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第一章 出会い
1-2 紫煙殿
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ここは紫煙殿と呼ばれる神殿なのだと、央華が教えてくれた。
神殿なので神に仕える神官がいて、それを支える働き女たちがいる。央華は見習い神官の身分。
とにかく、ここで暮らしているのは女性だけ。それが今の董星には重要なことだった。
「あなたは木の下に倒れていてね、私が見つけたの」
央華は言った。天女がいったん部屋を出て行った後で、董星とは二人きりだった。
央華は少し照れているようでもあり、うれしそうでもあった。
「それでね、蓉杏に言ったら、」
蓉杏というのはさっきの天女の名前だった。
「男の子の格好をしているけれど、この子は女の子に間違いないから、神殿で面倒をみれるって言って、それで、ここに連れて来たの」
「ああ、それはどうもありがとう……」
確かに彼は顔だちも体つきも華奢な印象で、女の子だとしても十分に通じた。董星は複雑な思いで作り笑いをした。
やはり自分は女だと言うことになっているらしい。
央華たちに悪意があるとは思えなかった。むしろ、不都合をおして自分をかばってくれているような。そういうのは、なんとなく伝わるものだ。
蓉杏が食事を運んで戻って来た。とたんに董星は空腹を覚え、自分はまだ生きていると思って少しほっとした。
卓の上に並んだ椀を持ち上げて央華が言った。
「食べさせてあげるね」
「もう大丈夫だよ、一人でできるから」
「でも、心配だから」
押し問答をしていると、蓉杏が笑顔で言った。それはゆっくりと、まるで言い聞かせているかのようだった。
「央華、よいお姉さんができて、よかったわね」
央華はたちまち笑顔になった。
董星は蓉杏の澄ました横顔を見て悟った。
ああ、これは分かっているのだ。少なくとも、蓉杏は自分が男だと知っている。
確信犯。知っていてなお、女として自分をこの場所に連れて来たのだ。禁を侵して、危険を承知で。
董星の視線を受け、蓉杏も董星を睨み返した。その目は明らかに、
『余計なことを央華に言うな』
と、そう語っていた。
神殿なので神に仕える神官がいて、それを支える働き女たちがいる。央華は見習い神官の身分。
とにかく、ここで暮らしているのは女性だけ。それが今の董星には重要なことだった。
「あなたは木の下に倒れていてね、私が見つけたの」
央華は言った。天女がいったん部屋を出て行った後で、董星とは二人きりだった。
央華は少し照れているようでもあり、うれしそうでもあった。
「それでね、蓉杏に言ったら、」
蓉杏というのはさっきの天女の名前だった。
「男の子の格好をしているけれど、この子は女の子に間違いないから、神殿で面倒をみれるって言って、それで、ここに連れて来たの」
「ああ、それはどうもありがとう……」
確かに彼は顔だちも体つきも華奢な印象で、女の子だとしても十分に通じた。董星は複雑な思いで作り笑いをした。
やはり自分は女だと言うことになっているらしい。
央華たちに悪意があるとは思えなかった。むしろ、不都合をおして自分をかばってくれているような。そういうのは、なんとなく伝わるものだ。
蓉杏が食事を運んで戻って来た。とたんに董星は空腹を覚え、自分はまだ生きていると思って少しほっとした。
卓の上に並んだ椀を持ち上げて央華が言った。
「食べさせてあげるね」
「もう大丈夫だよ、一人でできるから」
「でも、心配だから」
押し問答をしていると、蓉杏が笑顔で言った。それはゆっくりと、まるで言い聞かせているかのようだった。
「央華、よいお姉さんができて、よかったわね」
央華はたちまち笑顔になった。
董星は蓉杏の澄ました横顔を見て悟った。
ああ、これは分かっているのだ。少なくとも、蓉杏は自分が男だと知っている。
確信犯。知っていてなお、女として自分をこの場所に連れて来たのだ。禁を侵して、危険を承知で。
董星の視線を受け、蓉杏も董星を睨み返した。その目は明らかに、
『余計なことを央華に言うな』
と、そう語っていた。
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