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4人の兄
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「……どうでした? 大殿様は」
道三との面会を終えた私に、小見さんが話しかけてきた。
「……流石は、美濃の国の実質的な指導者にまで登りつめたお方かと」
嘘は言っていない。あの人は物凄く怖くて不気味だったけど、そのくらいの圧がなければ戦国時代では名前を残せないことも知っている。
「フフ……本当に、あの方はおっかないですよねぇ。一緒にいるだけで胃が痛くなってきますよ」
「……母上様でも、父上相手にそう思うのですか?」
「ええ。今でこそ多少は慣れましたが、今でもあのお方は、私達のような凡人とは住む世界が違うお方だと思っています」
……この人でさえ、そう思うのか。
道三相手に一切臆することなく話していたこの人でさえ、道三には人ならざる何かを感じているのか。
「……斎藤利政は、人の皮を被った蝮です。どんな相手を見る時も、獲物を狙うような眼をすることしか出来ない。たとえ身内だろうと、言葉の中には常に毒が仕込まれている」
……眼と、言葉。その2つが、道三を人ではなく蝮たらしめる要素ということか。
「……でも、どれだけ恐ろしくとも、あのお方があなたの父親なのです。……よいですか、帰蝶。あなたは娘として、斎藤山城守利政という男の力になってあげて下さい。あの嫌われ者には、せめて身内だけでも味方してあげないと……」
そう言う小見さんの言葉からは、まるで斎藤道三の最期を知っているかのような必死さが伝わってきた。
史実での道三は、美濃の頂点に登りつめたにも関わらず、最期は美濃の国人の殆どに見捨てられた末に息子である義龍に討たれてしまった。
果たして、この世界でも道三はそんな惨めな最期を遂げるのか、あるいは……
「母上様、1つ宜しいでしょうか?」
「……なんですか?」
「えっと……兄上は、一体どこにいるのかなと……」
息子でありながら父である道三を殺した男、斎藤義龍。道三の最期について考えていた時、私はまだ彼に会っていないことに気づいた。
もしかして、稲葉山に住んでいないほど不仲だったりして……
「あら、3人の兄とはもう会っていたじゃないですか。新九郎殿とも、孫四郎とも、喜平次とも」
「……え?」
「さっき私達と一緒に大殿の話を聞いていた面々ですよ。大殿も、息子達と言っていたでしょう?」
「そ、そうでしたっけ? えっと、さっきはもう緊張していて自分への言葉以外は耳に入らず……」
「……では、本人はいませんが紹介致しましょう。
あなたの右手前に座っていた大男が、大殿の長男である新九郎利尚殿です。無口な人ですが、ああ見えてとても優しいのですよ?」
利尚? いや、長男って言ってるし義龍だよね。この時代の人はコロコロ名前変えるし、あの大男と義龍は特徴も一致するし。
「あなたの左手手前に座っていたのが、次男の孫四郎龍重。私にとっては長男になります」
あのイケメンは小見さんの子供なのか。うん、どことなく顔が似てると思ったし、それも納得だよ。
「その隣にいたのが、三男の喜平次龍定。あの子も私の子なのですが……まあ、顔も性格も大殿に似た子ですね……」
あの悪人面も私と同腹の兄なのかよ……孫四郎さんに小見さんの遺伝子吸われたのか知らないけど、道三の遺伝子が濃すぎるわ。
「そして新九郎殿の隣にいたのが、大殿の養子である正義殿です。彼は普段は稲葉山にはおらず、東美濃の烏峰城にて東濃の抑えを任されております。最年長なだけあって実戦経験豊富で、既に何度も戦で武功を立てているんですよ?」
へぇ。あの髭男ってそんなに凄い人だったんだ。普段稲葉山にいないってことは、会う機会少なそうだけど。
「そして言わずもがな、あなたの父親が斎藤山城守利政。美濃の蝮です」
道三じゃなくて、利政か。そういや頭剃ってなかったし、まだ入道前ってことか。
もう道三で覚えてるから、心の中では道三呼びを続けるだろうけど。
「彼らが、あなたの兄や父となる人物達です。ちゃんと、名前と顔を覚えて下さいね?」
「は、はい……頑張って覚えます」
「……よし。帰蝶、気を張りつめて疲れたでしょう?息抜きついでに、私の家族のところに行ってみましょうか」
「……母上様の家族……ですか?」
「ええ。斎藤家ではなく、私の実家……明智家の人間です」
……え? 今明智って言ったの? 明智ってもしかして、あの……
「私の兄と甥っ子が、今ならこの稲葉山に来ているはずです。この期を逃せば遠く東美濃にまで向かわなくてはいけなくなりますし、今のうちに紹介しておこうと思って」
「明智……母上様の実家……ですか」
「ええ。もう向こうに話は通してあるから、行きましょうね」
明智……明智といえば、私にはあの人物しか思い浮かばない。
