異世界に転生しても彼らはブレない

前世が蛍の人

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第1章

女王の誕生

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宣誓布告を終えた雪那は2人を連れて、待ち合わせの場所に<転移>で向かう。
決戦予定地を決めていた場所、忘れられし地に到着。

「で?大体の内容は聞いていたけどさ、オレらはどうやって返り討ちにすんだよ?」
チャシャが不思議そうに雪那を見る。

「この場所を、一時的に本拠地として利用するのに必要なのは…砦かな?相手を迎え撃つのに適した建物を建てたいの。
私は自分の氷魔法と<創造実現化>を組み合わせて建てるからちょっと離れてて。」

「セツ…?言っている意味がよく分からんが何をする気だ?」

「見てて、そうすれば分かるから。」
雪那は何もない土地に立ち、魔力を纏い始めた。

「―凍てつく氷よ、私の魔力を喰らい力を開放せよ。<操氷壁+創造実現化>」
魔力が氷に、氷が氷塊、それは勢いを増しながらどんどん大きくなっていく。
やがて一つの大きな建物となった。

「これは…、素晴らしい能力ですね…。」

「きゃぁああ!雪ちゃん素敵すぎるぅ~、ブハッ…♪」

「ビアンカ姉さん大丈夫?はい、ハンカチ。」
ハルが心配そうにハンカチを差し出す。ビアンカは無言の笑顔で受け取り、鼻を押さえた。

「ユキ姉かっけぇーっ!」

「すげぇよっすげぇ!!ユキ、オレ惚れ直したぜっ!」

「セツが凄いのは知っていたがここまでやるとはな。」
砦と言っていた建物は最早、城のような雄大を醸し出していた。
どれも氷のみで構成されているというのに、頑丈かつ装飾が繊細に施されていて美しい。
これをたった6分で建てたとは思えない。
中に入ればホテルのような広々とした空間が広がっている。外の光が反射し、所々で氷が煌めいている。

「上手くいったみたい。
創造したモノは望まない限り消滅しないし、一度に使う魔力の消費が激しいだけでその後は持続的に存在するから、魔力を必要としない。
だから、壊れても勝手に修復して便利だよ?」
雪那の発言に、一同再び唖然。
更に爆弾発言が続く。

「それだけじゃないもん、操作するとは別に、私の意思を切り離して固体に意思を与える事で自動で攻撃も防御してくれる。」

「…それ、チートじゃん。」

「自動で攻撃も防御って…ゾンビよりたち悪そうよね。」

「「「「「……。」」」」」
シン……とした空気が流れる。

「…怖い?私がこんな怪物になっちゃったから嫌いになった??」
雪那はギュッと目を瞑っておそるおそる聞いた。

「―ハハっ、ハハハハハ!!ホント最高だぜっ、怖い?怪物??上等じゃんか!むしろ、それくらいじゃなきゃ面白くねぇーな!!!」
突然、チャシャがお腹を抱えて笑い転げる。

「やはり、貴女は規格外だ。
言っておきますけど、初めて出会った時からそう思っておりましたよ?
だからもの凄く心が揺さぶられ、共に歩みたいと願いました。」

「「一生ユキ姉に着いていくっ!だから嫌がったってずっと傍にいるよ。」」
クロードもハルもアキも笑顔で答える。

「セツ!!!!!
自分を怪物だと言うのなら、俺がそれを越えるくらい強くなる。だから、俺達の前だけはっ!ありのままでいてくれ。」
クレイが雪那を抱きしめ、説得する。

「雪ちゃんは何を心配していたの?
あたしたちが嫌いになるなんて、天と地がひっくり返ってもあり得ないわっ。雪ちゃんが怪物だって言うなら、あたしなんてどんな姿にだってなれちゃうのよ?」
そう言って、ビアンカは片手を鉤爪に変形させて見せる。その後、雪那の姿に擬態をしてポーズをとる。

