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仕事終わり。
帰宅すると家の前に小さな人影があった。
ゆっくりと近付いて目を凝らす。
「汐ちゃん?」
玄関扉に背中をもたれさせていたその人影は、パッと身を立てこちらを向いて微笑んだ。
「高橋さん、おかえりなさい。」
本当に汐ちゃんだ。
俺の家まで来てくれた。
しかも笑っている。
余りの嬉しさに、残りの数メートルを小走りで近付く。
また汐ちゃんと笑って話せる。
また汐ちゃんに触れられる。
そう思うと心が踊った。
いつの間にか小走りを通り越し、全力疾走になる。
いくつもの扉を通り過ぎて駆け抜けた。
あれ?こんなに離れてたっけ?
それどころか、単身向けマンションの短い廊下なのに、走っても走っても自分の部屋まで辿り着けない。
それに気付いた瞬間、上手く走れなくなり、モタモタと身体を捩らせ、もがきながらにじにじとしか進めなくなる。
くっそ、イライラする。
何なんだよ。
そんな俺を汐ちゃんが、不自然に固まった笑顔で見てくる。
早く汐ちゃんのところに行きたいのに。
その一心で身体をばたつかせるも、全く距離が縮まらない。
むしろ広がっている気さえする。
どうしようもなくなり、縋る視線を汐ちゃんへ向けた。
俺の視線に応える様に口を開く。
「高橋さん、私元カレとよりを戻すことにしました。」
衝撃を受ける。
何でそうなる。
それは、それだけは絶対ダメだろう。
何がなんでも思い留まらせたい。
「汐ちゃん!それはやめろ!」
一向に前に進まないが、走り続けたまま叫んだ。
「どうしてですか?」
対照的に余裕の笑顔で訊ねてくる。
「高橋さんに関係あります?」
そして追い打ちを掛ける様に質問を繰り返した。
「高橋さんて私の何なんですか?」
「彼氏気取りですか?」
「自分で可笑しいってわからないんですか?」
「って言うか…」
「高橋さんって、私のこと好きなんですか?」
ここでハッと目が覚める。
天井を見上げながら状況を把握しようと思考する。
夢だった?
夢なんだよな?
そうだ、…夢で良かった。
深呼吸をして浅くなった呼吸を整える。
胸の中ではまだ心臓が跳ねている。
じっとりと全身に汗が。
きっとうなされていたのだろう。
喉がカラカラになっている。
衝撃的だったあの言葉が、ずーっと頭の中で繰り返し反響する。
「元カレとよりを戻すことにしました。」
「元カレとよりを戻すことにしました。」
「元カレとよりを戻すことにしました。」
…
嫌だ。
夢だから良かったけど、現実になってしまう気がして焦る。
そして唐突に蘇る最後の言葉。
「高橋さんって、私のこと好きなんですか?」
チクリと胸が痛む。
「うるせぇな。…めちゃくちゃ好きだよ。」
深いため息と共に吐き出した。
汐ちゃんに拒絶されてから5日たった。
それ以来、それまでほぼ毎日見ていたエッチな夢は全く見なくなった。
代わりに色んなシチュエーションで汐ちゃんに振られる夢を見ている。
淫夢同様、何度も続くと少しづつ慣れて来るのだが、さっきの夢は久しぶりにかなり心に来た。
元カレとよりを戻すなんて。
例え俺と汐ちゃんが上手くいかなくても、それだけは絶対に許してはいけないだろう。
許す、許さないとか言える立場じゃないけどな…。
枕元のデジタル時計を見る。
土曜日の朝8時過ぎ。
俺は10時からのバイトに向けて支度をするべく、重たい身体を起こした。
昼過ぎの休憩室。
離れた端の席に汐ちゃんとヒナちゃんがいる。
ほんの少しそちらを気にしつつも、椅子に全体重を預け、天井を見上げてボーッと脱力する。
今朝は酷い夢を見た。
きっと今夜も見るのだろう。
もううんざりだ。
「高橋さん。」
急に現実に引き戻される。
慌てて辺りを見渡す。
声の主はすぐ隣に座ってこちらを見ているユナちゃんだった。
「ああ、ユナちゃん。」
体勢を整え座り直す。
「おつかれ。」
挨拶をして顔を向けると、ニッコリ微笑んだユナちゃんは小声で踏み込んだ質問をしてきた。
「高橋さん。汐さんと何かありました?」
ドキッとして言葉に詰まる。
何をどこまで知っているのか。
もしや汐ちゃんが話したのか?
