キミの瞳にロウソクを!

キュバン

文字の大きさ
1 / 7

1.黄泉還リ

しおりを挟む
2050年、7月7日。

 俺は野郎共と県内の七夕祭りに来ていた。
「しっかし、こりゃずーいぶんと人が多いなぁ。な?三神。」
「暑すぎる…死にそう…炭酸飲料よこせ…」
「やーなこった!」
そう、三神。三神剣。俺は三神剣だ。この俺が、この後、この名前のせいで面倒な事に巻き込まれるなど、予想もしていなかった。
「たこ焼き食いてー。三神、買ってくれ。」
などとふざけたことを抜かしているのは小中大。コナカヒロシと読むらしい。
「断る。」
「そこをなんとか!」
だが断固として拒否をする。
「別にええやろ?な?」
「関西弁にしてもダメだ。」
まるで関西人も呆れそうなほど下手な関西弁だ。呆れて物も言えない。
 ここで後ろを向いて歩いていたのがまずかった。数歩進んだところで、大が叫んだ。
「おい!剣!後ろ!」
俺はすかさず振り向いた。しかしもう遅かった。きっと君たちも気づいているだろう。そう、俺はー。
 人間の文明が気付いた、鋼鉄の塊。トラックにぶつかってしまったのだ。

ーーーーー

俺はベッドの上で目を覚ました。
だが、何処だかはわからない。見た所、普通の病院ー。ではなかった。壁は灰色、所々黒い跡があり、空気は淀んでいる。というか臭い。まるで死臭ー。
「死臭!?」
つい自分でツッコんでしまった。いや、しかし、俺は死臭と言うものを知らない。そもそも俺は何をしていた?大中小(逆)と狭山の七夕祭りにいたはず。いや、俺は轢かれたんだ。トラックに。いや、そもそも何故大きなトラックが会場にいたんだ?あそこは会場のど真ん中だぞ?
「ようやく目が覚めましたねぇー。」
突如聞こえてきた声。その声の主を探す。よく見たらこの部屋に扉が無い。どうなっているんだ?
「私はここですよぉー。」
探す、探す、探す。
「ここだっていってるじゃないですかぁー!!!」
そう言ってベッドの下から飛び出して来たのは、青い髪をした、雪女を彷彿させる様な見た目の女性。というか背が大きい。これでも170cmくらいあるつもりなのだが、眼前に立つ女は、恐らく俺より50cmは大きい。
「はぁぁぁぁあ!!!???」
ちょっとまて、こんなのデタラメだ!いや、聞いたことがある、日本には「八尺様」と呼ばれる化け物がいると。その類か?そう思い顔を見ると。
「…ん?」
何処か違和感を感じる。ぎこちない、と言うより、人工的なー。
「気づきましたねぇー。」
そういいちょこんと顔を出したのは、140cmくらいの幼女だった。
「幼女じゃない!…コホン。君がなんでここにいるのか、ここは何処なのか知りたくはないですかぁー?」
確かに気になる。だが、俺の頭の中は、この謎の臭いが占領していた。
「それ以前に、何、この匂い。すみません、消臭スプレーありませんか?」
「…そこぉー!?まあいいですぅー。この匂いは死臭なので消えませんよぉー。」
「やっぱり死臭かー!!!」
…予感が当たってしまった。まて、てことは俺にこの臭いが染み付いたら落ちないではないか。ちょっとまて、ここから出たい。
「そうはいきませんよぉー。」
そう言った幼女はー。
「だから幼女じゃない!名前でよべぇー!」
いや知らない。このガキの名前を知らない。
「私の名前は御玉瓊。ケイと呼ぶのですぅー。」
よし、少しこの子をからかってみよう。
「わかった、ケイたん「たんをつけるなぁー!」
「よしよし、かわい「撫でるなぁー!」
ごめんごめん、と内心謝りつつ、次の質問をぶつけた(いや、さっきのがこの状況でするべき質問とは言い難いが)。
「ここは何処なんだ?」
きっと、誰しもがそう思うだろう。するとケイが口を開いた。
「ここはあの世との境界線ですぅー。」
「…はぁ。」
敢えて素っ気なく返してみる。
「えっ、おどろかないんですかっ」
「なんというかそんな感じがしてた。」
勿論適当だ。
「…ていうか、額がキツいんだけど。なんか熱いし。」
「ああ、そういえば付けっぱなしでしたねぇ、ロウソク。」
「ちょ、おまっ、えっ、あぶな、えっ」
待て、いくらなんでも危険すぎではないか?
「まあまあ、向こうに送り返すために必要なのですよぉ~。」
「俺はどう寝てたの!?」
「普通に、ですぅー。」
「…」
ちょっと意味がわからない。
と、困惑してるところに、天井からすり抜けてきたのは。
「あら?もう目を覚ましたのね?これでようやく還れるわねぇ。」
俺には意味がわからない。いや、予想はつく。きっと、俺は生き返るために取り敢えずじっとしていればいいのだなと。こいつらは、きっと俺を蘇らせようとしてくれているのだな、と。
「あ、ごめん、私たちも死にかけてるのよ。」
ますますわからなくなってきた。こうして困惑していると、彼女たちは、紐のついた白い棒と髪で出来た帯を取り出した。そしてそれを徐ろに、額に巻き出したのである。
と、その瞬間、
「いっくのっですぅー。」
そしてケイは取り出した。ポケットから、某森の動物と暮らすゲームのように。
「あっはっはっはっはぁ!」
そう、そのシロモノは…、火炎放射器であった。
消えていく、燃えていく。コンクリートだど思っていたのに。熱い、燃える。これはヤバイ。
「あぁぁぁぁぁあ!」
叫び声を俺は上げた。
そして彼女たちはこういった。
『じゃあ、向こうで。』