「ね?こんな事、あり得ないのにあたしは出来るの。雪ちゃんは嫌い?」

「ビアンカはビアンカでしょ?なんで嫌いになるの?」

「つまり、そういう事。」
笑みを浮かべ、どう?分かった?と言う。
雪那は皆に抱きつき、笑う。

「ありがとう。」

★★

問題が解決(?)し、帝国の出方を話し合う。

「どんな手段にしろ、阻止すればいいだけの話ですが…雪那さんは、あちらに何を望むのですか?」
クロードが聞くと、

「大切なものを奪うとしか言ってない…、正直何も考えてなかった。」

「えー…。そこは金とか土地じゃね?」
チャシャが案を出してみる。けれど、雪那はそれじゃ奴等に渾身の打撃を与えられないと却下。
そこに今まで黙っていたラシュが、

「もし今後の生き方を考えるなら、土台から変えるしかないと思うんだけど…。
いっそユキナ様が女王になってみてはどう??」
雪那は思わず、ラシュをガン見した。

「え。無理。私にそんな大役無理。」

「確かに…、国を作ってしまえば無闇に手を出す馬鹿が減りますね。今後、安心して暮らすのに居場所があれば活動しやすいのもメリットです。
…ラシュさん、良いことを言いますね。」
クロードも何故か納得している。

「え?ちょっ―」

「ユキが女王なら俄然ヤル気出るわ…。
国を作るならやっぱ、その下につく人間が必要だし?勝ったら丸ごと国民を奪っちゃえば良いんじゃね??」

「こっちに来て反発されるのは面倒だ。
なら、帝国で虐げられている奴や奴隷堕ちした奴に厳選して連れてくればいい。」

「ユキ姉が女王か…。僕、頑張る!」

「なっ、僕も頑張るから!!」
トントン拍子で話が進んでいる中、当の本人はアワアワしていた。

「じょっ女王なんて、いきなり言われてもどうしたらいい!?」
慌てる雪那に、ラシュがスッ…と前に移動し膝をつき頭を下げる。

「私にお任せを。これでも一応、皇子としての礼儀やマナーを一通り学んでおります。無礼を承知でユキナ様に、私が知りうる全てをお教えしましょう。」
先程のラシュとは別人の姿に、雪那は目をみはった。
それはまるで、王を護る騎士の如く。

「は…はい。ご鞭撻の程、よろしくお願いします…。」

「ユキナ様。そこは、一言『許す』といっていただければ光栄でございます。」
雪那は戸惑ったものの前を見据え、

「―許す。」

「御意。」
ラシュは真剣な表情で頭を下げる。
この瞬間、女王が誕生した。

雪那が女王になると決まり、クレイとチャシャが帝国の現状と条件に合った人間の選別を調査しに出かけた。
その間に雪那は、これから住むのに適した土地へと改造を行う。改造と言っても、こちらが有利に動けるようにするだけなのであっという間に終わった。

「ふぅ…、終わった。疲れた眠い、寝ていいかな?寝ていいよね。お休みな「雪那さん!?寝るならせめてベットの上で寝」zzz…。「っ、セェーフッ!!」」
前屈みに倒れそうになった雪那を、クロードが全速力で受け止める。
目覚めてから休みなしに魔力を使っていれば眠くなるのは当然の事。
しかし相手は雪那―。
どこでも眠れる彼女は、生前と変わらずやるだろうとクロードは思っていた。
流石はオカン。彼女の日常生活を管理していただけある…スーパーマネージャーは今も健在していた。

「大声がしたけど?どうかし…ああ、ユキ姉ってどこでも寝れちゃうから…。」

「誰かが一緒にいないと悪夢にうなされて後が大変なんだよね。」
双子が互いに言葉を補い、思い出を浸る。
クロードは雪那を横抱きにし、奥の部屋に向かった。

「今から雪那さんと休憩してきますので。お手数ですが、2時間が経過しましたら起こしに来てください。」

「「はーい。」」
双子は元気よく返事して作業に戻った。
帝国が仕掛けてくるその日を待ちわびながら。

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