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2起「追悼・落花傘先生」
52. 惚香さん(後編)
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PTAって、保護者と先生たちが集まって何か会合とかをするあれのことかしら?
それの何を調査するんだろう?
「PTA会長の挨拶が長い原因を探ったりするつもりなのか?」
レンゲが真っ先に質問した。
確かにPTA会長の挨拶って結構長いよね。
「違いますわ。Prevent Traffic Accidentsの頭文字を取ってPTAですのよ。おわかりになって?」
えーと、preventは防ぐとか防止するって意味よね?
あと、traffic accidentsは交通事故のことだから。
「……あの、もしかして、それって『交通事故防止調査団』ってことなの?」
「まあ、そうとも言いますわね」
「ふうん」
「なら最初からそう言えっつーの!! 四次元学園出身だからって、あんまいい気になってんなよっ!」
レンゲは英語が苦手だから、惚香さんの言い方が気に入らなかったようだ。ちょっとなだめてあげないとね。
「まあまあレンゲ。そんなに怒らないで」
「ああ、うん……でもなあカラコ、こいつのしゃべり方ってさあ、なんか超ムカつかなくない?」
確かに惚香さんは、お嬢様っぽい話し方をしている。
この学園ではあまりいないタイプね。
「ところで、そのPTA調査団ってなにするの?」
おっ、珍しくモミジの方から発言したわ。
もしかして交通事故防止とかに興味があるのかしら。
「放課後に街へ出て、危険運転や信号無視をしている車をビデオ撮影しますのよ」
「えっ?」
「ふんふん」
「なんだそれ!?」
「撮影した映像はすべて警察に送付しますわ」
なるほど。つまりチクるってことね。
まあもしそれで交通事故が防止できるならいいことかもしれないけど……。
「てゆーか、それよかインターネットってのにのせる方が、おもしろくない? ナンバープレートとか運転手の顔とか、もろ写りしてるやつ。それが世界中の人に見られんの、こいつが違反者ですってね。あははは」
最近、パソコンとかインターネットとかってのが流行ってるみたいだけど……私はよくは知らないんだけど情報発信とかってね。
でも、そんなことしたらまずくないかしら? プライバシーの問題とか……。
「それもそれなりに話題を呼ぶことにはなりますわね。けれど、こちらが不利になりますわ。それにわたくしたちが警察に送る映像も、それがどのように活用されるかなんて、全くどうでもよくってよ」
「えっ?」
「ふんふん」
「なんだそれ!?」
それじゃなんのために警察に送るのかしら? 警察にもっとしっかり取り締まってもらいたいっていうメッセージのつもりなのかなあ。
「しっかりお聞きになって。PTA調査というのは表向きのことですの。そういう名目なら放課後に街へ出て活動してもおかしくはありませんしね。新しい部活動の申請に対しても、街の安全向上に一役買うとして、おそらく反対されることはなくってよ」
「はあ」
「ふんふん」
「まあそうかも。で、表向きじゃないホントの目的の方はなんだ?」
あ、そうそう。それ気になるよね。
「それについでですが、みなさん、もすこし近くにいらして」
私たち三人は、惚香さんの顔のすぐ近くまで頭を寄せ合った。
「ごにょごにょごにょごにょ……」
「えっ!」
「うっそ!!」
「まじっすか!?」
「しーっ! お声が大きいですわよ」
こうして私たち一年一組の四人で、PTA調査団を創部した。
団長はもちろんいいだしっぺの惚香さん。で、なんでか私が副団長……。
形だけ顧問になってくれた先生からは、「交通事故防止とはなかなか感心だな。でも、活動時にはくれぐれも車に気を付けるように。あと、ヤバそうな人が乗ってる車は撮らない方がいいぞ」なんて言われた。
えへへへ、先生ホントの目的知ったら驚くだろーな。
しばらく経って、一年二組の双子の姉弟・留真三三さんと天元君も入団してくれた。六人になったPTA調査団は、基本、月曜から金曜まで毎日放課後に街へ出て熱心に活動をしていた。ときどきは休日にも。
私たちはそれを充実した日々だと感じていた。
それから三年後に私たちがPTA調査団を解散する頃には、私たちの街での交通事故が激減していた。
一方、表向きじゃないホントの目的の方はというと、残念ながら失敗に終わってしまったの。もー私たちの高校三年間を返してよー。
えっ、ホントの目的はなんだったかって?
