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第2章

魔王「はい、えっとですね。とりあえず四天王の方を、はい、そうですね。ええ、大変ですけど、はい。あ、既に3人、はい……ちょっと探してきます。」

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「……あ、もういいですよ」
店長はわざとらしく咳払いをした。
「え、え~。空きがね。うん。無くてね。いや、私としても頑張った方だ——」
「ちょっと店長さん。オフが。オフが入ってますよ。キャラブレてますって」
「え?あぁ、すみません。ちょっと最近疲れてまして——」

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——テイク2
店長は咳払いをすると近くの書類を一香に見えるように出しニヤッと笑った。
「残念なことなんだけど。男子寮の部屋が空いてないんだよ」
「……は?」
「いや~良かったね。名倉君。キャッキャウフフな異世界生活ができるぞっ!」
「勘弁してください……。俺変態扱いされてるって言いませんでしたっけ?」
「ん?男なんてみんなそんなもんだろ」
「ちょっと!?危ない発言は控えてください。てか、妙に説得力があって困るんですが」
「そりゃ、私自身がた——」
「い、いいです。ただでさえ疲れてるのにこれ以上ダメージは無理です」
すると扉がバンッと乱暴に開く。
そこには顔を真っ赤に染めたハクの姿があった。
「……私の部屋のプレートにそこの男の文字が刻まれてるのは」
「あ、丁度いい時に来たね。名倉君。そこの子が君と同室のハクちゃんだ」
「へぇ~この子が。なるほど。……店長。俺また死ぬんですかね?」
「死ぬ?そんな筈ないだろう。そこの彼女は生粋の優等生だ。安心してくれ」
「あの、店長?普通ね。世間一般的に考えると生粋の優等生は校長室のドアを乱暴に開けたりしないと思う」
「……あ」
「あ。じゃねぇ!!どうしよう。俺はこの育成学校の間卒業するその日までずっと『変態』のレッテルを貼られて生きていくのか」
「良かったな」
「良くないわ!!」

部屋は2人用になっていて個人用のクローゼットと共有できるクローゼットがまず目に入った。
ベッドは二段ベッド。
ここら辺は完全に店長の好みが出ている。
部屋には風呂や台所も完備されている。
感心しているとハクは赤いチョークで線を引いた。
「……こっちが私。勝手に入ったら憲兵に突き出してギルドで賞金かけるから」
「俺ってそんな害がありそうに見える?一応人畜無害が似合う男ベストスリーには入るんだけど」
「……どこ基準か知らないけどそうは見えない」
「まぁいいや。…見た所ベッドがハクちゃんの領地にあるように見えるんだけど」
しかしハクは口を開かない。
「床で寝ろと?」
ハクの目に殺意が灯る。
「あ、なんでもないです。喜んで床で寝ます。床大好きです」



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