私の将来の夫、織田信長に最も信頼された男にして、その信長から天下を奪った張本人……
明智光秀だ。
道三との面会を終えた私に、小見さんが話しかけてきた。
「……流石は、美濃の国の実質的な指導者にまで登りつめたお方かと」
嘘は言っていない。あの人は物凄く怖くて不気味だったけど、そのくらいの圧がなければ戦国時代では名前を残せないことも知っている。
「フフ……本当に、あの方はおっかないですよねぇ。一緒にいるだけで胃が痛くなってきますよ」
「……母上様でも、父上相手にそう思うのですか?」
「ええ。今でこそ多少は慣れましたが、今でもあのお方は、私達のような凡人とは住む世界が違うお方だと思っています」
……この人でさえ、そう思うのか。
道三相手に一切臆することなく話していたこの人でさえ、道三には人ならざる何かを感じているのか。
「……斎藤利政は、人の皮を被った蝮です。どんな相手を見る時も、獲物を狙うような眼をすることしか出来ない。たとえ身内だろうと、言葉の中には常に毒が仕込まれている」
……眼と、言葉。その2つが、道三を人ではなく蝮たらしめる要素ということか。
「……でも、どれだけ恐ろしくとも、あのお方があなたの父親なのです。……よいですか、帰蝶。あなたは娘として、斎藤山城守利政という男の力になってあげて下さい。あの嫌われ者には、せめて身内だけでも味方してあげないと……」
そう言う小見さんの言葉からは、まるで斎藤道三の最期を知っているかのような必死さが伝わってきた。
史実での道三は、美濃の頂点に登りつめたにも関わらず、最期は美濃の国人の殆どに見捨てられた末に息子である義龍に討たれてしまった。
果たして、この世界でも道三はそんな惨めな最期を遂げるのか、あるいは……
「母上様、1つ宜しいでしょうか?」
「……なんですか?」
「えっと……兄上は、一体どこにいるのかなと……」
息子でありながら父である道三を殺した男、斎藤義龍。道三の最期について考えていた時、私はまだ彼に会っていないことに気づいた。
もしかして、稲葉山に住んでいないほど不仲だったりして……
「あら、3人の兄とはもう会っていたじゃないですか。新九郎殿とも、孫四郎とも、喜平次とも」
「……え?」
「さっき私達と一緒に大殿の話を聞いていた面々ですよ。大殿も、息子達と言っていたでしょう?」
「そ、そうでしたっけ? えっと、さっきはもう緊張していて自分への言葉以外は耳に入らず……」
「……では、本人はいませんが紹介致しましょう。
あなたの右手前に座っていた大男が、大殿の長男である新九郎利尚殿です。無口な人ですが、ああ見えてとても優しいのですよ?」
利尚? いや、長男って言ってるし義龍だよね。この時代の人はコロコロ名前変えるし、あの大男と義龍は特徴も一致するし。
「あなたの左手手前に座っていたのが、次男の孫四郎龍重。私にとっては長男になります」
あのイケメンは小見さんの子供なのか。うん、どことなく顔が似てると思ったし、それも納得だよ。
「その隣にいたのが、三男の喜平次龍定。あの子も私の子なのですが……まあ、顔も性格も大殿に似た子ですね……」
あの悪人面も私と同腹の兄なのかよ……孫四郎さんに小見さんの遺伝子吸われたのか知らないけど、道三の遺伝子が濃すぎるわ。
「そして新九郎殿の隣にいたのが、大殿の養子である正義殿です。彼は普段は稲葉山にはおらず、東美濃の烏峰城にて東濃の抑えを任されております。最年長なだけあって実戦経験豊富で、既に何度も戦で武功を立てているんですよ?」
へぇ。あの髭男ってそんなに凄い人だったんだ。普段稲葉山にいないってことは、会う機会少なそうだけど。
「そして言わずもがな、あなたの父親が斎藤山城守利政。美濃の蝮です」
道三じゃなくて、利政か。そういや頭剃ってなかったし、まだ入道前ってことか。
もう道三で覚えてるから、心の中では道三呼びを続けるだろうけど。
「彼らが、あなたの兄や父となる人物達です。ちゃんと、名前と顔を覚えて下さいね?」
「は、はい……頑張って覚えます」
「……よし。帰蝶、気を張りつめて疲れたでしょう?息抜きついでに、私の家族のところに行ってみましょうか」
「……母上様の家族……ですか?」
「ええ。斎藤家ではなく、私の実家……明智家の人間です」
……え? 今明智って言ったの? 明智ってもしかして、あの……
「私の兄と甥っ子が、今ならこの稲葉山に来ているはずです。この期を逃せば遠く東美濃にまで向かわなくてはいけなくなりますし、今のうちに紹介しておこうと思って」
「明智……母上様の実家……ですか」
「ええ。もう向こうに話は通してあるから、行きましょうね」
明智……明智といえば、私にはあの人物しか思い浮かばない。
私の将来の夫、織田信長に最も信頼された男にして、その信長から天下を奪った張本人……
明智光秀だ。
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