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七章「ナラオの日常」
30. 葦多楢尾の話
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今日は十五回も魔法使っちゃったな。いい子だね、ぼくは。
悪いやつらをこらしめてやったんだから。
あのねえ魔法にはね、可逆形式と不可逆形式があるんだよ。可逆形式には取消魔法が使えるけど、不可逆形式は、自分よりずっと高い魔法能力をもつ魔法少女でないと元にもどせないんだよ。
あ、それより勉強しないとね。来年は受験だし。どうしても私立・秀香学園の中等部に入らないといけないから。そうなるとなかよしの竹子ちゃんと松男君とは、別の学校になってしまうけど。でもぼくには大切な使命があるんだから、きっと合格して秀香にいくんだ。
もちろん試験のときに魔法を使ったずるはできないよ。ものすごく高い魔法能力をもつ試験かんとくの魔法少女がいるしね。すぐにバレちゃうよ。
ずるのために魔法を使って見つかったら、ただちに魔法狩局にひき渡される。そうなると冥王星おくりになって二度とは生きて地球にかえれないらしいよ。
あそうそう、よく絵本とかにおばあさんの魔女がでてくるけどね、あんなのうそだよ。魔法を使えるのは二十歳くらいまでなんだから。でも二十歳の女の人は少女じゃないけどね。もうおばさんだよ。
「ねえナラオちゃん、なにしてるの?」
「あっ、キノコおねいちゃん。あのねえ、ぼく勉強しようと思ってたとこなんだ」
「そう。ナラオちゃんはえらいのね」
「えへへへ」
キノコおねいちゃんは二十二歳だからすっかりおばさんだよね。ほんとにぼくの叔母だからそう呼んだっていいはずだけど、でも人間かんけい的にまずいしね。だからそんな呼び方しないよ。おこるとすっごくこわいんだもん。
「ただいま、ナラオちゃん」
「お父さん。おかえりぃー」
「おかえりなさい。アツオお兄さん」
「今日はナラオちゃんにお土産があるんだよ。ちょっときてごらん」
「えっ、なになに?」
ぼくらはダイニングにいった。バスケットが置いてあった。
お父さんが会社の人からシマリスをもらってきたんだよ。でもね、それはシマだったんだ。しかも言葉をしゃべったんだよ。おどろいたよぼく。
シマはねえ、ぼくの使い魔になってくれたんだよ。
◇ ◇ ◇
あれからもう三年がたったんだね。世のなかのうつり変わりもはげしいね。とくに科学技術の進歩はすごいよね。
たとえば最近はねえ、はきものにGPS機能がついてて、どこ歩いてるかわかるそうだよ。すごいね、はいてくじゃん。
でもねえ、この前どこかの白い犬がおとなりの玄関にやってきて、お春おばあさんの靴を片方くわえていっちゃったんだよ。それがGPS機能がついてる方だったから大さわぎになってね。
――またおばあちゃんが徘徊してるぞ
――うんそうだよ、すぐに追いかけないと
――おや、松ちゃんと竹ちゃんどないしたん?
――あれれなんでなんで!
――おばあちゃんどうして家にいるの?
――わたいが家にいたらあかんのかい?
――ううん、そうじゃないけどお
――どうして? GPSおかしいよ
――おかしおすなあ、あんたらも
なんてことがあったんだよ。GPS機能は左右両方につけとくべきだね。
でも犬といえば、昔おとなりにいた七味なんて、たばこ吸ってたんだよ。
「そんなやつがいたのかもぉ。生意気な犬ぢぁ」
「あっシマいつのまに」
「拙僧は御主人様の使い魔だからいつでも側にこれるもぉ」
「それもそだね。でさあシマ、テレビとかで犬がしゃべってたら超うざいよね」
「そうなもぉ。お前がしゃべるなって感じぢぁ」
「うんうん」
もう嫌煙権と嫌犬権を主張したいね。はっきりいってぼく、けむりも犬もきらいなんだよ。
とくに犬はねえ、ぼくだけじゃなくて、たいていの魔法少女はきらいだよ。あいつらってば、ぼくらのお尻をくんくんくんくん嗅いできて、くぅぅーん、はあはあはあはあとかいうしね。いやらしいよ。
「拙僧も犬は嫌いなもぉ。あいつら畜生ぢぁ」
「そだね」
ぼく寅年だからねえ、戌年とは相性いいはずなんだよ。でも嫌いなのよ。あでも、犬がみんな戌年とはかぎらないか。ゆうか、十二支に戌はあるけど、犬に十二支なんてあるのかなあ? あるとすると戌年に生まれた犬だけが戌犬ってことだね。
それでシマはたぶん卯年だったから、卯ネコが生まれ変わって、今は鼠リス?
