平凡な私が選ばれるはずがない

ハルイロ

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*ヴェイル視点 29

やっと眠ったか。
普段、ステラは気丈に振る舞ってはいるが、そろそろ精神的にも限界だろう。
いつ魔物の王が襲ってくるか分からない現状では、気を抜けないのだから。

隣で眠る愛しい番の姿を眺めると、俺が散々悪戯したせいで、赤くなってしまったステラの小さな耳が目に入ってきた。


ステラの緊張を和らげるためのちょっとした悪戯だったんだがな。
ステラが本気で拒否しないのをいい事に、どんどん深くなる接触を楽しんでしまった。

獣の姿でいると、どうも本能に強く引っ張られ、自分の欲に押し負けそうになるのだ。


「んっ…。」

悩ましい声で、ステラが寝返りを打った。
俺は、少しだけ離れたステラの体を追って、その頬を舐めた。


甘い。

皮膚を舐めて甘いと感じられるぐらい俺の体は番に堕ちていた。
このまま齧り付いてしまいたい。
きっと、ステラの全てが甘美なのだろう。
ああ、欲しい。
食べたい。

短くなってしまった赤薔薇の髪を掻き分けて、頸に鼻を突っ込むと、理性を溶かす芳しい甘い香りが脳内に広がった。
俺は、本能のままに、ステラの頸に噛みつく。痕が付かない程度に、痛みを感じない強さで。

ステラの甘い香りの中に、自分の匂いが混ざり、独占欲が満たされていくのを感じた。それでも、まだ足りなくて、寝衣から覗く素肌に、俺の匂いを刻んでいった。

ここまでしても、ステラは起きない。
警備上、俺とステラは、常に一緒に過ごしているが、結婚前であることを考慮して寝所は離している。
しかし、初日で我慢を放棄した俺は、こうして夜な夜な、ステラの隣に潜り込んでいた。その際、ステラの眠りが深いことを知ったのだ。


「ああ、ステラ、愛してる。俺の愛しい番。早く俺の元まで、堕ちてきてくれ。もう、離せないんだ。」

ステラの顔にかかった髪を優しく払い除け、薄く開いた唇を舐める。そして、齧り付くように、唇を合わせた。


ステラの唇は、とっくに奪っていると知ったら、彼女は怒るだろうか?
それとも、彼女のお気に入りの黒豹姿なら、許してくれるだろうか?

ほんの一欠片の罪悪感を抱きつつも、俺は、何度もステラと唇を合わせる。


その時、寝室の隣の応接間に置いてある通信機が起動した。

俺は、複雑な思いで、応接間に繋がる扉を見つめる。

ステラを堪能出来るこの時間を邪魔されたくなかった。しかし、俺は、早く人の姿に戻るためにも、事が進むことを強く望んでいた。


仕方ない…。

「少し、待っていてくれ、ステラ。」
俺は、ステラの頬に口付けを落とすと、彼女が眠るベッドから飛び降りた。






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