第18分隊イロリ《ワケあり分隊長と個性だらけの部隊員達》

山月 春舞《やまづき はるま》

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街のはずれの老夫婦

2人の思い

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 調べ物を終え、スリングは帳簿をカウンターで返却すると情報資料図書館を後にすると何故かカナイもそのあとを付いて来ていた。
 外に出ると陽は傾き、オレンジの色が街を染めていた。

「ここからどうする?」

 カナイの一言にスリングは、今日の成果を考えるとこれ以上動いてもしょうがないと考えていたが、ここまでカナイが付いてくるとなるとそれで済む事がないのは、わかっている。
 どうするか、ここから何を調べられるのか、まず軍警の誰かに当時の話を聞く、正直これは無駄だ、2年前にも行ったが箝口令が敷かれているのだろう、誰もこの件に関して誰も口を開かない。
 そうなると行くべき場所は、自ずと決まって来るがスリングはどうしてもそこに向かう気になれなかった。
 だが、このまま問答していてもしょうがないので最終的には、スリングが折れる事になった。
 一旦ホテルに戻り、チールとムステルと顔を合わせてから夕飯には近くにのハンバーガー屋で済ませるとその足でドリームロードに向かった。
 シランはいるのだろうか、最後に会ったのは、ユラシアが怪我を負う前日で自分の不甲斐なさに謝罪をした。そんなスリングにシランは、苦笑いで応えたがその日に出来るだけ明日は色んな人の目に付いておいてくれと言う言葉を不思議がっていたが気づいて貰えただろうか。
 一応、ユラシアの件は、事故として処理をされたのは、知って居たがそれでも軍警が別な動きを見せる可能性もあったのでスリングは出来るだけ関係がバレない様に店に近づくのを避けていたのだ。
 まさかこんな形で行く事になるとは思いも寄らなかったが1人じゃない分まだ気が楽だった。
 店に入ったのは、20時を過ぎていた。
 カナイが来るのは、予想内だが…

「何でお前らまでいるかな?」

 スリングは、振り返り、後ろに当たり前の様に立っているチールとムステルに対して訊くと2人は不思議そうな表情を見せて首を横に傾けた。

「なんで、て言われても暇だから?」

 暇で付いて来られても正直困るがここで帰すわけにもいかず、スリングはしょうがなくカナイとムステル、チールを連れて店に入ると軽やかなジャズが鳴り響く中、空気感が妙に殺伐としているのを感じた。
 カウンターに向かうと見た事のない若いバーテンが何処か落ち着かない様子で立っていた。

「ウィスキーロック2つで」

 スリングがそう注文するとバーテンは、慌てた様子で返事をすると覚束ない手つきでウィスキーを入れ始めた。その手つきに不安になったスリングが安心をさせる様に声を掛けようとした時だった。

「だぁかぁらぁ!!薬物はここで捌いてたんじゃないかって言ってんだよ!!」

 奥から響く大声に若いバーテンが驚いて酒の入ったグラスを落としてしまった。
 何か良からぬ事が起きているのはわかり、そしてその声に聞き覚えのあるスリングは、気づくと自然とカナイに視線を向けていた。
 カナイは、その視線にニヤニヤとしながら首を横に傾けていた、コイツ何かわかっていたな。
 スリングは、グラスを落として謝るバーテンを無視して、カウンターの奥に入ると従業員専用の扉を開けて、奥の事務所に入っていった。
 部屋の中には、4人の男、1人はマスターだがその姿は、机に抑えつけられていた、抑えつけているのは軍警の制服を身に纏った2人、もう1人は、その対面に立って腕を組んでいた。

「お前、な…」

 スリングが乗り込んだと同時に立っていた軍人が声を掛けてくるがそれを無視してそのままマスターを抑えつけている軍人の1人を殴り飛ばし、次に目の前の出来事に反応してスリングの腕を掴んできたもう1人の軍警を肩から半円を描いて投げ飛ばすとそのまま床に叩きつけた。