ーーーーー

7月10日。

 そして俺は目を覚ました。
 今思えば、後から来た人は美人だったなぁ。名前を聞いておけばよかった。
「どうもなのですぅー。」
そう言って扉が開け放たれた。よく見たらここは病室だった。ちゃんとした、普通の。よく見たら、こいつも同じ服を着ている。患者か。
「存在してたのか。」
「そうなのですぅー。」
「ということは、大きい方もいらっしゃるのでは?」
「ここでは無いのですぅー。」
「ほぇ?」
変な声が出てしまった。
「もしかして好みでしたかぁー?」
「ギクッ」
おっと、しょうもない効果音を。
「でも来てるわよー。」
「えっ」
「どうもー♪」
そんな、まさか。
「でも貴方の希望には添えないわ。ごめんなさいねー」
いや、そんな事はどうでもいい。いや、よくない。だがそんなことより尋きたいことがある。
「さっきの世界はなんなんですか?」
「さっき?3日前の事ですかねぇー。」
「えっ」
「貴方、ずっと眠ってたのよ?」
なんだと。俺は3日間もの間昏睡状態にあったというのか。
「アッハイ、マジですか」
「話を戻すのですぅー。ていうか説明しましたよねぇー?」
ちょ、俺の命に関わる話だぞ。それをスルーするなど…まあいいか、生死の境界線、というやつか。
「そうなのですぅー。」
「俺は…一回死にかけたということですか。」
「…そうなのですぅー。(目を逸らす)」
顔を青ざめて目を逸らし出した。これがどういうことかはわかるだろう。
「…その目はなんだ」
「…いやぁー、あの事故は私が起こしたものでしてぇー。」
「まぁまぁ、責めないであげてくださいね(2828」
「なんで笑ってるんですか。」
不謹慎だ、俺は被害者だ。そうだよな?
「まあ、ちょっと、私たちが黄泉還リノ儀を行うのに貴方が必要でして…」
「なんで俺なんだ、他の人はダメなのか。」
「まあ、貴方を含めて3人の名前を考えればわかるものかとぉー。」
俺たちの名前?そう考えれ、思い返す。俺は三神剣。あのガキは…、御玉瓊。あのお姉さんは…そういえばさっき聞いておけばと後悔したばかりじゃ無いか。
「鏡乃光里よ。」
鏡乃光里…ちょっとわからないな。
「カタカナにするのですぅー。」
ミカミツルギ、ミタマケイ、カガミノヒカリ。
「だめだわからない。」
「なんでなのですかぁー!さすがにわかると思ったのですー!」
「三種の神器ですよ。」
三種の神器?八咫鏡、八尺瓊勾玉、草薙剣。ん?まてよ?ツルギ、タマ、カガミ。
「そういうことか!でも、剣は他にもいたのでは…」
そうだ、「剣」なんて、他の人にも使われている。なぜよりによって俺なんだ。
「出来る限り三種の神器に近づけたかったのですよ。貴方は名字が三神ですよね?『三』種の『神』器にも当てはまるからいいと思ったんです。ご迷惑をおかけしました~。」
なるほど、黄泉還リの儀式については面倒臭そうだからきかないでおく。
「でも、まだ働いて貰うのですぅー!」
「ふぁい?」
変な声がどうしてもでる。
「三種の神器だけじゃ足りないのですぅー。」
「何が足りないんだ?」
「『天』ですぅー。」
天?正直何を候補があがらない。天ぷらか何かか?
「違うのですぅー!高天原ですぅー!」
もう、いよいよついていけない。
「瓊瓊杵命(ニニギ)が三種の神器を授かった場所ですぅー。」
「てことは…天が名前に入った人を探せばいいのか?」
「違うのよ。高天原さんを、蘇らせるの。」
「はい?」
「蘇らせるの。」
死者蘇生か?ザオラルか?レイズか?何が言いたいのだろう。
「どうやってですかね…?」
「よくぞきいてくれたのですぅー!」
お前じゃ無い。
「迷信、都市伝説を調べるのですぅー!すると、蘇りPOINTが溜まるのですぅー!」
また随分とハイテクな死体だ。恐らく、謎の部屋の死臭もその死体なのだろう。ていうかポイントって…
「…蘇らせてなんになるんだ。」
「実は、彼女は『神』なの。だから、彼女を送り返してあげないと世界の調律が保たれずに、宇宙の全体が崩壊してしまうの。」
なら何故地上で死んだんだ…
「そこまではわからないのですぅー。」
「はあ…で、俺が必要ということか…」
もう、面倒臭い、どうにでもなれ。どうせ、強制なんだろうな。
「わかった。明日からでいいな。場所は?」
「埼玉県加須市にある、玉敷神社付近にある玉敷公園よ。」
またなんでそんなところに。
「あそこは、イザナギ・イザナミの舞で、有名なの。」
日本神話関係か。面倒くさい。近所だから有難いが。
「んじゃ、よろしくなのですぅー!」
「それではー。」
…そう言って扉を閉めて出て行った。



これから、とても大変な生活になりそうだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...