異世界召喚されたけど定番のチートも逆ハーレムも番も溺愛もエロもありませんでした。 無ければ自分で作れば良いのでは? よし、私頑張ります!!

福富長寿

文字の大きさ
134 / 144

132話 拒絶

しおりを挟む




視線を合わせてくれないアーノルドに、ハルミは胸が苦しくなってくる。

(アーノルドさん。………結婚を考え直すって……なんで?どうして?…………ベルと話すって……何を?…………まさか)

頭を過ったのはマリアの事だ。昨日、アーノルドに結婚を申し込んでいた。

(あ…………嘘……。ち、違う……違うよね?そんなの……絶対に違う。…だって、私を選んでくれた………)

そう思うのだが、体の震えが止まらない。一度は断ってくれたが、昨夜もしかしてアーノルドは、やっぱりハルミより美しいマリアに、心変わりをしたのでは無いかと、そう思ってしまった。現にアーノルドはハルミとの結婚を考え直したいと言い出した。

(…………あ)

アーノルドは娼婦の言葉に傷ついてインポテンツになった。更には生殖能力の無い自分自身を欠陥品だと責めて、結婚を諦めていた。実際に、アーノルドに本音で話をした時にも、妥協してハルミを選んだのだと思っていたと告げて、その時のアーノルドは違うと否定してくれた、だが、今のアーノルドはインポテンツも解消され、あの美しいマリアから子が作れなくても構わないと結婚を申し込まれたのだ。心変わりしたとしても、何もおかしくはない。

(…………違う。アーノルドさんはそんな人じゃ無い……。でもなら、なんで?)

アーノルドを信じたいのに、ドンドン嫌な考えが浮かんでくる。

「あ、アーノルドさん。どうして?………私はベルと会う気は無いです……。、だって保護者変更も……したんですよね?っ………アーノルドさん、私の事が嫌になったんですか……?いや……お願い……アーノルドさん、いやぁ……」

縋るようにアーノルドの胸に飛び込む。ぎゅっと白衣を握ると、肩にそっと手を置かれた。

「ハルミっ……違う…、そうじゃ無い。君の事を嫌いに……なった訳では無い。だが、君はベルに会うべきだ……。保護者変更もまだしていない。………する必要が無くなったんだぁ。ベルに会ってくれ。ハルミ……、そうすれば、きっと君も理解出来る……今、ここで拙者の口から理由は話したくない……頼む………」

優しく肩を押し返されてハルミは抱きついていたアーノルドから引き離された。やんわりと、だが完全なる拒絶にハルミの心は凍りついた。

「保護者変更……してない?アーノルドさん?な、何言ってるんですか?問題無く終わったって……。だって、サイン貰えたんですよね?今更保護者変更の必要が無いって…、どうして?……なんで?だって……だって……、結婚してくれるんですよね?だから、だから、これからはアーノルドさんが面倒を見てくれるって………、アーノルドさん?それにグ、グレンさんは?グレンさんは結婚を考え直すって話を知ってるんですか?」

ハルミが、どもりながらも震える声で尋ねると、アーノルドは苦い顔で頷いた。

「グレンには朝早くに連絡を入れて有る。グレンも君がベルに会いに行く事に賛成している。…………ハルミ、とりあえず行こう?………行けば必ず君も納得する。………その後にグレンも遅れてやって来る。全員で話そう。……契の事や……これからの事を……少し長い話になるかも知れん………っ……」

嫌そうな顔でそう言い、こちらを一切視界に入れないアーノルドにハルミは泣きたくなる。 

(あ………。グレンさんも賛成?………え?契……なんで?……グレンさんも結婚を考え直すって事……?今後も保護者はベルから変更しないって事?………どう言う事なの?………これからの話って何……?…………………っ…いや…)

「アーノルドさんっ!!!いや!!!嫌です!!!行きたくないっ!!!………アーノルドさん、好きですっ!!!愛してますっ!!!!好きなんです……、アーノルドさん、お願い……結婚を考え直すなんて言わないで………」

もう一度抱きつくとアーノルドの体は強張った。それにハルミの胸はナイフで刺されたかのように痛む。

(嫌。………ベルに会いに行ってどうなるの?……やっぱりベルに私を返すの?最初の保護者だから?…………アーノルドさんは、マリアさんと結婚したいから私が邪魔になったの?………そんなの嫌ぁ……)

体が震えて汗が止まらない。ベルに会って何を話すと言うのか。ベルが退院した後の事?ハルミは、またベルの所で暮らすのか?そんなの嫌だ。そんなの地獄だ。まだベルへの気持ちも完全に無くなっていない。そんな状態で共に生活なんて苦しいだけだ。それにベルはマリアを愛している。結婚はしないがマリアと子を作る。それを近くで見るのなんて絶対に嫌だ。しかもマリアはアーノルドと結婚するかもしれないのだ。

(なにそれ…、なにそれ。ずるい…。なんで………、ずるいずるいずるい!!!!そんなの嫌ぁ!!!!)

