セレブ嫌いとセレブ ~君の中に俺の居場所ある？~

９ 聖斗の思惑

　ざわつきがおさまることはない
　会社がのっとられるんじゃないか
　潰されるんじゃないか
　みんなそれぞれ言いたい放題なことを言っている

　ゴホン

　そんなざわつきを抑えるように華崎社長が
　大きな咳払いをした

　「当社は様々なことを想像し、挑戦し、
　　日々変化をし続けていっています

　　Sky Topさんを潰そうなんて思っていませんからね
　　先日の契約を機に関係を深めていきたいと思っております

　　来月には人事異動があります
　　新しい体制でスタートしたいと思いますので
　　どうかよろしくお願いいたします」

　みんな信じられないような
　でも、悪いことではないんだよなと
　自然と拍手がわきおこった

　「竜哉ー、なんか信じられなくて変な感じだなー」
　同期の武田が話しかけてきた

　「悪くはないけどいきなり変わるのかな？
　　なんか想像できなくて微妙な感じがするよね」

　来月からってもうあと１週間しかないよ
　仕事どころではなく浮かれている者もいれば
　ネットで情報を調べている者もいる

　そして翌日
　全員に雇用契約書がメールで送信されてきた
　なんと全員、月給が３万円UP

　そしてひと際目を引くことがあった
　人事異動の詳細だ

　
　華崎　政伸　社長を解き会長を命ず
　
　華崎　聖斗　社長を命ず

　川野　竜哉　Sky Top営業課より本社社長室　秘書課

　えっ？
　本社社長室？　秘書？
　何それ？いきなりそんなこと言われても
　秘書なんてやったことどころか何やるのかも知らないのに

　おい、出世したなー
　がんばれよー
　
　みんな声をかけてくれていて
　当の竜哉はというと困惑していて
　秘書なんてどうすればいいの？とか
　がやがや騒いでいたところに

　突然、聖斗がやってきた

　聖「こんにちは、川野さん、今後について
　　　お話したいことがありますのでよろしいでしょうか？」
　竜「あ、はい」
　聖「急で申し訳ないのですが
　　　本社勤務に伴い社宅へ
　　　引っ越しをお願いします
　　　準備は全て整っておりますので」

　ん？ん？ん？
　言ってる意味がわかりませんけど
　
　竜「あのー、今の家からでも通えますけど」

　聖「社員特典がありますので
　　　案内しますので行きましょうか」

　よくわからないまま進んでいき
　急かされるようにまたもやあの高級車に乗せられて
　どこへ行くのかわからないまま緊張が高まる

　聖「ここの７０２が竜哉くんの部屋ね」
　竜「あの、家賃が高そうなんですけど…」

　両脇には植え込みがあるし、噴水があるとか
　何これ？　普通のマンションでは見たことないよ
　僕の生きてきた中でこんなの見たことないんですけど～

　聖「家賃は３万だよ」
　竜「は？」

　思考回路停止