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【第六幕】ピクルスの出稼ぎ留学@ヤポン神国
大福学院始まって以来の快挙&例の物
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ヤポン神の手によって振り上げられた鋭い刃は、そのまま一気にピクルスの白い首へ振り下ろされる。
――ガッツィーンηη!!
人間であれ、犬であれ、ハムスターであれ、全ての耳という耳をつんざく高い衝突音が響き渡り、そして教室の窓硝子を震わせた。
なんと、気絶して倒れているはずのヨツバの身体が、まるで降って湧いたかのようにポンズヒコとピクルスの間に現れたのだ。しかも、ヨツバの右拳が、オチタスピの銀色に輝く刃をしっかりと受け止めているではないか。まさに目にも留まらない速さである。
「へへへ、ポンズヒコさんよ」
「なんぞ?」
「刀の刃というのは、女に向けて振り下ろす物じゃあ、ないんだぜ」
「ならば、なにへ向けて、振り下ろすのじゃ」
「ふふふ……そいつは、自分の頭で考えてみな」
「フッ、そそ。そうじゃのう。フッそそ」
小さく呟いた後、いつもの独特な笑い声を発したポンズヒコは、座ったままで微動だにしないピクルスの背中側へと回り込み、鞘にオチタスピを納めた。
ヨツバはピクルスの正面に立ち、右手を差し出す。オチタスピの刃を真っ正面から受けたにもかかわらず無傷だ。
ピクルスがヨツバに笑顔を見せる。
「あなたの拳、武器ですわね♪」
「へへへ、ピクルスさんよ」
「なにかしら?」
「お前、分かってるじゃないか」
「シュアー!」
ピクルスは、目の前にある頑丈な手の平を握った。二人の満面の笑みは眩しく清々しい。
ピクルスは空いている方の手を胸に当てて、一瞬間だけ目を伏せた。
この時、ヨツバが咄嗟に叫び声を上げる。
「なあピクルス、俺様の嫁になれ!」
「ラジャー!!」
この瞬間に、ピクルスのヨツバに対する接近度数が120に達した。
文句なしに婚姻の条件を突破した。たったの一日、それもわずか一時間足らずでピクルスはヨツバを攻略できたのだ。これは、大福学院始まって以来の快挙といえよう。
教室内に一頻り拍手が湧き起こった。
だが、教壇に立つピザエルが苦虫を噛み潰した様な顔を見せる。
「くそガキども、静粛にしたらんかーっ!」
この一喝で、教室内は蜂の巣が駆除された後のように静まった。
澄まし顔のピザエルが言葉を繋ぐ。
「ピクルスはん」
「なにか?」
「あんさん、ここを今すぐ卒院してヨツバはんと挙式するんか。それとも婚姻を留保したまま学業を続けんのか。どっちゃにするんや、さあ選んでんか」
特定の攻略対象者との婚姻が可能になった時点で、恋愛疑似体験遊戯を終えてしまうのか、それとも続けるか、どちらかを選ぶ必要がある。
「わたくしは、ここでの学業を続けますわ♪」
ピクルスは迷わず遊戯継続を決めた。命がある限り使命を果たさなければならないのである。
だが、ピクルスが次の攻略対象者との個別経路に入るには、その者に対する接近度数が25に達しなければならない。これは攻略を重ねる毎に、経路突入に必要な度数が5ずつ上がる制度規則によるものだ。
「ほんならピクルスはん、はよお席に座りなはれ」
「ラジャー!」
ピクルスが自席に戻ったので、自己紹介が再開となる。ニクコの番である。
「ヤポン神国一の大判持ちフタバラ子爵家の長女ニクコです。お金に困っている方はアタイのお家から援助をして上げてもいいのよ。その代わり、アタイのことを、美人で優しくて思いやりのある女の子だって、大福学院中に広めて頂戴よ」