そんなの書けないわよぉ、こんなところには。うふふふ。
でもあの頃楽しかったなあ。もう一八年になるのね……。
【惚香さん ~完~】
それの何を調査するんだろう?
「PTA会長の挨拶が長い原因を探ったりするつもりなのか?」
レンゲが真っ先に質問した。
確かにPTA会長の挨拶って結構長いよね。
「違いますわ。Prevent Traffic Accidentsの頭文字を取ってPTAですのよ。おわかりになって?」
えーと、preventは防ぐとか防止するって意味よね?
あと、traffic accidentsは交通事故のことだから。
「……あの、もしかして、それって『交通事故防止調査団』ってことなの?」
「まあ、そうとも言いますわね」
「ふうん」
「なら最初からそう言えっつーの!! 四次元学園出身だからって、あんまいい気になってんなよっ!」
レンゲは英語が苦手だから、惚香さんの言い方が気に入らなかったようだ。ちょっとなだめてあげないとね。
「まあまあレンゲ。そんなに怒らないで」
「ああ、うん……でもなあカラコ、こいつのしゃべり方ってさあ、なんか超ムカつかなくない?」
確かに惚香さんは、お嬢様っぽい話し方をしている。
この学園ではあまりいないタイプね。
「ところで、そのPTA調査団ってなにするの?」
おっ、珍しくモミジの方から発言したわ。
もしかして交通事故防止とかに興味があるのかしら。
「放課後に街へ出て、危険運転や信号無視をしている車をビデオ撮影しますのよ」
「えっ?」
「ふんふん」
「なんだそれ!?」
「撮影した映像はすべて警察に送付しますわ」
なるほど。つまりチクるってことね。
まあもしそれで交通事故が防止できるならいいことかもしれないけど……。
「てゆーか、それよかインターネットってのにのせる方が、おもしろくない? ナンバープレートとか運転手の顔とか、もろ写りしてるやつ。それが世界中の人に見られんの、こいつが違反者ですってね。あははは」
最近、パソコンとかインターネットとかってのが流行ってるみたいだけど……私はよくは知らないんだけど情報発信とかってね。
でも、そんなことしたらまずくないかしら? プライバシーの問題とか……。
「それもそれなりに話題を呼ぶことにはなりますわね。けれど、こちらが不利になりますわ。それにわたくしたちが警察に送る映像も、それがどのように活用されるかなんて、全くどうでもよくってよ」
「えっ?」
「ふんふん」
「なんだそれ!?」
それじゃなんのために警察に送るのかしら? 警察にもっとしっかり取り締まってもらいたいっていうメッセージのつもりなのかなあ。
「しっかりお聞きになって。PTA調査というのは表向きのことですの。そういう名目なら放課後に街へ出て活動してもおかしくはありませんしね。新しい部活動の申請に対しても、街の安全向上に一役買うとして、おそらく反対されることはなくってよ」
「はあ」
「ふんふん」
「まあそうかも。で、表向きじゃないホントの目的の方はなんだ?」
あ、そうそう。それ気になるよね。
「それについでですが、みなさん、もすこし近くにいらして」
私たち三人は、惚香さんの顔のすぐ近くまで頭を寄せ合った。
「ごにょごにょごにょごにょ……」
「えっ!」
「うっそ!!」
「まじっすか!?」
「しーっ! お声が大きいですわよ」
こうして私たち一年一組の四人で、PTA調査団を創部した。
団長はもちろんいいだしっぺの惚香さん。で、なんでか私が副団長……。
形だけ顧問になってくれた先生からは、「交通事故防止とはなかなか感心だな。でも、活動時にはくれぐれも車に気を付けるように。あと、ヤバそうな人が乗ってる車は撮らない方がいいぞ」なんて言われた。
えへへへ、先生ホントの目的知ったら驚くだろーな。
しばらく経って、一年二組の双子の姉弟・留真三三さんと天元君も入団してくれた。六人になったPTA調査団は、基本、月曜から金曜まで毎日放課後に街へ出て熱心に活動をしていた。ときどきは休日にも。
私たちはそれを充実した日々だと感じていた。
それから三年後に私たちがPTA調査団を解散する頃には、私たちの街での交通事故が激減していた。
一方、表向きじゃないホントの目的の方はというと、残念ながら失敗に終わってしまったの。もー私たちの高校三年間を返してよー。
えっ、ホントの目的はなんだったかって?
そんなの書けないわよぉ、こんなところには。うふふふ。
でもあの頃楽しかったなあ。もう一八年になるのね……。
【惚香さん ~完~】
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