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第1章. 絵露井家の騒動
007. 夜更けの家族会議
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居間で4人はリクライニングチェアに腰かけた。
この絵露井家はかなり裕福なので、滅茶苦茶に高価で新しい家具が多くある。居間にあるリクライニングチェアにしても、家族が2人増えると云うことで、先日4人分の最新製品を買いそろえたのだった。
以前からあった物は、惜しむことなく粗大ごみとして捨てられた。それをリサイクルショップにでも持って行けば、数万円にはなっただろうが、この絵露井家の金銭感覚にしてみれば、その程度は端金にすぎないと云うことなのだ。
助夫が口火を切った。
「吾郎、もう1度聞いておくが、お前がタマを3個ぶら下げておると云うのは本当なんだな?」
「ああそうだ。おい栗花、姉さん。証言してくれ」
「ふん。本当のことよ。アタシがその証拠を握ったんだから」
文字通り、3個目のタマを握ったのであるから、栗花は自信を持ってそう云った。
だがしかし、助夫はまだ信じていないようだ。
「冗談ではないのだろうな?」
「嘘だと思うなら、パパも握って見たらどう?」
「いや遠慮しておく。ワシにはそんな趣味はない。しかしお前も大人の女になったのだなあ、男のタマを転がして遊ぶような。ははは」
「違うって! アタシにもそんな趣味はないもの。護身のために握っただけよ」
これを聞いて、助夫が表情を変えた。
「護身? どう云うことだ?」
「なんでもないわ。話がややこしくなるんだからね。それよりもパパは、アタシの言葉を信じられないの?」
「いや信じる。ここはそう云うことにするとして、吾郎の話を聞こう」
助夫が視線を吾郎に移す。
「さあ吾郎、お前がタマを3個も持っておる理由を話せ」
「それは……」
吾郎は話すのをためらった。先程は自分から話すと云ったのだが、いざ話すとなると、どう話せばよいのか判断に苦しんでいるのだった。
そんな息子の姿を見て、満子が代わりに云う。
「祟りよ」
「はあ?」
「妖怪の祟りなのよ」
「妖怪? ははは、バカな! 満子までワシをからかおうと云うのか! こんな夜更けに、そんな冗談はよせ。バカバカしい」
母親の言葉を冗談と云って笑い飛ばす助夫の顔を見て、吾郎は胸に灯が灯った。
「オレの母さんを笑うな!」
「どうした吾郎。そんなに睨んで?」
「オレの母さんの言葉を笑うなと云ったんだ!! 母さんは冗談なんて云ってない。本当のことなんだ、オレは妖怪の祟りに遭ってタマが1個増えたんだ!」
「ははは、母と息子で、そんなお伽話のようなことを信じておるのか!? こんな夜更けにお前らは怪談噺の集いでもやっておるつもりか。とんだ時間の浪費だ。ワシはもう寝る」
助夫はリクライニングチェアから立ち、他の3人に背を向けた。
「パパ待ってよ」
「なんだ?」
「逃げるんでしょ。弱虫ね、ふっ」
「なんだとぉ!?」
助夫が振り向いて、栗花を睨む。
「怖い話が苦手なパパのことだから、怖くてチビりそうになってるんでしょ?」
「バ、バカを云うな!!」
「それなら怖くないと云えるの?」
「当然だ! 大の男が、それもこんなに大金持ちで長者番付にも載るようなワシが、怪談の1つや2つ、そしてタマの3つくらいで、怖れることなどあるものか!」
「だったら座って続きを聞いたら?」
「ふん。仕方ないから、もう少し付き合ってやろう。ワシは寛大な男だ」
助夫はリクライニングチェアに戻った。愛娘から1本取られたような形になった彼は、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
この絵露井家はかなり裕福なので、滅茶苦茶に高価で新しい家具が多くある。居間にあるリクライニングチェアにしても、家族が2人増えると云うことで、先日4人分の最新製品を買いそろえたのだった。
以前からあった物は、惜しむことなく粗大ごみとして捨てられた。それをリサイクルショップにでも持って行けば、数万円にはなっただろうが、この絵露井家の金銭感覚にしてみれば、その程度は端金にすぎないと云うことなのだ。
助夫が口火を切った。
「吾郎、もう1度聞いておくが、お前がタマを3個ぶら下げておると云うのは本当なんだな?」
「ああそうだ。おい栗花、姉さん。証言してくれ」
「ふん。本当のことよ。アタシがその証拠を握ったんだから」
文字通り、3個目のタマを握ったのであるから、栗花は自信を持ってそう云った。
だがしかし、助夫はまだ信じていないようだ。
「冗談ではないのだろうな?」
「嘘だと思うなら、パパも握って見たらどう?」
「いや遠慮しておく。ワシにはそんな趣味はない。しかしお前も大人の女になったのだなあ、男のタマを転がして遊ぶような。ははは」
「違うって! アタシにもそんな趣味はないもの。護身のために握っただけよ」
これを聞いて、助夫が表情を変えた。
「護身? どう云うことだ?」
「なんでもないわ。話がややこしくなるんだからね。それよりもパパは、アタシの言葉を信じられないの?」
「いや信じる。ここはそう云うことにするとして、吾郎の話を聞こう」
助夫が視線を吾郎に移す。
「さあ吾郎、お前がタマを3個も持っておる理由を話せ」
「それは……」
吾郎は話すのをためらった。先程は自分から話すと云ったのだが、いざ話すとなると、どう話せばよいのか判断に苦しんでいるのだった。
そんな息子の姿を見て、満子が代わりに云う。
「祟りよ」
「はあ?」
「妖怪の祟りなのよ」
「妖怪? ははは、バカな! 満子までワシをからかおうと云うのか! こんな夜更けに、そんな冗談はよせ。バカバカしい」
母親の言葉を冗談と云って笑い飛ばす助夫の顔を見て、吾郎は胸に灯が灯った。
「オレの母さんを笑うな!」
「どうした吾郎。そんなに睨んで?」
「オレの母さんの言葉を笑うなと云ったんだ!! 母さんは冗談なんて云ってない。本当のことなんだ、オレは妖怪の祟りに遭ってタマが1個増えたんだ!」
「ははは、母と息子で、そんなお伽話のようなことを信じておるのか!? こんな夜更けにお前らは怪談噺の集いでもやっておるつもりか。とんだ時間の浪費だ。ワシはもう寝る」
助夫はリクライニングチェアから立ち、他の3人に背を向けた。
「パパ待ってよ」
「なんだ?」
「逃げるんでしょ。弱虫ね、ふっ」
「なんだとぉ!?」
助夫が振り向いて、栗花を睨む。
「怖い話が苦手なパパのことだから、怖くてチビりそうになってるんでしょ?」
「バ、バカを云うな!!」
「それなら怖くないと云えるの?」
「当然だ! 大の男が、それもこんなに大金持ちで長者番付にも載るようなワシが、怪談の1つや2つ、そしてタマの3つくらいで、怖れることなどあるものか!」
「だったら座って続きを聞いたら?」
「ふん。仕方ないから、もう少し付き合ってやろう。ワシは寛大な男だ」
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