ここまで話し終えたニクコはポケットから携帯端末を取り出して、金色のボタンを押下した。
すると、ものの五秒で頭巾を被った、恐らく男だろうと思われる人間が二人立て続けに教室内に乱入してきた。緑色の頭巾と紫色の頭巾だ。どちらも、フタバラ子爵家の家紋が描かれた風呂敷包みを脇に抱えており、そのうち緑頭巾が廊下側の先頭席前に立ち、もう一方の紫頭巾は最奥の先頭席前まで走った。
「大変驚かせてしまいごめん遊ばせ。でも安心なさって。緑色はマッチャで、紫色はアズキですわ。二人はアタイの下僕よ。さあ、マッチャとアズキ、例の物を迅速にお配りなさい!」
二人に対してニクコの号令が下された。
頭巾たちは風呂敷包みを解いて、中に幾つか入っていた、ヤポン紙と呼ばれている上質の紙で包まれた塊を、手分けして一つずつ順番に机上に置いて回る。
「ニクコ姫もなかなか悪よのう。良く気が利くのじゃ。フッそそ」
少なくともポンズヒコは、紙包みの中身がなにかを知っている。
中身を知らないジッゲンバーグも、年の功で薄々は感じながら、目の前に置かれた包みを慎重に開いて確認した。彼の予想通り、大判十枚を積み重ねた束――七十年の生涯にして初めて目にする眩しい黄金の輝きだった。
ジッゲンバーグは、一つ後ろの席に座っている主人であるピクルスに相談すべきだと思った。
「これは賄賂のおつもりなのでしょうけれど、どのように対応致しましょうか」
「これこそ、ニクコさんの武器ですわね。相手が本気で武器を放ったのですから、わたくしたちも真剣に受け止めましょう♪」
「承知致しましてございます」
ピクルスの一つ後ろの席に控えるザラメも一言発した。
「自分も受け取って良いものでしょうか?」
「ザラメ軍曹、それで『ワンちゃんにボーン』のカルボナーラ味でもなんでも、好きな食べ物を購入なさい」
「ラジャー!」
ザラメは尻尾を激しく振る。口元からは涎が垂れそうになっている。
――ガッツィーンηη!!
人間であれ、犬であれ、ハムスターであれ、全ての耳という耳をつんざく高い衝突音が響き渡り、そして教室の窓硝子を震わせた。
なんと、気絶して倒れているはずのヨツバの身体が、まるで降って湧いたかのようにポンズヒコとピクルスの間に現れたのだ。しかも、ヨツバの右拳が、オチタスピの銀色に輝く刃をしっかりと受け止めているではないか。まさに目にも留まらない速さである。
「へへへ、ポンズヒコさんよ」
「なんぞ?」
「刀の刃というのは、女に向けて振り下ろす物じゃあ、ないんだぜ」
「ならば、なにへ向けて、振り下ろすのじゃ」
「ふふふ……そいつは、自分の頭で考えてみな」
「フッ、そそ。そうじゃのう。フッそそ」
小さく呟いた後、いつもの独特な笑い声を発したポンズヒコは、座ったままで微動だにしないピクルスの背中側へと回り込み、鞘にオチタスピを納めた。
ヨツバはピクルスの正面に立ち、右手を差し出す。オチタスピの刃を真っ正面から受けたにもかかわらず無傷だ。
ピクルスがヨツバに笑顔を見せる。
「あなたの拳、武器ですわね♪」
「へへへ、ピクルスさんよ」
「なにかしら?」
「お前、分かってるじゃないか」
「シュアー!」
ピクルスは、目の前にある頑丈な手の平を握った。二人の満面の笑みは眩しく清々しい。
ピクルスは空いている方の手を胸に当てて、一瞬間だけ目を伏せた。
この時、ヨツバが咄嗟に叫び声を上げる。
「なあピクルス、俺様の嫁になれ!」
「ラジャー!!」
この瞬間に、ピクルスのヨツバに対する接近度数が120に達した。
