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ウエスト大陸編
10話 迷宮の情報
しおりを挟む俺は今、とてもラッキーだと思っている。理由は簡単。エリーに名前を聞かれなかったからだ。
「ふふ、名前を聞かれなかったから、どんなミスがあっても俺の名前は出回らないだろうな」
「そうですね。あの領主はすこし抜けているところがあるかもしれませんね」
「あぁ、そうだな」
つまりは、「目立つ」可能性が無くなったということである。普通の人にとったら英雄にでもなれるチャンスをみすみす逃がすとはなんと愚かな、と思うだろう。しかし、耀は、何度もいうようでくどいが、目立つことが嫌なのである。
すると、この街一帯に響く声で、邪竜が討伐されたことが伝えられた。それによると邪竜の討伐理由は長きにわたる封印のせいで死の寸前まで衰弱していたことになっており、俺の存在は全く語られなかった。
このアナウンスを聞いた人々が、各々の家から出てきて歓喜の声をあげた。俺はてっきり地下というのは領主邸の地下だと思っていたのだが、家1つ1つに地下が用意されていたようだ。これにはとても驚いた。
そして、住民が次々に抱き合ったり、拍手したりと興奮を共有しあった。当然、その場にいた俺も巻き込まれた。不本意だがな…。この興奮が収まったのは、1時間後の話である。
「しかし、とりあえず大きいからこの街に立ち寄ったが…。なにかすることはあるのか?」
「マスター、せっかくですので私を見つけて下さった「エディット商会」の支部に行ってみませんか?なにか良い出会いがあるかもしれませんし…」
「ここには、エルドさんの商会の支部があるのか…。確かに行ってみるのもいいかもしれないな」
「では、案内いたします」
なんだ、アビー。まるで俺が商会を見つけるのに苦労したのを知っているかのような口ぶりじゃないか…。
「あぁ、頼む」
今いた場所からは、遠いとも近いとも言えない距離にあった。相変わらず、この商会は建物が周りに比べると大きい。やはり、この国ではかなり大規模な商会なのだろう。
カランカランっ
「ようこそ、エディット商会へ!!」
「あ、ちょ、あたしのことを無視するのやめなさいよ!!」
「お客様、本日はどう「だから、あたしを…」ご用件でしょうか」
「あ、あぁ。ものをお買いにきたんだが、そこでわめいているのは、客ではないのか?」
「えぇ。なんでもアーティファクトを売りたいそうなのですが、どうみても違うのですよ」
「なるほど。それを見せてもらってもいいか?あぁ、俺はこういう者だ」
そういって、専属契約の証明カードを見せた。
「こ、これは。では、あなた様が『ヨウ殿』ですね」
「名前が知られていたか。まぁ、情報伝達系のアイテムだろうな」
「ご想像の通りです」
すると、今まで黙っていたうるさい奴がまた、騒ぎ始めた。
「あんたに、なにがわかr「ちょっと、黙ってろ」…う、うるさいですってぇ!!」
うん、うるさいね。
「で、では、こちらです」
そういって、見せられたには「ガラクタ」だった。しかし、若干ながら魔力を感じる。
(なぁ、アビー。なにか分かるか?)
(うーん、マスター、これは、「鍵」ですね)
(これが鍵?にわかには信じがたいが、なんのだ?)
(この近くにある迷宮の最奥地に入るための鍵ですね)
(迷宮か…。少し行ってみたいな…。買うか)
「よし、買おう。ただ、金貨2枚だ。これは譲れない。あぁ、高くも低くもしない」
「「本当?!(ですか?!)」」
「あぁ、本当だ」
「これの価値が分かるなんてさすがねっ!!」
いや、お前、これの価値を知らんだろうが…。
「あっ、あたしの名前は(略)ね。ん?なにか不穏な気配がしたけど気のせいでしょう」
いや、聞いてないわ…。
そして、俺は金貨2枚を払った。
「ありがとう!!じゃあね!!」
最後までうるさいやつだった。久しぶりの静寂が訪れた。
「しかし、あんなものに金貨2枚もよろしかったのですか?」
「あぁ。使い道が分かったからな」
「?そうですか。それで、買いたいものとはなんでしょうか?」
ん?あぁ、そういえばここにものを買いにきたんだった。
「いや、また別の機会にするよ。今回は『これ』が手に入ったしな」
「そうですか。では、またのご利用お待ちしております」
「あぁ、またな」
そういって、エディット商会のフリーデ支部をあとにした。
そして、アビーに迷宮の情報を尋ねてみた。
「なぁ、アビー。近いっていってもどこにあるんだ?」
「ここから、北東に14kmほど行ったところにある、『白亜の塔』です。言い伝えでは100階層まであり、現在の最高到達階層は64だそうです」
「結構遠いじゃねーか。まぁ、次の目的地はそこだな」
「えぇ、そうですね。では、探索の準備をしましょう」
「そうだな」
そういって、夜まで食料や寝袋を買い込み、適当な宿をとり、明日を迎えるのだった。
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しろくまです。
ようやくだせました、迷宮。どんな困難が待っているのでしょうね。
ちなみに、扱いからも分かるとおりうるさい子はもう登場させる予定はありません。
()内の会話は念話です。
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