傾く方へ

seitennosei

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傾く方へ。

ただ呆然と。

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必死に背けている顔を無理矢理正面に向かされ、抗議の為に開いた口に舌が入り込んでくる。
「や、むっん…。んん。」
脚をばたつかせながら、両手で滅茶苦茶に肩の辺りを叩いて抵抗を見せるも、すぐに掴まれ纏めてベッドに押さえ付けられてしまう。
キツく閉じていた瞼を薄く開くと、ぼやける程近くから刺す様な視線を感じた。
目が合った瞬間、ジーンと下腹部が疼く。
どれだけ暴れても逃げられない。
押さえられている腕も解けそうにない。
嫌だって言っているのに無視をされ、好き勝手に弄ばれる身体。
完全なる支配。
こんなのは愛情じゃない。
それでも好きな人が抵抗を圧してまで私を求めてくれている現状に、身体は開く準備を始めてしまった。
木内さんは満足そうにほくそ笑みながら、空いてる方の手で乱暴にショーツを剥ぎ取る。
そして自分のスエットとパンツを纏めて腿の辺りまでずり下げると、何の躊躇いもなく私の中に侵入してきた。
「やっだ…。あ、木内さん 。…避妊して下さい!」
「はは…。キスしかしてないのに…めちゃくちゃ濡れてんじゃん。」
「最っ低!」
クソ野郎!と続けて叫ぼうと開いた口をまた口で塞がれる。
尖らせた舌の先で私の舌を擽ってきた。
弱い所は全て知られてしまっている。
スキンをしていないそれが、熱や質感を直接伝えてきた。
少しの動きでもゾワゾワと疼く様な快感が登ってきて、私は身悶える。
木内さんはゆっくりと焦らすように腰を動かしながら、堪らなさそうに吐息を漏らした。
「はー、ナマやっば…。」
「やだ…。あ、あっゴム…して、下さい…。」
「これからも会うって約束してくれたらゴム付けてあげるけど?」
「ほんと、っ最低…。」
私の耳に木内さんが口を付け囁く。
「濡れてなきゃ入んなかったのにね。」
ゾワゾワと鳥肌が立った。
卑怯過ぎる。
屈するわけにはいかない。
キッと睨み付け「絶対に木内さんの思い通りにはなりませんから!」と宣言した。
それも鼻で笑われ腹が立つ。
ゆっくりと出し入れされ、内壁がギュッと反応する。
布団からも部屋の中のそこかしこから、木内さんの匂いがしてクラクラと目眩がした。
感じたくない。
気持ちの良いポイントからズレる様、お尻を落としてやり過ごすも、腰を掴まれグッと持ち上げられる。
「逃がすわけ無いでしょ?」
「や、あ…。んっ。やぁっ。」
「ユリの良いとこ全部分かるよ?」
木内さんは両手でしっかりと腰を固定すると、一点を突く様に動き出した。
「やだっ。ん、んっ。ほんと、にっ。やあっ。」
「ナマ気持ち良いの?もう中、イキそうだね。」
腰にある腕を剥がそうと引っ張ったり、木内さんの胸の辺りを強く押したりしてまた抵抗するも、一定のリズムで弱い所を攻められ続け力が入らない。
ダメなのに。
嫌なのに。
木内さんの匂いに包まれ、触れられていると抗えなくなった。
もっと欲しくて、身体が木内さんを離そうとしない。
私の変化に気付いている彼は、悪戯っぽく笑いながら見下ろしてくる。
いつも冷たい表情とのギャップにゾクゾクと胸が反応した。
「逃がさないからね?」
こちらの希望なんて全く無視して、好きな人が私を支配している。
視覚的にも聴覚的にも嗅覚的にも感覚的にも精神的にも。
そこから得た情報が全て快感に直結した。
屈したくないと強がる分だけ、屈服させられた時の快感も増していく。
もう限界まできている。
「いやだっ…。おねが…しますっ。イきた、く…ないです…。」
「これからも、…俺と会う?」
ふるふると首を横に振る。
木内さんは口角を上げ、「ふっ。」と小さく息を漏らすと腰の動きを早めた。
「やあぁ。ん、んっ。止めてっ…。おねがぃ…。もっ、やだ、から…。」
「頑ななユリが悪い。」
「あ、やあだ。あっ…んんっ。」
意志とは関係なく、身体が強ばり中が収縮していく。
ギュッと締まり木内さんの形がハッキリと分かった。
呼吸が乱れ、息が吸えていないのか吐けていないのかも分からない。
腹部の痙攣が止まない中、木内さんは動き続けている。
「きうちさっ。や、め…。も、イッてる。イッてます。」
「何言ってるの?…一回イッて終わった事…なんてないじゃん。」
強引に同じ所をしつこく突かれ、自分でも痛いくらい筋肉が縮んで締め付けてしまう。
登ったまま降りられない。
助けを求める様に木内さんに抱きついた。
腰から手を離し、彼も私を抱き締めてくる。
「俺もイきそう…。」
途端に我に返った。
しがみついていた手で、再度木内さんの身体を強く押す。
「まって!中には、出さないで!」
「これからも俺と会う?」
余裕なく上気した顔でニッコリと微笑んでいる。
一瞬それを可愛いと思ってしまった。
本当に卑怯なのに。
絶対に屈したくないのに。
身体の方は受け止める準備をしている。
搾り取る様にうねった。
「早く。もう出ちゃうよ?」
「やだ、やだ…。ダメです。ほんとっ。」
「はー…、ユリ。…ふっ…っ。うっ…。あー、ごめん。」
突っぱねる私を強引に抱き締めて木内さんは中に吐き出した。
最後の一滴まで残さず注ぎ込もうと、グイグイと奥に押し付けてくる。
嫌なのに、こんな時まで身体はそれを快感だと認識していて。
私は絶望的な気持ちになって、ただ呆然と天井を見るしかなかった。
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