異世界に転生しても彼らはブレない

序章

私を呼ぶ声

―――――…――、…
…ね…―、―…て
お…――きて…


(だれかがわたしを呼んでいる…)
ふと聞こえたその声は微かにだが雪那には届いた。
重い瞼まぶたを開け、身体をゆっくりと起こし辺りを見渡す。
声は聞こえたはずなのに人の姿がない。ただ真っ白な空間だけが際限なく広がっている。

「…困った。」
――が…ここ…、…。

またあの声が聞こえる。もしかしたら見えないだけで居るのかも知れない。
雪那は声が聞こえる方へ歩き出す。


しばらく歩いていたからか、少しずつ今の現状を考える余裕と疑問がうまれた。

―まずここはどこなのか？
見覚えのない場所ということだけしか分からない。一切物がない壁もない、どこまでも広がっているだけ。
―どうして自分がここにいるのか？
気づいたらここにいた。最後に覚えていることを思いだそうとした時、―ドクンｯ、、心臓が鳴る。
雪那はここで初めて恐怖を感じて止まってしまった。

なにもおもいだせない

過去の記憶を何一つ思い出せない、これは致命的だった。大切な何かを忘れてしまった焦りと恐怖で雪那は声のする方へ急いで走っていく。このままだと自分が自分じゃなくなっていくような気がした。
走る。ひたすら走る。徐々に声が大きくはっきりと聞こえるようになった。

"お願い、私はここにいるよ  "