いや、それより鋭いユナちゃんが勘づいたという線が濃厚な気がする。
隠しても仕方ないので、感じたままに答える。
「何もねぇよ。残念ながら。」
「ふーん…。」
ユナちゃんは含みのある顔で頷いた。
「何もないのが残念なら、何かおこせば良いのに。」
「簡単に言うねぇ…。」
ちょっとイラついたのを思わず態度に出してしまった。
大人気ねぇな、俺。
「何かをおこす前に拒否られたんだよ。」
「ふーん…。」
納得いってなさそうに相槌を打つユナちゃん。
何が知りたくて俺に絡んで来たのか。
いい加減ムカついてきた。
「でも…。…ユナ、今の高橋さんならアリだけどなぁ。」
ビクッと身体が跳ねる。
突然何を言い出したのか。
ユナちゃんは俺のお気に入りの笑顔でニコニコしている。
え、マジで?
あー、やっぱり可愛い。
本当にめちゃくちゃタイプ。
と、一瞬前までムカついていた筈なのに、心がグラグラと揺れる。
なんて現金なんだと自分に呆れてしまう。
だけど、もう以前の俺とは違う。
勿体ねぇとか、一緒にいたら確実に好きになるでしょとか、悪魔の囁きも聞こえてはくるが、胸の中に汐ちゃんがドカッと居座って、どうしてもどいてくれない。
他に入り込む余地なんて少しもないと気付かされる。
「ユナちゃん、俺さ…」
「高橋さん。」
突然、後ろから声がして振り返る。
汐ちゃんが立っていた。
まさか汐ちゃんから話しかけられると思っていなかったので固まってしまう。
「休憩中すみません。戻る時にトイレ個室用の電球一つと脚立を濱田さんに持って行ってくれませんか?」
「…わ、わかった。」
かなり緊張した。
ただの業務連絡だったけど。
なんだ。とちょっと残念な気持ちと、悪い話じゃなくて安堵したのとで、心がごちゃ混ぜになる。
「濱田さんが、誰でも良いから男の人に頼めって言うから…。すみませんが、お願いします。」
ペコッと頭を下げて去っていく背中を見送る。
ちょっと前まで、ペコッと頭を下げられる度に笑い合っていたのに。
そして誰でも良いって言葉にも悲しくなる。
それでも、例え業務連絡だけでも、避けないで話してくれたことに希望を見い出せなくもないが…。
「何で高橋さんなんですかねぇ?」
一緒に汐ちゃんの背中を見送りながらユナちゃんが呟いた。
「ねぇ、他にも男の人何人かいるのに、高橋さんの所に来ましたよ?何ででしょうね?」
いたずらっぽい顔で覗き込んで来る。
この子、俺のことアリとか嘘でしょ。
絶対俺をからかって遊んでいる。
「俺が、こん中で一番背が高いからじゃね?」
室内を見渡して適当に答える。
「持っていくだけなのに?電球替えてきてって言う話じゃないですよ。しかも他の人も別に小さい訳じゃないし。てか、急ぎじゃないとはいえ、高橋さんより早く休憩上がりそうな人他にいるのに、何で高橋さんなんだと思います?」
本当にイイ性格してやがる。
ユナちゃんの意図はわかている。
俺とユナちゃんの話している姿にヤキモチを妬いた汐ちゃんが、仕事を口実に話しかけてきたって思ってるって白状させたいんだろう。
でもそれは俺の願望であって事実ではない。
そして、そんな思い上がった思考は、願望であっても口にしたくない。
口にした途端惨めになりそうだ。
「あはは。」
悶々と思考を巡らせている俺を、ユナちゃんは笑い飛ばした。
「高橋さんって本当に全部顔に出る。」
心底愉快そうだ。
「どうせ、またごちゃごちゃ捏ねくり回して、でもとかだってとか言いながら色んな方向から考えて、勝手に結論出してるんでしょう?良いですか?今あった事実は『ユナと高橋さんが楽しそうにお話していたら汐さんが仕事の話で遮ってきた。』ってことです。これを客観的に見たらどう思います?殆どの人が『あー、あの子ヤキモチ妬いてんな。』って思いますよ。」
