キュウカンバ伯爵家のピクルス大佐ですわよ!

紅灯空呼

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【第一幕】デモングラ国が攻めてきた!?

サラッド公爵家当主ラデイシュ中将

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 ここはヴェッポン国自衛軍の総司令本部。

『ブルマアニュ高原上空二千五百、マルナナ・フタハチ、たった今迎撃♪』
「げ、迎撃だとぉ!?」
『シュアー! レッドファイアの直撃寸前に三名が脱出した模様。現在パラシュートを使い、高原丘陵地帯へ向けて降下中』
「…………」

 トランシーバーを片手に握ったまま黙り込んでしまったのは、総司令副長官を務めているマルフィーユ少将。眉間に幾本もの皺を形作り、このうえなく深刻そうな表情をしている。
 彼と話している相手は、ピクルス専用デパッチ・ピックルに乗って晴れの朝空を飛行中のピクルス大佐である。

『掃討部隊の派遣を、お願いしますわ。以上』

 これを最後に、遠距離トランシーバーによる通信は断たれる。
 この時、部屋の扉が開き、ディラビス少佐がつかつかと入ってきた。

「おはようございます、マルフィーユ少将」
「……」
「少将、どうされました?」
「馬鹿なことを……へ、陛下に、今すぐ陛下にお伝えせねば」
「はっ、国王陛下にですか?」
「そうだ。行くぞ、ディラビス!」
「ラジャー!!」

 Ω Ω Ω

 ピクルス専用デパッチ・ピックルがサラッド公爵家の敷地内にある戦闘機発着場に着陸した。近くには量産型のデパッチが二機、さらに最新の大型戦闘機ブルーカルパッチョも一機ある。
 発着場はサラッド家の邸から百メートルも隔てない位置に作られている。緊急時の出撃が考慮されているのだ。
 ここに降り立った少女ピクルスは、軍用ヘリコプターや戦闘機などには似つかわしくもない、紅白の派手なゴスロリ風衣装を身に纏っている。片手に機関銃を携え、チョリソールとザラメを左右に従えて歩き始めた。
 ちょうど邸を出て発着場へ向かってくる男がいる。他でもなく当主のサラッド‐ラデイシュだ。

「ラデイシュ中将、おはようございます♪」
「お、おはようございます、サラッド中将!!」
「おはようございます、サラッド中将!」

 二人が敬礼をして一匹が尻尾を振った。

「やあ、おはよう」

 にこやかに敬礼を返すラデイシュ。身長はチョリソールより少し低いものの、それでも骨格がガッチリとしていて、まさに軍人といった体格だ。

「ラデイシュ中将、報告です! つい先ほど、領空侵犯をしてきたボムキャベッツ一機を、わたくしが撃ち落としました♪」
「ボムキャベッツが領空侵犯だと?」
「シュアー!!」
「それは物騒な話だな。今日はデモングラ国から、大切な客人を迎えることになっているというのに……」

 ラデイシュが若干渋い表情を見せた。

「客人?」
「ああ、そうだとも。しかしデモングラ国軍の連中も、ここ最近は大人しくしていると思っていたのだが、またなにか企んでいるのだろうか?」
「不届きな輩どもは、このピクルス大佐が纏めて成敗しますわ。おっほほほ♪」
「はっはっは、それは頼もしいことだ。我が息子にも見倣わせたい……」

 笑顔も束の間で、すぐにラデイシュの顔に曇りの色が表れてきた。ピクルスと同じ十七歳の長男マロウリはヴェッポン国男児としての活気が足りていない、と普段から父親として軍人として、ラデイシュは思い悩んでいるのだ。

「ところでラデイシュ中将。頂きましたジェットフット、それはもう素晴らしい性能でしたわ♪」
「おお、早速試してくれたのだな」
「はい、昨日使いました。そして高度六十メートル以上の大ジャンプに成功しましたわ。おほほほ」

 顔に少し明るさが戻ったラデイシュを前にして、さも誇らしげに話すピクルス。
 背後に立つチョリソールとザラメは黙って聞いている。

「おおそうか、それなら実用化に向けて開発を進めさせよう」
「きっと飛ぶように売れますわ♪」

 サラッド公爵家は、先代までキュウカンバ家と同じく武器商を営んでいた。
 だがラデイシュは、自分が当主となった今から十五年前、家庭向け電化製品を作る会社・サラッド電器を興し、それが時代のニーズに見事なまでに適合して大成功を収めた。ラデイシュは軍人であると同時に社長なのだ。
 最近では子供向け玩具の開発にも力を入れていて、ジェットフットは足で地面を蹴って高く跳び上がりたい、という欲求、すなわち「力への意志」を満たすための遊び道具として考案されたのである。

「ああそういえば、昨日から庭番ロボットたちの姿を見ないが、もしかして?」
「おほほほ。全部で三万体でしたわね。四十秒で壊滅です♪」
「なんと!!!」

 ラデイシュの両目が丸まった。それを見つめながらピクルスは続ける。

「丘も吹き散りましたわ」
「あっはっは、やってくれたか!」
「シュアー! おっほほほぉー♪」
「うーん、次はもっと頑強なロボットと丘を作らねばなあ、はははは!!」

 ピクルスも相当だが、全く引けを取らないラデイシュの豪胆さだ。
 そして、庭番ロボットの開発計画については、その見直しが余儀なくされた。
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