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序章
声の主と私、そして記憶を辿る
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着いた先に大きなモニターが一つ、そしてそれを囲むように色々な形の小さなモニターがあちらこちらにあった。
雪那は荒い呼吸を整えてから、前を見る。
大きなモニターが目の前にあった。そこに映し出されていた映像を目にする。
否、目が惹かれた。
いくつもの映像が途切れては変わってと映し出される。
どの映像にも自分と誰かがいて、楽しそうに
楽器を奏でたり、歌を歌い、はしゃいでは盛り上がって最後には羽目をはずして怒られていた。
(そう…だ、思い出した。)
音楽で彼らに出会い自分は救われたことを。
彼らがいたから自分らしくいられたことを。
色のない世界が急速に彩られた日々の思い出。
失いたくなくて、自分は求めていたんだ。
やがて、大きなモニターの映像は真っ赤に染まり最後、砂嵐になって消えた。
――時はあの日に遡る。
冬の風が冷たいこの頃、自分達のバンド解散が決定しファンやお世話になった関係者、先輩方を呼んで感謝とエールを贈るライブを開催していた。
バンド解散の決定にメディアは次々と記事に載せ、沢山の人が驚き、惜しまれた。
公には公開していないが、
解散の理由は、国内ツアーを始め海外、そして全国を制覇し古今東西に自分達の歌や音楽を広める目的が達成されたからだ。
それにバンド解散と言うものの、音楽をやめるのではなく、地元でたまにミニライブを公民館で開催するなどして日々を送りたいと思っている。
ファンも大事だけど、今度は大切な仲間との時間を作って音楽に溺れ…ンん、過ごしたかった。
ライブは滞りなく進み、中盤で休憩時間をとっている時に事件が起こった。
バンド解散の決定に一人のファンの女性が絶望し、休憩時間を狙って関係者控え室まで押し掛け、
「バンド解散なんて嘘でしょ?そんな偽の情報を私は真に受けない!!ねぇッ、なんとか言ってよ!!!!
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うゥ…。
そう、だ。そうだよ…今、ここで解散しないって宣言して!!!!今すぐ私の前で宣言しろ、今すぐ!
じゃなきゃ許さないィィッ!!!」
ドアの前で女性が狂ったように叫び続け脅してきた。それが意味ないと分かると今度は泣き喚いて立ち去った。
ただし、これだけでは終わらなかった。
女性は自分に灯油をかけ、辺りに撒き散らしたあと自殺を図ろうとしていた。
先程の騒動を聞き付けた警備員にすぐ取り押さえられ未遂で終わったが、ライターの火が灯油に引火し大規模な火災が発生。
開場内にいた客は火災報知器の音に気づき我先にと無事に外へ逃げられたが、地下に取り残された自分達は跡形もなく焼けて死亡。
帰らぬ人となってしまった。
呆然としていた雪那はふと気配を感じて振り替える。
そこにいたのは自分を呼んでいた声の主。
雪那は歩き出す、声の主の方へと。
やがて二人は向かい合わせになって
二つは一つになった。
''ただいま"
「お帰り、私。」
雪那は荒い呼吸を整えてから、前を見る。
大きなモニターが目の前にあった。そこに映し出されていた映像を目にする。
否、目が惹かれた。
いくつもの映像が途切れては変わってと映し出される。
どの映像にも自分と誰かがいて、楽しそうに
楽器を奏でたり、歌を歌い、はしゃいでは盛り上がって最後には羽目をはずして怒られていた。
(そう…だ、思い出した。)
音楽で彼らに出会い自分は救われたことを。
彼らがいたから自分らしくいられたことを。
色のない世界が急速に彩られた日々の思い出。
失いたくなくて、自分は求めていたんだ。
やがて、大きなモニターの映像は真っ赤に染まり最後、砂嵐になって消えた。
――時はあの日に遡る。
冬の風が冷たいこの頃、自分達のバンド解散が決定しファンやお世話になった関係者、先輩方を呼んで感謝とエールを贈るライブを開催していた。
バンド解散の決定にメディアは次々と記事に載せ、沢山の人が驚き、惜しまれた。
公には公開していないが、
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それにバンド解散と言うものの、音楽をやめるのではなく、地元でたまにミニライブを公民館で開催するなどして日々を送りたいと思っている。
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ライブは滞りなく進み、中盤で休憩時間をとっている時に事件が起こった。
バンド解散の決定に一人のファンの女性が絶望し、休憩時間を狙って関係者控え室まで押し掛け、
「バンド解散なんて嘘でしょ?そんな偽の情報を私は真に受けない!!ねぇッ、なんとか言ってよ!!!!
違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うゥ…。
そう、だ。そうだよ…今、ここで解散しないって宣言して!!!!今すぐ私の前で宣言しろ、今すぐ!
じゃなきゃ許さないィィッ!!!」
ドアの前で女性が狂ったように叫び続け脅してきた。それが意味ないと分かると今度は泣き喚いて立ち去った。
ただし、これだけでは終わらなかった。
女性は自分に灯油をかけ、辺りに撒き散らしたあと自殺を図ろうとしていた。
先程の騒動を聞き付けた警備員にすぐ取り押さえられ未遂で終わったが、ライターの火が灯油に引火し大規模な火災が発生。
開場内にいた客は火災報知器の音に気づき我先にと無事に外へ逃げられたが、地下に取り残された自分達は跡形もなく焼けて死亡。
帰らぬ人となってしまった。
呆然としていた雪那はふと気配を感じて振り替える。
そこにいたのは自分を呼んでいた声の主。
雪那は歩き出す、声の主の方へと。
やがて二人は向かい合わせになって
二つは一つになった。
''ただいま"
「お帰り、私。」
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