「民間人に何してんだ?」

 スリングは、一通り片付けると突っ立ている小太りの軍人に言った。

「お前こそ何してんだ、バインド!!」

「たまたま、こっちに来たんでな、馴染み店に顔を出したら、下官が狼藉をしている現場に出くわした、だから上官として窘めた、それだけだテレン中尉」

 スリングの言葉に小太りの軍人、ブルーン・テレンは口をへの字にしながらプルプルと震えながら口を噤んでいた。

「もう一度、訊くぞ、お前は何をしているんだ?」

 なおもスリングが問うがブルーンは、何も答えずスリングから視線を外した。
 その行動だけでこれが軍警の捜査ではないのが容易に理解が出来た、スリングは後を付いてきたカナイに視線を送ると頷く。

「もしここで何も答える気ないのか、なら監察案件として処理するが構わないな?」

 その言葉にブルーンの顔が青ざめる。

「もしそれを避けたいなら、今ここで何をしていたか素直に話せばある程度は見逃してやるよ」

「ある程度て…」

「ゲイブに脅されてやっていたことにしてやる、それならまだ情状酌量の余地があるだろ、少しでもテレン家の顔に泥を塗らずに済むかもな」

 スリングのその応えにブルーンは、折れたのかその場で崩れ落ちた。
 そこでわかったのは、ユラシアの父親、エレン・ゲイブが息子の死の件でGTグール・タブレットの出所を自分の手の者を総動員で使っているという事だった。

「それで何でこの店に目を付けた?」

 その問いにブルーンは、ボソリと呟いた。

「アイツの女がいた、もしかしたらソイツが薬物を入手して流しているかもしれないと思って会いに来たんだ」

 シランの事だ。

「シランは、そんな事はしない!」

 マスターが力強く否定した。

「そんな事は、わからないだろ、だから捕まえて…」

「捕まえて?」

 ブルーンの言葉にスリングが続けるとブルーンは、顔を青くした。
 拷問する気だったのか、もしこれで人違いだったとしてもゲイブの権力でなしにしようって魂胆だったのだろうが、本当になめている。
 スリングは、少しだけイラっとしたが今それをどうこう言ってもしょうがないのであえて黙っておいた。

「つまり、今現在、薬の出所はわかっていないんだな」

 スリングの問いにブルーンは震えながら頷く、それからスリングはブルーンにゲイブの手の者がどれぐらい居るのか聞いたがどうも把握しておらず、これ以上の目ぼしい情報は、得られないと思いその場で解放した。どうせこの後は、スリングの範疇ではなくカナイの仕事だと思い視線を向けると吸いもしない煙草を取り出し火を点けると店の方へ向かっていった。
 合図か、スリングはそれだけ見届けるとマスターを介抱してから店に戻った、店では中の雰囲気など知らずに軽やかなジャズが店内を包み、客はその音に酔いしれていた。

「また、助けられたね」

 カウンター席に案内され、ウィスキーのロックと共にマスターに声を掛けられた。

「今回もこちらの恥でご迷惑をかけただけなので気にしないでください」

 スリングは、そう言いながら頭を下げるがマスターは、穏やかな笑顔をむけたまま首を横に振った。

「それでも、スリングさんが来てくれなかったら、今頃どうなっていたか…」

 そう答えるマスターにスリングは、煙草を燻らせながらあえて聞いてみる事にした。

「それでシランは、安全な場所に逃げられているんですか?」

 その問いにマスターは、少し頬掻くと諦めた様に溜息を漏らした。

「相変わらず、話が早い」

「ご冗談、マスターの耳に比べたら俺のは行き当たりばったりなんで」

「もしそれが本当なら末恐ろしい…シランなら私のツテで安全なところで匿ってもらってます」

 マスターは、そう言いながら煙草を燻らせる。
 相当、疲れたのだろう、普段ならカウンター内で煙草を吸うなんて滅多にしない。したとしても閉店後の馴染み客ばかりで飲んでいる時ぐらいだ。
 それだけで、この件に相当な気を揉んでいるのがよくわかった。

「それでいつからエレン・ゲイブは、薬の捜索に?」

「ユラシアが亡くなって葬儀を終えてから動き始めたんだ」

「随分行動が早いですね、腐っても親だったて事ですか」

「まぁあれだけの問題を起こしても勘当しなかった事を考えたら相当な親馬鹿だったとも言えるけどね」

 マスターの応えにスリングは苦笑いしながらも同意してしまった。
 そこからマスターと幾つかの話をしたが目ぼしい情報はなく、店を後にしてホテルに戻り解散した。
 次の日にホテルのロビーに出るとカナイがロビーに備え付けられたカフェで優雅にモーニング珈琲を飲んでいた。

