアイツになるかの2択になる」
「お前は、彼がどっちを選ぶと思う?」
その問いに、思わず晴人は、目の前の男を睨みつけた。
さすがにこの問いは、不快だった。
どっちを選ぶ、それは、どちらも最悪な結末というのに変わりは無いのだ。
「私を睨むな、これは私のせいじゃないのは、お前もわかっている筈だ」
「だとしても、余計な事まで訊き過ぎなんだよ」
紛うことなき本音だった。
そして、それに呼応する様に世界が微かに揺れる。
「そうか?てっきり私はこれはお前が望んだ答えだと思っていたのだがな?」
「なに?」
そう訊くと中性的な男は、両手をゆっくりと広げた。
「お前は、何度あの男を取り逃した?確かに強敵だった、だが消すチャンスは何度かあった筈だ、違うか?」
晴人は、ゆっくりと目を閉じる。
「1回だ」
「なに?」
「アイツを殺せるチャンスがあったのは、1回だけだ、それ以外は、殺せそうで殺せないそればかりだ」
あの中東での初めての邂逅、黒革の仮面から覗くその顔に晴人の指先は、止まった。
瓦礫の建物内、持っているのは、アサルトライフル、銃口は間違いなくあの男の額を向いていた。
引鉄を引けば間違いなく撃ち抜けた。
だが、晴人の指先はそれを数秒躊躇ったのだ。
今でも思う、あの引鉄を引けていれば今こんな状態にもなっていない。
誠もそして蓮海も死なずに済んだ、そう何回も考えそして後悔していた。
「本当にそうか?その1回しか無かったと、本当は、何回も見逃してたんじゃないのか?」
「いや、その1回だ、後は違う要因と自分の未熟さでやりきる事が出来なかった」
「あの地下神殿でもか」
「あぁ」
晴人は、迷いなく応えると中性的な男は、訝しむ表情を浮かべた。
そんな男を晴人は真っ直ぐに見つめた。
暫くの無言のまま視線を交わしていたが中性的な男は、大きな溜息と共に肩を竦めた。
「つまらん、実につまらん、昔は色んな事に過敏に反応していたのに、今では落ち着き払っている、実につまらん」
「いつまでも過敏に反応していてたまるか、こっちだって色々腹括ってここまできたんだ。いつまでも阿呆じゃいられねぇよ」
そう、そんな阿呆では、いられない。
だからこそ、何故アイツは、こんな真似をしたのか。
わかっていなかった、そんな筈は、ない。
なら、なぜこんな真似をした、アイツをより苦しめるだけなのに。
そう考えると、フト晴人の脳裏に春風に長い黒髪を揺らす女性の背中が浮かんだ。
ゆっくりと振り返り、口元だけで笑っているのがわかる。
出てこい、お前は俺にどうして欲しいんだ?
教えてくれ、俺のやっている事は何か間違っているのか?
晴人は、ゆっくりと俯きながら水面に目を向けた。
少し前まで静かだった、水面は微かに揺れている。
多くの人間が接続している。それが何を表すのかイヤでも理解している。
だが、自分は、動くわけには、いかない。
本当の意味で決着をつけるまでは、自分はここを動くわけには、いかないのだ。
これは、本当に終わらせる為の千載一遇のチャンスでもある。
ここで全てを台無しにするわけにもいかない。
なのに、どうしてお前は、そんな動きをするんだ。
「蓮海…」
晴人は、その名前を呟くと迷いを振り払う様に静かに目を閉じた。
彼は、そういって自分のしでかした事を知り、ただ言葉を失っていた。
降り出した雨に晴人は、何も言わずその場をゆっくりと去っていた。
彼にも罪があるなら自分もまた同じ様に罪がある。
わかっていた、止める者が居なければいずれは、力は、暴走し、余計な破壊を生むと。
わかっていた筈だ、気をつけていた筈だ。
だけど、止める事が出来なかった。
爺さんが亡くなり、2人の兄姉弟子達は、それぞれの道を歩んでいる。
そんな中にあった、自分が気を許せる存在を失うのが怖かった。
だから目を背けた、その結果、失ってしまった。
あの時、なにか声掛けていたら変わっていたのか。
そんな後悔の自問自答を何度も繰り返しながら同じ結果に辿り着く度に晴人は、溜息と同時に煙を吐く。
そんな自分の背中見ていたたからこんな事をしたのか?
