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それから、キャロライン様は、昼夜問わず気まぐれに私を呼び出した。
その時は、必ずニルセン様もメルデン様も、私の側にはいない。いつもいるはずの警備の騎士達もどこにも姿が見えなかった。
きっと、キャロライン様の協力者が、どこかにいるのだろう。
常に誰かに監視されているようで、私は気を緩めることが出来なかった。
「ヴェイル様...。」
ヴェイル様に打ち明けようかと思った。きっと、ヴェイル様なら助けてくれるから。
でも、その度に、キャロライン様に言われた言葉が、私の口を塞いだ。
ゴミの分際でヴェイル様に迷惑をかけるなと言われたまま負けたくなかったのだ。
「ごめんなさい、ヴェイル様。」
私の我儘が、ヴェイル様とキャロライン様の関係を邪魔してしまっている。ヴェイル様は、私の治療の協力をしてくれているだけなのに。
それでも、もう少しだけヴェイル様の側にいたいと、私はそう思ってしまった。
自分の体の状態が良くない事は、もう随分前から分かっていた。だから、いつ死が訪れてもいいように、覚悟して生きてきた。
そんな私に、ヴェイル様は未来の可能性をくれた。普通の女の子のように生きられる可能性を。
ヴェイル様がくれる魔力のおかげで、私の傷痕は、日に日に薄くなってきている。
それが、どれほど私の希望になっているか。
ヴェイル様の大きくて温かい手が好き。
落ち着いた声が好き。
微笑んだ時の優しい瞳が好き。
初めは、私を受け入れてくれたヴェイル様に依存していたんだと思う。でも、それがいつの間にか、恋に変わっていた。
これが恋だと気付いた時には、もう心がヴェイル様に落ちていた。
「ごめんなさい、ヴェイル様。もう少しだけ、あと少しだけ、お側にいさせて下さい。私、ちゃんとお別れする準備をしますから。だからどうか、もう少しだけ...。」
この治療が永遠に続けばいいのにと、私は卑怯なことを願わずにはいられなかった。
今日もキャロライン様に呼び出され、左頬を火の魔法で焼かれた。令嬢達から受ける折檻は、回数を重ねるごとに苛烈さを増している。
キャロライン様の回復魔法で、体の傷は消えても、私の精神はそろそろ限界に近かった。
それでも、ヴェイル様との限られた時間を自ら捨てることは出来なかった。
「ねえ、わたくし何度も言ったわよね?ヴェイル殿下と、食事も休憩も一緒に取っては駄目よって。ゴミは言葉まで理解出来なくなってしまったの?」
「ああ!」
踏まれた腕が、嫌な音を立てて折れ曲がる。私は、あまりの痛みに叫び声を上げた。
「もう、殺してしまおうかしら。脆弱な人間の国との同盟なんて、どうでもいい気がするのよ。そう思わない?ヴェイル殿下は、神に選ばれた異能者だもの!分かってくれるわよね!」
「そうですよ!」
「キャロライン様がお願いすれば、殿下も分かって下さいますよ!」
令嬢達の残酷な言葉が、私の落ちそうになる意識を繋ぎ止める。
私は、折れた腕で必死に体を起こした。
その時は、必ずニルセン様もメルデン様も、私の側にはいない。いつもいるはずの警備の騎士達もどこにも姿が見えなかった。
きっと、キャロライン様の協力者が、どこかにいるのだろう。
常に誰かに監視されているようで、私は気を緩めることが出来なかった。
「ヴェイル様...。」
ヴェイル様に打ち明けようかと思った。きっと、ヴェイル様なら助けてくれるから。
でも、その度に、キャロライン様に言われた言葉が、私の口を塞いだ。
ゴミの分際でヴェイル様に迷惑をかけるなと言われたまま負けたくなかったのだ。
「ごめんなさい、ヴェイル様。」
私の我儘が、ヴェイル様とキャロライン様の関係を邪魔してしまっている。ヴェイル様は、私の治療の協力をしてくれているだけなのに。
それでも、もう少しだけヴェイル様の側にいたいと、私はそう思ってしまった。
自分の体の状態が良くない事は、もう随分前から分かっていた。だから、いつ死が訪れてもいいように、覚悟して生きてきた。
そんな私に、ヴェイル様は未来の可能性をくれた。普通の女の子のように生きられる可能性を。
ヴェイル様がくれる魔力のおかげで、私の傷痕は、日に日に薄くなってきている。
それが、どれほど私の希望になっているか。
ヴェイル様の大きくて温かい手が好き。
落ち着いた声が好き。
微笑んだ時の優しい瞳が好き。
初めは、私を受け入れてくれたヴェイル様に依存していたんだと思う。でも、それがいつの間にか、恋に変わっていた。
これが恋だと気付いた時には、もう心がヴェイル様に落ちていた。
「ごめんなさい、ヴェイル様。もう少しだけ、あと少しだけ、お側にいさせて下さい。私、ちゃんとお別れする準備をしますから。だからどうか、もう少しだけ...。」
この治療が永遠に続けばいいのにと、私は卑怯なことを願わずにはいられなかった。
今日もキャロライン様に呼び出され、左頬を火の魔法で焼かれた。令嬢達から受ける折檻は、回数を重ねるごとに苛烈さを増している。
キャロライン様の回復魔法で、体の傷は消えても、私の精神はそろそろ限界に近かった。
それでも、ヴェイル様との限られた時間を自ら捨てることは出来なかった。
「ねえ、わたくし何度も言ったわよね?ヴェイル殿下と、食事も休憩も一緒に取っては駄目よって。ゴミは言葉まで理解出来なくなってしまったの?」
「ああ!」
踏まれた腕が、嫌な音を立てて折れ曲がる。私は、あまりの痛みに叫び声を上げた。
「もう、殺してしまおうかしら。脆弱な人間の国との同盟なんて、どうでもいい気がするのよ。そう思わない?ヴェイル殿下は、神に選ばれた異能者だもの!分かってくれるわよね!」
「そうですよ!」
「キャロライン様がお願いすれば、殿下も分かって下さいますよ!」
令嬢達の残酷な言葉が、私の落ちそうになる意識を繋ぎ止める。
私は、折れた腕で必死に体を起こした。
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