「随分、早いな」

 スリングが珈琲と朝食を注文しながら対面に座ると相変わらずのにやけ面で応えた。

「今回、なんで諜報部が動いている?」

 応えるわけがないがあえてストレートに訊いてみるとカナイは、視線を窓から見えるホテルの外に向けた。その行動の応えは言われなくてもわかっている、ロビーに降りてから明らかにスリングに対して視線を向ける幾つかの気配があった。

「俺もマーク対象なのか」

「正確には、俺達のマーク対象じゃない」

 その言葉が意味する事は、諜報部の他もこの件に関して動いているという暗黙の伝言だった。

「なんで、俺なのかね~」

「タイミングが良すぎなんだろ。俺だってあの場で張っていたけどまさかお前が来るとは思わなかったからな」

 それを言われてもスリングも元々こんな事になっているとも思ってもいなかったので何とも言えなかった。

「それで、お前は本当にどうしてこの件を今更調べる気になったんだ?」

「昨日も言ったけど、確認したかっただけだ」

「何を確認したかったんだか」

「被害者のセカンドネーム」

「ゴルガン?」

 カナイの問いに頷きながらスリングは、ゆっくりと頷き、煙草を燻らせた。

「だとしたら、事件の帳簿まで見る必要なかっただろ?」

「そうなんだけどさ」

「気になったか?」

 カナイの問いに頷くと盛大な溜息が吐かれた。

「本当に、恵まれた能力と言うか難儀な能力と言うか、その目をもっと有効利用しようと思わないかお前?」

「なに、諜報部にでもスカウトでもしてるつもりか?」

「俺の部下としてだけど」

「却下、お前の部下とか反吐が出る」

「まっ俺も却下だな、お前に振り回される未来が見える」

 そんな悪態を付きながらお互いに苦笑いを零すとスリングは、本題に戻す事にした。

「落としどころは?」

「今のところ、作った奴と売った奴が旅に出て貰う事かな」

「黒を黒に落ちろってか」

「まぁね」

「それの見届け人に諜報部とか妙だろ?」

「そりゃな、この件は色々黒いからな」

「つまり、他に知られなくなる様に配慮して尚且つ解決しろと?」

「端的には」

「舐めてんな」

 エレン・ゲイブが大々的な行動を制止するどころか此方でそれを処理しろと言っているのだから質が悪い、相手が上級貴族であっても法律的には裁けるし没落なんて事も珍しい話でもない。だがエレン・ゲイブと繋がっている上層部の一部の人間がその件を出来るだけ誤魔化して終わらせようとしているのだ。
 自分達は、散々色んな人の人生を壊しておいて自分の子供が死んだらそれを棚上げして復讐の為に走り、関係ない他者を巻き込んでいるのだから質が悪すぎる。

「俺を動かしているのは、別の流れなんだけどな…」

「政治話はいい、知っても碌な事にならない、それより調べて欲しい事がある」

 凡その流れがわかりスリングが話を切り替えるとカナイは、首を横に傾けた。

「ユラシアが死んだ時に飲んでいたGTグール・タブレットの成分を調べられないか?」

「確か、証拠品として軍警に実物があると思うが今更なんでそれを調べる?」

「どうしても、腑に落ちない点があってな、どうしてあの豚は作った奴と売った奴に旅を勧める様に動いている?本当なら大本狙うだろ?」

 カナイもそれには以前から疑問があったのかスリングの提案に何も答える事無く静かに頷くだけだった。

「なのに、アイツは大本を狙わず、末端の方に標的にしている、そこから考えられるのは、今回出回っていてユラシアが手にしていた薬は、かつてのGTグール・タブレットと違っていた、だがそれだけで調べるだろうか?息子が薬を使った事で善意に目覚めた?そんな風にも感じない、だけどもしそこに本来のGTグール・タブレットに入っている筈のないものが入っていたらどうだ?」

