平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

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*ヴェイル視点 18

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騎士団棟の地下にある倉庫のその先には、重大な規律違反をした騎士を尋問するための牢があった。
そこには、今、マイリー・バルゼンとリセイル・ネイゼルがいる。


「何か吐いたか?」

「いいえ。自分達は侍女長に頼まれて、バレリー殿を王宮の給仕室へ連れて行っただけだと。」

「そうか。ならば仕方ない。これを使え。」
二人を尋問していたメルデンに、俺は黒い液体の入った小瓶を渡す。
それを受け取ったメルデンは、まず先にリセイルの顎を掴んで、無理矢理口の中に流し込んだ。


「ガハッ!グァッ…。」
液体を飲み込んだリセイルは、床の上をのたうち回った後、急に体の動きを止める。
俺は、リセイルの胸ぐらを掴み上げ、頬を強く打った。
その様子を震えて見ていたマイリーに、俺は丁寧な説明をしてやる。


「これは最近、医療部が開発した自白剤だ。強力過ぎて、何でも話す代わりに脳の一部が溶け出すらしい。お前達に使うなら丁度いいだろう?」

「そ、そんな…。嫌だ、赦して下さい、団長。」

「それは、リセイルの自白次第だな。ほら、リセイル、さっさと話せ。」
白目を剥いているリセイルを揺すって、意識をこちらに引き戻す。茫然としながらも、俺と目を合わせたリセイルは、一気に話し始めた。


「キャロライン様は、自分の権力を見せ付けるために、バルガンデイル公爵家に与えられた王宮の客間を使って、度々、気に入らない者に嫌がらせをしていました。今回のそのターゲットが、ステラ・バレリーでした。私達の役割は、協力者と連携してターゲットを呼び出すことです。」

「彼女を呼び出して、どうしたんだ?」

「キャロライン様は、ステラ・バレリーにも嫌がらせをしていました。彼女が、いかに卑しい存在であるかを分からせるために。ですが、いつまでたってもステラ・バレリーは、泣くことも、謝ることもしませんでした。それに業を煮やしたキャロライン様は、取り巻きの令嬢達を使って、彼女に暴力を振るうようになりました。」

反吐が出るリセイルの発言に、俺は拳を強く握りしめる。


「それで?お前達は、その協力で何を得る予定だったんだ?」

「キャロライン様は、私達に獣人騎士団内の絶対的な権力を約束して下さいました。マイリー様を、将来の騎士団長にすると。それに、私の願いも…。」

「願い?」

「はい。私は、ステラ・バレリーが欲しくなりました。何度傷付けられても濁らない、あの美しい瞳が…。」

その言葉を聞いた瞬間、俺は剣を引き抜いてリセイルの両目を抉っていた。


「ガッ、アァーー!目が!何も見えない!ああ!」

「お前如きが、私のステラを欲しいだと?お前もステラに手を上げたのか?それは、どちらの腕だ?切り刻んでやる!」

「あっ、ああ!ヤダ!嫌だ!助けて!私は、ステラ・バレリーに暴力は振るっていません!気を失った彼女を蹴り飛ばしたのは、マイリー様です!」

「ちっ違っ!私は、何もしていません!団長、信じて下さい!私は、何も知りませんでした!」
リセイルの突然の告発に、慌てたマイリーが泣き叫ぶ。


「ならば、お前もこれを飲んで、潔白を証明してみせろ!廃人にはなるが、名誉は守られるぞ!」

俺が拘束を解いて自白剤を渡すと、マイリーは震える手で瓶を受け取った。マイリーは暫く瓶を見つめた後、強く握りしめて蓋を開ける。次の瞬間、それを俺に投げ付けて走り出した。
扉に向かうマイリーの姿に、俺は密かにほくそ笑む。


やはりな。
お前に、名誉を守る度胸なんてあるわけがない。

俺は血に濡れた剣を、狙いを定めて投げつけた。それが、扉に手を掛けたマイリーの肩に深く刺さる。


「ああ!腕が!ぐあっ!」

「ステラを蹴った足は、不要だな。」
床に蹲るマイリーに素早く近付いた俺は、ヤツの右足を斬り捨てた。


「ガッ!ァアアアーー!」
暴れるマイリーを踏みつけ、首元に剣を添えると、俺の中の汚泥のような黒い感情が歓喜に震えた。
早く殺してしまえと。

その時、ふと、扉の外の騒がしい気配に意識が取られる。そこへ、俺の私室の警備を任せていた部下が駆け込んできた。


「だ、団長、バレリー様とニルセンが…。」


その言葉を聞いた瞬間、俺は脇目も振らず、ステラの下に駆け出していた。




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