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130話 魔力暴走 sideベル
しおりを挟む目の前のアーノルドに対して、酷い怒りが湧き上がる。信頼してハルミを預けたのに、ハルミを抱いた事も許したのに、なのにアーノルドは、ベルを裏切った。もはや目の前の男は敵だ。
(親友じゃない?友達だと思ってたのは、俺だけかよ?ふざけんなっ!!!!)
「ふざけんな……。俺は絶対に、そんなの認めない。サインも絶対にしない、ハルミは俺が喚んだんだ‼︎お前の運命の相手なんかじゃない!!!大体結婚なんかしてどうするって言うんだ?!子供も作れないくせにっ!!!なのにハルミがお前を選ぶ訳っ………」
言ってからベルはハッとした。思わず口を押さえるとアーノルドは苦笑した。
「はっ……それが君の本心か?拙者を慰める言葉を度々口にしていた癖に、そう心の奥底では思っていたんだな?……子はさっきのグレンと作る、それに、奴隷とも作るそうだからな、養子に迎える。君が心配する事はない、ハルミは拙者達で幸せにする。………どうしてもサインをしないと言うなら、それも良いだろう。やりようはいくらでも有る。………君とはこれでお別れだ。退院後に会いに来ようと無駄だ。話はそれだけだ………」
立ち去ろうとするアーノルドの腕を掴むと、アーノルドは顔を顰めた。
「待てよ‼︎一方的すぎるっ!!!さっきの奴呼べよ‼︎お前よりは話が通じそうだ。………お前が俺を友達だと思ってないのはわかった。でも、ハルミ抜きで話されても納得なんて出来ない!!!逃げんなよ⁉︎」
アーノルドの意思も言いたい事も理解出来た。これが冗談で無い事も理解出来た。だが、理解出来たのと納得出来るのとは、また別問題だ。もし本当にハルミがアーノルドを選んだのなら百歩譲って納得も出来るが一方的にベルを排除するような、この行動は許せない。
「………しつこいぞぉ、君には、もう会わせない、先ほどそう言ったばかりだが?君に会うのをハルミも拒否している……。君からの援助も要らないとハルミは言っているんだ。聞き分けろベル…、君は子も作れるし魔力も多い。女なら他にも選べるだろう?だが、拙者にはハルミだけなんだ…。欠陥品の拙者を受け入れてくれた。拙者の為に、この世界に来た。拙者の番だ」
アーノルドはベルが掴んだ腕を振り払い、そう言った。それにベルの中で膨れ上がった怒りは限界に来た。
(は?ハルミがこの世界に来たのは、俺が喚んだからだ。なのに、つがいだと?なんだよ、それ?ハルミは俺のモノだ!!!!クソ野郎!!!!)
ふざけんなふざけんなふざけんな!!!!!
ブワリとベルの髪が浮き上がった。バチバチと体の周りを放電するかの様に魔力が渦巻く。それに流石のアーノルドも驚いたのか、目を見開いていた。
怒りのままにアーノルドに掴みかかると空気が振動した。
「落ち着け!!!!ベルっ!流石にこれは不味い!!!魔力を暴走させる気か?!正気か?魔力の戻りきっていない君も、タダでは済まないぞ!!!死にかけたのを忘れたか?!自爆などそんな事をしても、なんの意味もないぞ!!!」
「うるさい!!!そんなの知るかっ!!!なら、ハルミに会わせてくれよ!!!アーノルド!!!!」
魔力暴走とは要するに自爆だ。無理矢理魔力を体外で暴発させる。巻き込まれたら、タダでは済まない。暴走させた側は魔力切れ寸前になるだろうし、魔力の少ない者ならば、そのまま死ぬことも珍しくは無い。まともな人間なら自らそれを行うなど正気の沙汰じゃ無い。だが、今のベルの精神状態は不安定で怒りと悲しみに支配されていた。それを何かにぶつけないと狂ってしまいそうだった。
「それは出来ない!!!!く…っ……君がその気なら、こちらも容赦はしないぞ?!」
▷▷▷▷▷▷
ドゴーンと言う凄い音と振動。それから焼けるような腕の痛み。ベルは薄れ行く意識の中、目の前で血だらけで泣きそう顔のアーノルドを見て、なんでだよと思った。
(なんで………お前がそんな顔するんだよ………くそ………)
完全龍化したアーノルドも魔力を暴発させてベルの魔力を相殺したのだ。ベルは左手に酷い怪我と火傷を負ったし、アーノルドも頭から血を流し服も焼け焦げ、顔も傷だらけだ。だがベルの魔力が万全だったのなら被害はこれくらいでは済まなかっただろう。
「………ベル、許さなくて良い。だが、言わせてくれ………すまない」
アーノルドのその言葉を最後に、ベルの意識は闇に落ちた。
(言われなくても絶対に………許さない………)
▷▷▷▷▷▷
「アーノルド殿!!!これは一体何があったんですか?ひどい怪我ですよ?」
すぐにグレンが病室に飛び込んで来た。倒れるベルとぼろぼろのアーノルドを交互に見て、顔を真っ青にしている。これ以上グレンに隠し通すのは不可能だ。アーノルドは、はあと息を吐いてから口を開く。
「少し長い話になる。………片付けと着替えをしてから話そう。………とりあえず、場所を変えよう、傷は時期に治る。問題無い」
何事かと集まる看護師にベルの魔力暴走を抑えたと説明して、アーノルドは馬車に向かう。後ろからは困惑したグレンがついて来ている。
(………想像よりも酷い結果だ。………着替えを本当に使う事になるとはなぁ。はあ………)
アーノルドは、また溜め息を吐いた。これでベルとの関係は完全に終わった。アーノルドが身勝手に終わらせた。
(拙者も君を………親友だと思っていたさ)
自らが、ベルに掛けた酷い言葉に胸が痛む。それから湧き上がる安堵に自己嫌悪した。ベルが魔力を暴走させた時はヒヤッとしたが、これでベルの入院期間は伸びた。ベルがハルミと今後会えないようにする為の準備をする時間が増えた。
そう思って安堵した自分自身に、アーノルドは心底呆れた。だが、同時に仄暗い喜びが胸を満たした。これでハルミの一番はアーノルドだ。
たとえ今の親友を、かつての友の孫を裏切っても、それでも、アーノルドはハルミの一番になりたかった。ハルミを手に入れたい。その為ならば、全てを捨てても良いと思う程に、愛してしまった。
(………ベル、君の代わりに必ず、拙者がハルミを幸せにする。してみせる………)
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