「それは、例えば?」

「幻覚性か中毒性か、それとも別の何かかわかないが、死に至らしめる何かが含まれていた…」

 スリングがそこまで言うとカナイは、苦笑いをしながら立ち上がると窓の外に向けて手を上げて少しだけ振った。

「俺は、これから行ってくるけど大人しくしておけよ」

「上京したてのお上りさんじゃねぇぞ」

「そっちの方が大した騒ぎにならない分ましだわ」

 そう言い残してカナイはホテルを出て行った。その間にも此方の分も含めて会計を済ませるあたり感嘆の声が漏れそうになる。
 とりあえず今日は、出来るだけ下手な動きはしない方がいいだろう、スリングは少しだけカフェで珈琲と煙草で時間を潰してみたが結局のところ20分程度しか潰せず、その間に降りて来たチールに捕まり、そのまま買い物に付き合わされた。
 商業区には、色んな店が並びスリングはその街並みを呆然とする様に回っていた。
 偶にそんな街並みを眺めながらもし自分がこの仕事をしていたらどんな人生を歩んでいたのだろうかと考える事がある、例えば店員で愛想笑いを見せながら接客して普通に暮らしていく。
 そんな人生だったらあんな風に別れなかったのか、あんな風に死ななかったのでは、ないか?
 少しだけ考えて、直ぐに苦笑いを零してやめた、もしそうであるなら多分トラブルでも起こして長続きしないだろう。この仕事が嫌いかと問われればムカつく事もあるが嫌いではない。それがスリングの素直な答えだった。
 暫くチールに連れられて歩いていると1件のパン屋の前に付いていた。
 パルロという名の名前にスリングは、あっと声を漏らすと小さな女の子が店の出入口を開けた。
 条件反射で目を向けると女の子と目が合い、何かを言おうとしていた口は、閉ざされ、ドアの隅に半身を隠しながら目の前のスリングを睨みつけていた。
 えっ、何?
 スリングは、思わず漏れそうになる疑問を口にしないながらも表情には、出てしまい、女の子は直ぐにドアを閉めて店内へ戻ってしまった。

「えっ?何?」

 1度は、堪えたものが思わずもれる、しかしチールもわからないのかスリングを見て首を横に傾けていた。
 そのまま店前で今の状況が飲み込めないで立ち往生していると再びドアが開き、見知った顔が出てきた。

「お久しぶりです、覚えていますか?」

 小柄な水色の髪を三角巾で被った女性がドアを開けて顔を出した。その顔は、何処と無く見知った顔に似ているが知っている顔より幼く、何よりも貫禄がない。
 これで会うのは、指折りでしかぞえる程度だが覚えている。

「あぁ、姐さんの妹さんで、確か名前は…」

「トロアです、トロア・レンバーです」

「そうだ、トロアさんだ、お久しぶり」

 スリングは、そう言いながら改めて店構えに目を向けた。
 多くの店が並ぶ一角で周りの店は安売りの小売店だからか人の行きかいが多いかこの店だけは、人は少ない、無論人気がないわけでは、ない。
 このパン屋はカフェを併設しているせいか買い物客と言うよりも休憩所に近い状態になっているのだろう、店内にもそれなりに人は入ってはいる。
 数年前に2回ほどルミスとダーナそしてニーナとツィンブリアでこの店を訪れていた。
 それ以降は、店に来る事は出来るだけ控えていたがチールがこの店に来たのは、恐らく偶然ではない。

「席空いているのでよろしかったら、どうぞ、珈琲奢りますよ」

「奢りはいらないですけど、お邪魔じゃなければ」

 スリングがそう言うとトロアは、笑顔で招き入れてくれた。
 案内されたのは、窓側の席だ。
 チールと向き合うとスリングは、煙草を燻らせる。

「姐さんか?」

 単刀直入で切り出すとチールは、軽く頷いた。

「分隊長なら店前まで来ればわかるだろうから、茶葉を数袋買ってきてくれって」

 店前まで来ればわかる…
 その単語にスリングは、魔力感知を巡らせると店の外から店を伺う妙な気配が幾つかあるのを感じた。
 窓から外の様子を見ると対面の路地からこちらを見ている男が数人見えた、風貌と雰囲気から一般人のそれとは違い、軍人のそれに似ている気配だが根本的な何かが違う、そしてその気配の違いに覚えのあるスリングは、それでルミスの言葉の意味を察すした。どうするか対策を考えているとトロアが珈琲を運んできてくれた。