文句なしに婚姻の条件を突破した。たったの一日、それもわずか一時間足らずでピクルスはヨツバを攻略できたのだ。これは、大福学院始まって以来の快挙といえよう。
教室内に一頻り拍手が湧き起こった。
だが、教壇に立つピザエルが苦虫を噛み潰した様な顔を見せる。
「くそガキども、静粛にしたらんかーっ!」
この一喝で、教室内は蜂の巣が駆除された後のように静まった。
澄まし顔のピザエルが言葉を繋ぐ。
「ピクルスはん」
「なにか?」
「あんさん、ここを今すぐ卒院してヨツバはんと挙式するんか。それとも婚姻を留保したまま学業を続けんのか。どっちゃにするんや、さあ選んでんか」
特定の攻略対象者との婚姻が可能になった時点で、恋愛疑似体験遊戯を終えてしまうのか、それとも続けるか、どちらかを選ぶ必要がある。
「わたくしは、ここでの学業を続けますわ♪」
ピクルスは迷わず遊戯継続を決めた。命がある限り使命を果たさなければならないのである。
だが、ピクルスが次の攻略対象者との個別経路に入るには、その者に対する接近度数が25に達しなければならない。これは攻略を重ねる毎に、経路突入に必要な度数が5ずつ上がる制度規則によるものだ。
「ほんならピクルスはん、はよお席に座りなはれ」
「ラジャー!」
ピクルスが自席に戻ったので、自己紹介が再開となる。ニクコの番である。
「ヤポン神国一の大判持ちフタバラ子爵家の長女ニクコです。お金に困っている方はアタイのお家から援助をして上げてもいいのよ。その代わり、アタイのことを、美人で優しくて思いやりのある女の子だって、大福学院中に広めて頂戴よ」
ここまで話し終えたニクコはポケットから携帯端末を取り出して、金色のボタンを押下した。
すると、ものの五秒で頭巾を被った、恐らく男だろうと思われる人間が二人立て続けに教室内に乱入してきた。緑色の頭巾と紫色の頭巾だ。どちらも、フタバラ子爵家の家紋が描かれた風呂敷包みを脇に抱えており、そのうち緑頭巾が廊下側の先頭席前に立ち、もう一方の紫頭巾は最奥の先頭席前まで走った。
「大変驚かせてしまいごめん遊ばせ。でも安心なさって。緑色はマッチャで、紫色はアズキですわ。二人はアタイの下僕よ。さあ、マッチャとアズキ、例の物を迅速にお配りなさい!」
二人に対してニクコの号令が下された。
頭巾たちは風呂敷包みを解いて、中に幾つか入っていた、ヤポン紙と呼ばれている上質の紙で包まれた塊を、手分けして一つずつ順番に机上に置いて回る。
「ニクコ姫もなかなか悪よのう。良く気が利くのじゃ。フッそそ」
少なくともポンズヒコは、紙包みの中身がなにかを知っている。
中身を知らないジッゲンバーグも、年の功で薄々は感じながら、目の前に置かれた包みを慎重に開いて確認した。彼の予想通り、大判十枚を積み重ねた束――七十年の生涯にして初めて目にする眩しい黄金の輝きだった。
ジッゲンバーグは、一つ後ろの席に座っている主人であるピクルスに相談すべきだと思った。
「これは賄賂のおつもりなのでしょうけれど、どのように対応致しましょうか」
「これこそ、ニクコさんの武器ですわね。相手が本気で武器を放ったのですから、わたくしたちも真剣に受け止めましょう♪」
「承知致しましてございます」
ピクルスの一つ後ろの席に控えるザラメも一言発した。
「自分も受け取って良いものでしょうか?」
「ザラメ軍曹、それで『ワンちゃんにボーン』のカルボナーラ味でもなんでも、好きな食べ物を購入なさい」
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