だとしてもこれは、間違っている。
「コイツは、驚いたな」
目の前の中性的な顔立ちの男は、悪戯な笑みを浮かべながら晴人の様子を伺っていた。
多分、何か話すのを待っているのだろう。
自分でもよくわかっている、明らかな動揺した表情を浮かべた事、そして何かに気づき表情を歪めてしまった事も。
「本当に驚いたよ」
晴人は、そう言いながら目の前に座ると煙草に火をつけて天を仰ぎながら煙を吐いた。
「それだけか?」
「それだけだ」
「なら、教えてくれ、どうして消えた筈のあの男の魂の欠片が今のあの男の中に入ったのか?」
さぁなっと言うおうとする晴人に向かい人差し指を立てて首を横に振った。
それは、通じないぞ。っと暗に言ってるのだが晴人は、煙草の先で蔦を差すと中性的な男は、甘い笑みを浮かべた。
「こっちの会話を聞ける程にアイツに余裕は、ないさ」
「それは、楽観的過ぎないか?」
「そうか?だとしてもアイツらの気配は、どちらも感じないがな」
どうしても、話をさせたいらしい。こうなるとこの男のしつこさは、嫌っと言う程に知っている。
「ノアの方舟、って何処までが本当の話なんだ?」
晴人がそう訊くと中性的な男の眉が少しだけ上がる。
「どこも何も、全てだよ、ある地域で大洪水が起こる事が知ったとある奴がリンクを経由し、人間に忠告した、それが時が経ち、神話の一部になった、それだけさ」
「それは、お前達の中の誰だ?」
「さぁ、大昔だし、自分以外の事など気にしたこともない、それで何故、今更ノアの方舟なんだ?」
その問いに晴人は、ゆっくりと笑いながら首を傾けると何が言いたいのかわかったのか中性的な男は、軽く頷いた。
「なるほど、存在するが存在しないノアの方舟っと言う事か」
そう言いながら中性的な男は、ゆっくりと立ち上がると周りを見渡した。
「それで、彼は、どうなる?」
その問いに晴人は、ゆっくりと煙を吐きながら目を瞑った。
「それは、お前もわかってんだろ、定着するには、ある程度の接続が必要だ、だけど今の現状アイツは、繋がればそれまで、無防備になり、殺されるかアイツになるかの2択になる」
「お前は、彼がどっちを選ぶと思う?」
その問いに、思わず晴人は、目の前の男を睨みつけた。
さすがにこの問いは、不快だった。
どっちを選ぶ、それは、どちらも最悪な結末というのに変わりは無いのだ。
「私を睨むな、これは私のせいじゃないのは、お前もわかっている筈だ」
「だとしても、余計な事まで訊き過ぎなんだよ」
紛うことなき本音だった。
そして、それに呼応する様に世界が微かに揺れる。
「そうか?てっきり私はこれはお前が望んだ答えだと思っていたのだがな?」
「なに?」
そう訊くと中性的な男は、両手をゆっくりと広げた。
「お前は、何度あの男を取り逃した?確かに強敵だった、だが消すチャンスは何度かあった筈だ、違うか?」
晴人は、ゆっくりと目を閉じる。
「1回だ」
「なに?」
「アイツを殺せるチャンスがあったのは、1回だけだ、それ以外は、殺せそうで殺せないそればかりだ」
あの中東での初めての邂逅、黒革の仮面から覗くその顔に晴人の指先は、止まった。
瓦礫の建物内、持っているのは、アサルトライフル、銃口は間違いなくあの男の額を向いていた。
引鉄を引けば間違いなく撃ち抜けた。
だが、晴人の指先はそれを数秒躊躇ったのだ。
今でも思う、あの引鉄を引けていれば今こんな状態にもなっていない。
誠もそして蓮海も死なずに済んだ、そう何回も考えそして後悔していた。
「本当にそうか?その1回しか無かったと、本当は、何回も見逃してたんじゃないのか?」
「いや、その1回だ、後は違う要因と自分の未熟さでやりきる事が出来なかった」
「あの地下神殿でもか」
「あぁ」
晴人は、迷いなく応えると中性的な男は、訝しむ表情を浮かべた。
そんな男を晴人は真っ直ぐに見つめた。
暫くの無言のまま視線を交わしていたが中性的な男は、大きな溜息と共に肩を竦めた。
「つまらん、実につまらん、昔は色んな事に過敏に反応していたのに、今では落ち着き払っている、実につまらん」
「いつまでも過敏に反応していてたまるか、こっちだって色々腹括ってここまできたんだ。いつまでも阿呆じゃいられねぇよ」
そう、そんな阿呆では、いられない。
だからこそ、何故アイツは、こんな真似をしたのか。
わかっていなかった、そんな筈は、ない。
なら、なぜこんな真似をした、アイツをより苦しめるだけなのに。
そう考えると、フト晴人の脳裏に春風に長い黒髪を揺らす女性の背中が浮かんだ。
ゆっくりと振り返り、口元だけで笑っているのがわかる。
出てこい、お前は俺にどうして欲しいんだ?
教えてくれ、俺のやっている事は何か間違っているのか?
晴人は、ゆっくりと俯きながら水面に目を向けた。
少し前まで静かだった、水面は微かに揺れている。
多くの人間が接続している。それが何を表すのかイヤでも理解している。
だが、自分は、動くわけには、いかない。
本当の意味で決着をつけるまでは、自分はここを動くわけには、いかないのだ。
これは、本当に終わらせる為の千載一遇のチャンスでもある。
ここで全てを台無しにするわけにもいかない。
なのに、どうしてお前は、そんな動きをするんだ。
「蓮海…」
晴人は、その名前を呟くと迷いを振り払う様に静かに目を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる