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結婚を誓い合った後、落ち着きを取り戻したヴェイル様は、私が眠ってからのことを語ってくれた。
それによると、私は半年もの間、一度も目を開けることなく眠っていたらしい。私の中では夏だったサウザリンド王国が、秋と冬を飛び越え、春になっていたのだから驚いた。確かに、窓から入る風は涼しい。
肝心の魔物の王の話を聞くと、ヴェイル様からは、「もういない」と返ってきた。
魔物の王は、その力ごと完全に祓われ、遺体すら消え去ったそうだ。そして、統率者を失ったことで、各地の魔物が弱体化し、それを機に、討伐も大分進んだのだとか。サージェントのみんなの無事も聞けて、私は強張っていた体から力を抜くことが出来た。
いつか、ここは、魔物がいない世界になるのだろうか。
そうなれば、ヴェイル様もみんなも、もう危険な戦いに行かずにすむ。
私は希望を抱いた胸に、手を押し当てた。
「ステラの体からは、魔物の王の核は消えた。貴女の生を脅かすものはもうない。」
「でも、その代わり、魔力は溜められないんですよね?魔力欠如症の治療は、振り出しに戻ってしまいました」
私は魔法が使えなくても構わないけど、未だに迫害を受ける魔力欠如症の人達の希望にはなりたかった。
せっかく治療の可能性が見えていたのに…。
「いや、それが、そうでもないんだ。ステラの治療の一環で、魔力欠如症者は、魔力を生み出せないのではなく、溜められないだけだと分かった。だから、魔力を溜める器さえ作ってやれば、何とかなるらしい」
「じゃあ!」
「ああ。いずれ、治療は可能になるだろう」
「良かった…」
私、彼らの希望を消してしまった訳ではないのね…
「ステラが頑張ったからだな。ありがとう」
「いいえ、私は、何も…」
否定的な言葉が出た私の口を、ヴェイル様の指が止める。
「ステラ、貴女には、花嫁修行が必要だな」
ヴェイル様の言葉に、私は首を傾げる。王弟の妃になるのだから、王子妃教育が必要なのは分かるけど、なぜ、花嫁修行?
サウザリンド王国の習慣なのかしら?
頭の中に疑問符を浮かべていると、私の唇から指を離したヴェイル様が、グッと顔を寄せてきた。
「まず、自分を卑下する事は禁止だ」
「え?」
「ステラ、少しずつ自分に自信を付けていこう。俺が何度も貴女を褒めるからな。最初は、そうだな…」
甘い笑みを浮かべたヴェイル様が、私の頭を撫でながら、一気に語り出す。寝物語を話すように、抑揚を付けて。
「ステラ、貴女は、凄く可愛いんだぞ?その赤い髪は、大輪の花のように美しいし、深緑の大きな瞳は宝石のようだ。思慮深く、頭の回転も早い。共通語以外に、3カ国語も話せるんだって?凄いじゃないか!小柄だが、俺の腕の中にすっぽり入って丁度良い。華奢なのに、出る所は出ているし、肌も陶器のように白くきめ細やかで、触り心地は抜群だ。声は、鈴のように軽やかで…」
「ちょ!ちょっと、止まって下さい、ヴェイル様!もう!もう十分です!」
私は、真っ赤になってヴェイル様の口を無理矢理止めた。
それによると、私は半年もの間、一度も目を開けることなく眠っていたらしい。私の中では夏だったサウザリンド王国が、秋と冬を飛び越え、春になっていたのだから驚いた。確かに、窓から入る風は涼しい。
肝心の魔物の王の話を聞くと、ヴェイル様からは、「もういない」と返ってきた。
魔物の王は、その力ごと完全に祓われ、遺体すら消え去ったそうだ。そして、統率者を失ったことで、各地の魔物が弱体化し、それを機に、討伐も大分進んだのだとか。サージェントのみんなの無事も聞けて、私は強張っていた体から力を抜くことが出来た。
いつか、ここは、魔物がいない世界になるのだろうか。
そうなれば、ヴェイル様もみんなも、もう危険な戦いに行かずにすむ。
私は希望を抱いた胸に、手を押し当てた。
「ステラの体からは、魔物の王の核は消えた。貴女の生を脅かすものはもうない。」
「でも、その代わり、魔力は溜められないんですよね?魔力欠如症の治療は、振り出しに戻ってしまいました」
私は魔法が使えなくても構わないけど、未だに迫害を受ける魔力欠如症の人達の希望にはなりたかった。
せっかく治療の可能性が見えていたのに…。
「いや、それが、そうでもないんだ。ステラの治療の一環で、魔力欠如症者は、魔力を生み出せないのではなく、溜められないだけだと分かった。だから、魔力を溜める器さえ作ってやれば、何とかなるらしい」
「じゃあ!」
「ああ。いずれ、治療は可能になるだろう」
「良かった…」
私、彼らの希望を消してしまった訳ではないのね…
「ステラが頑張ったからだな。ありがとう」
「いいえ、私は、何も…」
否定的な言葉が出た私の口を、ヴェイル様の指が止める。
「ステラ、貴女には、花嫁修行が必要だな」
ヴェイル様の言葉に、私は首を傾げる。王弟の妃になるのだから、王子妃教育が必要なのは分かるけど、なぜ、花嫁修行?
サウザリンド王国の習慣なのかしら?
頭の中に疑問符を浮かべていると、私の唇から指を離したヴェイル様が、グッと顔を寄せてきた。
「まず、自分を卑下する事は禁止だ」
「え?」
「ステラ、少しずつ自分に自信を付けていこう。俺が何度も貴女を褒めるからな。最初は、そうだな…」
甘い笑みを浮かべたヴェイル様が、私の頭を撫でながら、一気に語り出す。寝物語を話すように、抑揚を付けて。
「ステラ、貴女は、凄く可愛いんだぞ?その赤い髪は、大輪の花のように美しいし、深緑の大きな瞳は宝石のようだ。思慮深く、頭の回転も早い。共通語以外に、3カ国語も話せるんだって?凄いじゃないか!小柄だが、俺の腕の中にすっぽり入って丁度良い。華奢なのに、出る所は出ているし、肌も陶器のように白くきめ細やかで、触り心地は抜群だ。声は、鈴のように軽やかで…」
「ちょ!ちょっと、止まって下さい、ヴェイル様!もう!もう十分です!」
私は、真っ赤になってヴェイル様の口を無理矢理止めた。
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