「いつから、いるのあれ」

 スリングが窓を指差しながら訊くとトロアは苦笑いを零した。

「以前から来ていたんですけど姉がいつも追い払ってくれて暫く姿を見なかったんですけど…」

「姐さんがイトに異動してからまた来る様になったと、それで何者なのあれ」

「地上げ屋です、バックにはマフィアがいる様で、軍人の身内だって事で派手な妨害行動は、してこないですけど、あんな風に遠くから見たり、ありもしない風評を流したりしてくるんです」

 地味な嫌がらせか、まぁ派手に行動すればあのマフィアは簡単に潰されてしまうだろう。

「マフィアの名前とかマークわかったりする?」

 スリングがそう訊くとトロアはエプロンのポケットからメモ帳を取り出すと漢字の錬と言う字を書いた。

「ヒラスの組織か」

 スリングは、そのマークを見て直ぐに誰かわかると珈琲を一口啜るとゆっくりと立ち上がった。

「チール、お前はこのままここで俺が返って来るまで待機な」

 スリングは、そう言いながら店の外に出ると店の様子を伺っている男の達の方へと近づいた。
 迫るスリングに男達も何かを察したのか顔を強張らせ、ゆっくりと戦闘態勢に入っていった。

「お前らのボスに伝えろ、バインドが話があるから後でアルニアてバーに来いってな」

 スリングが簡潔にそう告げると男の1人がスリングを睨みつけながら迫ってきた。

「急に何言ってんだお前?ボスってなんだ。俺達がマフィアか何かだと思ってんのか?」

 体躯は、スリングより縦も横も大きい男だがスリングの視線は、その後ろで腕を組んで様子を伺っているオールバックの眼鏡をかけた男に向けていた。

「訊いてんのか、バルサ」

 スリングがオールバックの男に声を掛けるとバルサは体躯のいい男の肩を叩くとスリングから退かせ、前に出てきた。

「ボスは忙しい身です、要件なら俺が訊きますけど?」

「お前じゃ話にならないから、ボス出せって言ってんだよ」

 応えたと同時にバルサの目尻が細くなる。

「アンタ何様だ?」

「軍人様だ」

「ただの貴族の犬だろ」

「それいったらお前らも同じようなもんだろ、だがこっちは国に保障された身分だが、お前らはどうなんだろうな?」

「俺達は、誰にも従わない」

「そうかい?3年前にゲイブに使われてたのに、裏切られて壊滅に追い込まれたのは、同業他社じゃなかったか?」

 スリングのその一言にバルサは、舌打ちした同時に手を伸ばしたが胸倉を掴もうとする直前に止まった。

「アンタは、相変わらず口が達者だな」

「お前は、相変わらず単純だな」

 スリングの応えにバルサは、忌々しそうな表情をすると溜息を漏らした。

「アルニアだな、ボスに伝えておく、何時だ?」

「20時」

 そう答えるとバルサは、仲間を連れてその場から去っていった。
 それを見送るとスリングは、カフェに戻ると同時に先程の女の子が仁王立ちしていた。
 何事かと思い、凝視していると唐突に吠えて来た。

「わるものにたべさせるパンはない!!」

 その声に店内に響き渡り、全員の視線がスリング達に集まった。
 トロアが慌てて小さな女の子とスリングの間に入ると苦笑いしながら小さな女の子を制止した。

「違うよ、ウルア、この人は悪い人を追い払ってくれたんだよ~」

 そう諭すが聞き入れる様子はなく。スリングを今の睨みつけていた。

「これは、嫌われたね~」

 聞き覚えのある声に視線を向けるとスリングが座っていた席に金髪のボブカットの小柄な女性が座ってケラケラと笑っていた。

「師匠?何してんすか?」

 スリングが間抜の声を上げながら応えるとツィンブリアは、なんて事ない様にテーブルを叩いた。

「積もる話は、席に座ってから」

 そう促されスリングは、大人しく座る事になった。
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