「御主人様の言う通りなもぉ。拙僧は鼠栗鼠なのぢぁ」
「やっぱりそうなんだ。ねずみさんだね」
「そうなもぉ」
けど犬好きの人って多いよね。それはそれでいいけど。世のなかにはそうじゃない人もいるってことだよ、ぼくがいいたいのは。なにも犬がいなくなればいいとまではいわないよ。人の役にたって、くんくんはあはあしないまじめな犬もいっぱいいるしね。
だから抵抗できない犬にやつあたりするのはだめだと思うよ。そんなのは嫌犬家の恥さらしだ。もっとせいせいどうどうと嫌犬権を主張しようよ。
愛犬権もちゃんとあるんだからね。それをみとめた上での嫌犬権だし、嫌犬権をみとめた上での愛犬権だよ。権利とかってそういうものでしょ。
ねえねえそうでしょ? ぼあそなーど先生。てもう死んじゃってるか。
◇ ◇ ◇
今日は、おとなりの落花傘家に遊びにきてる。松男君と竹子ちゃんとぼくと三人でおしゃべり中。松男君はぼくの従弟なんだよ。
悪いやつらをこらしめてやったんだから。
あのねえ魔法にはね、可逆形式と不可逆形式があるんだよ。可逆形式には取消魔法が使えるけど、不可逆形式は、自分よりずっと高い魔法能力をもつ魔法少女でないと元にもどせないんだよ。
あ、それより勉強しないとね。来年は受験だし。どうしても私立・秀香学園の中等部に入らないといけないから。そうなるとなかよしの竹子ちゃんと松男君とは、別の学校になってしまうけど。でもぼくには大切な使命があるんだから、きっと合格して秀香にいくんだ。
もちろん試験のときに魔法を使ったずるはできないよ。ものすごく高い魔法能力をもつ試験かんとくの魔法少女がいるしね。すぐにバレちゃうよ。
ずるのために魔法を使って見つかったら、ただちに魔法狩局にひき渡される。そうなると冥王星おくりになって二度とは生きて地球にかえれないらしいよ。
あそうそう、よく絵本とかにおばあさんの魔女がでてくるけどね、あんなのうそだよ。魔法を使えるのは二十歳くらいまでなんだから。でも二十歳の女の人は少女じゃないけどね。もうおばさんだよ。
「ねえナラオちゃん、なにしてるの?」
「あっ、キノコおねいちゃん。あのねえ、ぼく勉強しようと思ってたとこなんだ」
「そう。ナラオちゃんはえらいのね」
「えへへへ」
キノコおねいちゃんは二十二歳だからすっかりおばさんだよね。ほんとにぼくの叔母だからそう呼んだっていいはずだけど、でも人間かんけい的にまずいしね。だからそんな呼び方しないよ。おこるとすっごくこわいんだもん。
「ただいま、ナラオちゃん」
「お父さん。おかえりぃー」
「おかえりなさい。アツオお兄さん」
「今日はナラオちゃんにお土産があるんだよ。ちょっときてごらん」
「えっ、なになに?」
ぼくらはダイニングにいった。バスケットが置いてあった。
お父さんが会社の人からシマリスをもらってきたんだよ。でもね、それはシマだったんだ。しかも言葉をしゃべったんだよ。おどろいたよぼく。
シマはねえ、ぼくの使い魔になってくれたんだよ。
◇ ◇ ◇
あれからもう三年がたったんだね。世のなかのうつり変わりもはげしいね。とくに科学技術の進歩はすごいよね。
たとえば最近はねえ、はきものにGPS機能がついてて、どこ歩いてるかわかるそうだよ。すごいね、はいてくじゃん。
でもねえ、この前どこかの白い犬がおとなりの玄関にやってきて、お春おばあさんの靴を片方くわえていっちゃったんだよ。それがGPS機能がついてる方だったから大さわぎになってね。
――またおばあちゃんが徘徊してるぞ
――うんそうだよ、すぐに追いかけないと
――おや、松ちゃんと竹ちゃんどないしたん?
――あれれなんでなんで!
――おばあちゃんどうして家にいるの?
――わたいが家にいたらあかんのかい?
――ううん、そうじゃないけどお
――どうして? GPSおかしいよ
――おかしおすなあ、あんたらも
なんてことがあったんだよ。GPS機能は左右両方につけとくべきだね。
でも犬といえば、昔おとなりにいた七味なんて、たばこ吸ってたんだよ。
「そんなやつがいたのかもぉ。生意気な犬ぢぁ」
「あっシマいつのまに」
「拙僧は御主人様の使い魔だからいつでも側にこれるもぉ」
「それもそだね。でさあシマ、テレビとかで犬がしゃべってたら超うざいよね」
「そうなもぉ。お前がしゃべるなって感じぢぁ」
「うんうん」
もう嫌煙権と嫌犬権を主張したいね。はっきりいってぼく、けむりも犬もきらいなんだよ。
とくに犬はねえ、ぼくだけじゃなくて、たいていの魔法少女はきらいだよ。あいつらってば、ぼくらのお尻をくんくんくんくん嗅いできて、くぅぅーん、はあはあはあはあとかいうしね。いやらしいよ。
「拙僧も犬は嫌いなもぉ。あいつら畜生ぢぁ」
「そだね」
ぼく寅年だからねえ、戌年とは相性いいはずなんだよ。でも嫌いなのよ。あでも、犬がみんな戌年とはかぎらないか。ゆうか、十二支に戌はあるけど、犬に十二支なんてあるのかなあ? あるとすると戌年に生まれた犬だけが戌犬ってことだね。
それでシマはたぶん卯年だったから、卯ネコが生まれ変わって、今は鼠リス?
「御主人様の言う通りなもぉ。拙僧は鼠栗鼠なのぢぁ」
「やっぱりそうなんだ。ねずみさんだね」
「そうなもぉ」
けど犬好きの人って多いよね。それはそれでいいけど。世のなかにはそうじゃない人もいるってことだよ、ぼくがいいたいのは。なにも犬がいなくなればいいとまではいわないよ。人の役にたって、くんくんはあはあしないまじめな犬もいっぱいいるしね。
だから抵抗できない犬にやつあたりするのはだめだと思うよ。そんなのは嫌犬家の恥さらしだ。もっとせいせいどうどうと嫌犬権を主張しようよ。
愛犬権もちゃんとあるんだからね。それをみとめた上での嫌犬権だし、嫌犬権をみとめた上での愛犬権だよ。権利とかってそういうものでしょ。
ねえねえそうでしょ? ぼあそなーど先生。てもう死んじゃってるか。
◇ ◇ ◇
今日は、おとなりの落花傘家に遊びにきてる。松男君と竹子ちゃんとぼくと三人でおしゃべり中。松男君はぼくの従弟なんだよ。
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