「アーノルドさん、お願い……。お願い、私、行きたくないです。……アーノルドさんとずっと此処に居たい!!!結婚したいですっ!!!愛してます!!!捨てないで……アーノルドさん……すき………」

必死にアーノルドに縋りついてキスをしようと背伸びをしたが、顔を背けられて唇はアーノルドに届かなかった。

(嘘………うそ、うそうそ、……)

キスすら拒絶されてハルミは心臓が潰れそうになった。アーノルドはハルミを愛してると言ってくれたのに………。妥協じゃないと言ってくれたのに…。あれだけ可愛いって言ってくれたのに。なのに今キスを拒まれた。美しいマリアに結婚を乞われて目が覚めてしまったのか?アーノルドは前に言った。ハルミの容姿が悪いから好き好んで相手をする奴は居ないと。

「アーノルドさん?……ど、して?………っ……嘘つき!!!!!!嘘つき!!!!」

そう叫ぶように言葉をぶつけるとアーノルドはグッと唇を噛んでから小さくすまないと呟いた。





▷▷▷▷▷▷







気がつけばハルミは人通りの少ない路地裏に居た。アーノルドの謝罪を聞いた途端に、頭が真っ白になって屋敷を飛び出していた。アーノルドの制止の声も振り切り、無我夢中で走って気がついたら薄暗い路地裏だった。ポタリと地面に涙が零れ落ちる。思いっきり走ったので、髪はぐしゃぐしゃで顔も涙と鼻水でぐちゃぐちゃで酷い有様だ。

(う………は…、……うぅ…アーノルドさんの嘘つき。やっぱり、皆可愛くて綺麗な人の方が良いんじゃん……、っ……でもグレンさんは?………っ……そうだよ。おかしい。……なんでグレンさんまで?)

しゃがみ込み目元を拭ってから呼吸を整える。それから落ち着いて考える。薄暗い路地裏に一人。それが、ある意味で良かったのか思考がハッキリとしてくる。アーノルドの心変わりで結婚を考え直すのは理解出来る。だがアーノルドとの結婚を考え直すのに何故グレンまで来るのか?ベルと何を話すと言うのか。

(っ、………嫌だけど……、でも、もしアーノルドさんが私との結婚を止めるとして、なんでグレンさんがベルと話すの?私もなんでベルと?………だってそうなればグレンさんとだけ結婚すれば良いんじゃん。…………っ……なら、どうして全員で話す必要が有るの?)

どれだけショックを受けてもこうして冷静に考える自分自身に本当に可愛げが無いなと思いながらもハルミは思考を止めない。

(……………っ……何か理由が有るの?マリアさんは関係無い?私が嫌われた訳じゃ無い?)

ほんの少しそう期待して、それから頭を振る。

(ううん。なら、なんでキスを拒まれたの?…………っ……アーノルドさんの馬鹿……。)

またボロリと涙が溢れた。

やっぱりどう考えてもアーノルドは目が覚めてしまったのだ。だからハルミをベルの元へ返す為の話し合いをする為に、会いに行くと言ったのだ。

(……………アーノルドさん。ベル……。なんでマリアさんばっかり……ずるいずるいずるい!!!!………うぅ……)

ボロボロと流れる涙をゴシゴシと擦る。着ているワンピースの袖がぐっしょりと濡れてしまっていた。

(……………グレンさんはお仕事中だよね?………話を知ってるってアーノルドさん言ってた。………グレンさんはどうしてベルに会うのに賛成したの?……アーノルドさんが何か言ったの?何を?………わからない……)

どう考えてもはグレンの事だけが腑に落ちない。

(………っ……、グレンさんに聞きに行こう。それが一番早いし……。ここからなら、詰め所も近いよね?……アーノルドさんが既に連絡してるのかな?……私を探してるよね?)

ノロノロと立ち上がって、もう一度涙を拭う。着の身着のまま飛び出してきたのでローブも無い。泣き腫らした酷い顔で詰め所まで行くのをほんの少し躊躇うが、どっち道帰るにしても外の通りを歩かないとならない。それなら、まだ詰め所の方が近い。

(……………っ……はあ。駄目だなぁ。もう少し考えて行動しなきゃ行けないのに……。昨日もそれで後悔したのに……、全然学習してないじゃん私。こっちに来てから、どんどん馬鹿女になってるなぁ………。感情的に行動して、それでどうなるって言うの?……落ち着かないと……、落ち着いて話をしないと……うぅ………っ……)

すーはーと深呼吸をしてから路地裏の入り口に向かう。人通りを確認してサッと詰め所に向かおうとそう考えていると路地裏の入り口に人が二人立っていた。

(…………人?やだなぁ……。今はローブも着てないし……。少し怖いな)

こちらの世界に来てから一人で出歩いたのは初めてだ。いや、前に一度だけグレンから逃げた時は、ほんの一時一人だったが。

静かにそっと横を通り過ぎようと考えたのだが通せんぼをする様にその二人の人影は立ち塞がっていた。どちらも大きい。逆光で良く見えないが背格好が良く似ている。

(あれ………?)

「………ハルミお嬢様。こんな所にお一人で居ては危ないで御座いますですよ?」

人影の片方がそう声を発した。



しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

数年振りに再会した幼馴染のお兄ちゃんが、お兄ちゃんじゃなくなった日

プリオネ
恋愛
田舎町から上京したこの春、5歳年上の近所の幼馴染「さわ兄」と再会した新社会人の伊織。同じく昔一緒に遊んだ友達の家に遊びに行くため東京から千葉へ2人で移動する事になるが、その道中で今まで意識した事の無かったさわ兄の言動に初めて違和感を覚える。そしてその夜、ハプニングが起きて………。 春にぴったりの、さらっと読める短編ラブストーリー。※Rシーンは無いに等しいです※スマホがまだない時代設定です。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...