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3.捨てる女神あれば拾う女神あり

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「しかし、本当に理不尽だよなぁ~。人違いで拉致されたのに電撃をくらわされたり蹴られたり、挙句の果ては異世界送りだろ、やってらんねぇよ。それにあの女神――顔は可愛いけど腹の中は真っ黒だ。ミスを隠蔽するために、秘密裏に異世界に送り込もうとしているのがバレバレなんだよ。それに異世界で、ヒャッハーな賊が現れたらあのスキルだけで太刀打ちできるわけないだろ。よし、あの駄女神からもっとスキルをせしめて、異世界では美女を囲って欲望のままに生きるぞおぉぉーーーーっ!」
「ウフフッ、初めまして山本飛鳥くん」
「うわーっ、ビックリした!」
「クスッ、ごめんなさいね。驚かせてしまったみたいだね」

 誰もいない神殿で気勢を上げていると、突如として美しい女性が現れる。目鼻立ちの整った美しい顔立ちで、少し垂れ目のほんわかした感じの美女である。だが特筆すべきは、癒し系の雰囲気と相反する煽情的なドレスと、蠱惑的な肢体である。重たげな膨らみが胸元をムッチリと盛り上げ、キュッと締まったウエストや、スリットから覗く白い脚が成熟した大人の色香を放っていた。

「飛鳥くん――大丈夫?」

 尻餅をついている私に、優しく手を差し伸べる謎の美女。開いた胸元からは美巨乳が織りなす谷間がはっきりと見え、甘く芳しい匂いも漂ってくる。そして滑らかな手に触れられた瞬間、私は年甲斐もなく顔を真っ赤に染め上げてしまうのであった。

「フフッ、何処を見ているのかなぁ~。それと顔が真っ赤っかだよ。あっ、自己紹介がまだだったね。私の名前はピロテース。一応、女神をやっています♪」
「は、はい、一目で女神様だと分かりました。わ、私は山本飛鳥です。年は38です。恋人はいません。よろしくお願いします!」
「アハッ、何だかお見合いみたいだね。でも君の事は知っているよ。エルピスちゃんのミスで連れて来られた人だよね。ずっと見てたけど、本当にユニークな人なんだね。クスクス」
「げっ、何時から見ていたんですか?」
「セーラーちゃんの下着を覗こうとして、電撃をお見舞いされた時からだよ。それとエルピスちゃんの前で変なダンスを踊ってお尻を蹴られていたでしょ? 今思い出しても……ウフフッ、アハハハハッ! 可笑しくてお腹の皮がよじれそうだよぉ」
「ぐはっ、私の痴態をピロテース様のような美人に目撃されていたとは……」
「フフッ、それでね――私、エッチでユニークな人が好きなの♪ 飛鳥くんのこと気に入ったから、私の加護をプレゼントしたいと思ってるの」
「それは願ってもない話です。今のスキルだけでは、心許なかったんです。……ところで、私ってそんなにエッチなのでしょうか? 自分ではストイックな紳士だと思っているのですが……」
「クスクス、君は間違いなくエッチだよ。だってこうすれば……フフッ♪」
「うはっ、なんて張りがあって艶やかな太腿なんだ! うへへ、眼福眼福」

 イタズラな笑みを浮かべ、ピロテース様はスリットの入ったドレスをたくし上げる。肉感的な太腿に、私の目は釘付けだ。鼻の下はデレデレと際限なく伸びていった。

「ねっ、エッチでしょ♪」
「恐れ入りました。私は間違いなくエッチです」
「うんうん。正直なのはいい事だよ。それじゃあ、加護をあげるね♪ あれっ? エルピスちゃんが授けたスキル――ちょっと変だね。これじゃあスキルのレベルが……。エイッ、これも変えちゃえ♪」

 ピロテース様から放たれた神々しい光が私を包み込んでいく。光は一際大きく輝くと、眩い粒子となり身体の中に吸収されていく。神秘的なエネルギーが、グルグルと身体の中を循環しているような奇妙な感覚である。気が付くと、楽しそうに微笑むピロテース様が私を見つめていた。

「私の加護を飛鳥くんにプレゼントしといたからね♪ それからエルピスちゃんが授けたスキルには手を加えといたよ。あのままだとスキルのレベルが上がらないからね」
「? どういう事なのでしょうか」
「異世界ネット通販のレベルアップ条件が、白金貨1000枚の取得になってたよ。日本円で10億円ぐらいだね。これじゃあレベルアップ出来ないでしょ。それとお宝感知のレベルも、君のレベルが100に達しないと上がらなくなっていたよ。普通の人間には絶対無理だね~」
「あの駄女神め! 人違いで拉致した上に何て卑劣な……くそっ、絶対にエッチなお仕置きをしてやるぞ。ピロテース様! 私めにレアなスキルをお授けください。あの女神にお仕置きして、異世界では気ままに生きていきたいのです!」
「アハハ、やる気満々だねぇ。だけど女神にも色々と制約があってね。魔王退治――みたいな特別の事情が無いと、レアスキルをポンポンと授けられないんだよ」
「そんなー、それじゃあ、私はどうすれば……」
「ウフフ、授ける事は出来なくても、自力でスキルを習得すれば問題ないんだよ。勿論、手助けはしてあげるからね♪」
「私みたいなオジサンが、スキルを習得出来るんでしょうか?」
「オジサン? フフッ、飛鳥くんは気付いてないのかな? 加護のついでに肉体も若返らせといたよ♪」
「なんですと!? そういえばお腹も引っ込んでいるし、身体も軽く感じる。やったーー! 再び青春を謳歌出来るぞおぉぉーーー! ピロテース様、ありがとうございます!!」
「うんうん♪ 飛鳥くんが喜んでくれて、私も嬉しいよ。ちなみに容姿も、私好みに変えといたからね。エイッ!」

 ピロテース様が手を振ると、私の目の前に大きな姿見が現れる。私は息を呑んで映った姿を確かめる。そこには前の面影はあるが、整った顔立ちの少年の姿が写り込んでいた。ほど良く締まった身体でエレガントの黒髪と黒い瞳が際立っていた。可愛いと美しいを兼ね備えたような甘いマスクである。

「ううっ、社畜生活18年、こんなに嬉しい事は無い! ピロテース様、本当にありがとうございます」
「アハッ、何処かで聞いたようなセリフだねぇ~。だけど私が手助けが出来るのも、エルピスちゃんが戻ってくるまでだよ。そろそろ始めた方がいいと思うよ」
「それは大変だ、早速始めましょう。……ところで、具体的に何をすれば……」
「そうだねぇ~、飛鳥くんがエッチなのを利用しようかなぁ」
「えっ、エッチだとスキルを習得をしやすいんですか?」
「アハハ、英雄色を好む――って言うし、エッチなのは行動力、願望、強い牡の証だよ。その力を利用すれば、飛鳥くんなら簡単に出来ると思うよ。ほらっ、さっきみたいにこうすれば……クスクス♪」
「うはっ、なんて柔らかそうで瑞々しいおっぱいなんだ! しかもノーブラ!!!」

 ピロテース様はクスッと笑みを漏らすと、ドレスの胸元をゆっくりとはだけさせていく。露になっていくたわわな膨らみは、重力に逆らうようにキュッと上を向き、ため息が出るような美しい曲線を描いていた。雪のように白い乳肌や、くっきりと見える谷間の破壊力も抜群で、えも言われぬ媚態を私は飽かずに眺め続けていた。しかし膨らみの頂点を彩る魅惑の突起が見えかかった瞬間、ピロテース様の手はピタリと止まるのであった。


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