俺は言葉を探して、黙り込む。
そんなに都合よく考えても良いのだろうか。
「人って結局はシンプルですよ。特に余裕がない時程。汐さんだってそうですよ。」
高校生とは思えない大人びた顔でユナちゃんは俺を諭す。
「2人の間で何があったのか知らないですけど、2人とももっと素直になれば良いのにってユナは思いますよ。」
そう言って今まで見た事のない優しい顔で笑った。
ユナちゃんってこんな柔らかい顔出来るんだ。
思えば今まで作り笑顔と怒った顔しか向けて貰えなかった。
チャラついていた俺が原因なんだが。
一人の人間としてやっと認めて貰えたようで嬉しい。
可愛い女の子としてしか見ていなかったが、ユナちゃんとも一人の人間として接していたら、この先学ぶことが沢山あるのかもしれない。
「んー。でもなー。」
グーッと伸びをしながらユナちゃんが声を発した。
「ユナ、やっぱ、今の高橋さんもナイわー。」
「はー?そっちから言い出したのに何なんだよ。」
冗談ぽい空気になり、俺も笑顔で文句を言う。
「だって、他の女の子で頭いっぱいの人なんてナイでしょ。」
そう言い切ると席を立ち、ユナちゃんも店に戻って行った。
スマホで時間を確認する。
休憩はまだ10分程残っているが、じっとしている気分じゃない。
なんだか直ぐに動き出したい気持ちでソワソワして座っていられない。
「よし、10分タダ働きすっか。」
俺は立ち上がると、脚立のある倉庫へ向かった。
帰宅すると家の前に小さな人影があった。
ゆっくりと近付いて目を凝らす。
「汐ちゃん?」
玄関扉に背中をもたれさせていたその人影は、パッと身を立てこちらを向いて微笑んだ。
「高橋さん、おかえりなさい。」
本当に汐ちゃんだ。
俺の家まで来てくれた。
しかも笑っている。
余りの嬉しさに、残りの数メートルを小走りで近付く。
また汐ちゃんと笑って話せる。
また汐ちゃんに触れられる。
そう思うと心が踊った。
いつの間にか小走りを通り越し、全力疾走になる。
いくつもの扉を通り過ぎて駆け抜けた。
あれ?こんなに離れてたっけ?
それどころか、単身向けマンションの短い廊下なのに、走っても走っても自分の部屋まで辿り着けない。
それに気付いた瞬間、上手く走れなくなり、モタモタと身体を捩らせ、もがきながらにじにじとしか進めなくなる。
くっそ、イライラする。
何なんだよ。
そんな俺を汐ちゃんが、不自然に固まった笑顔で見てくる。
早く汐ちゃんのところに行きたいのに。
その一心で身体をばたつかせるも、全く距離が縮まらない。
むしろ広がっている気さえする。
どうしようもなくなり、縋る視線を汐ちゃんへ向けた。
俺の視線に応える様に口を開く。
「高橋さん、私元カレとよりを戻すことにしました。」
衝撃を受ける。
何でそうなる。
それは、それだけは絶対ダメだろう。
何がなんでも思い留まらせたい。
「汐ちゃん!それはやめろ!」
一向に前に進まないが、走り続けたまま叫んだ。
「どうしてですか?」
対照的に余裕の笑顔で訊ねてくる。
「高橋さんに関係あります?」
そして追い打ちを掛ける様に質問を繰り返した。
「高橋さんて私の何なんですか?」
「彼氏気取りですか?」
「自分で可笑しいってわからないんですか?」
「って言うか…」
「高橋さんって、私のこと好きなんですか?」
ここでハッと目が覚める。
天井を見上げながら状況を把握しようと思考する。
夢だった?
夢なんだよな?
そうだ、…夢で良かった。
深呼吸をして浅くなった呼吸を整える。
胸の中ではまだ心臓が跳ねている。
じっとりと全身に汗が。
きっとうなされていたのだろう。
喉がカラカラになっている。
衝撃的だったあの言葉が、ずーっと頭の中で繰り返し反響する。
「元カレとよりを戻すことにしました。」
「元カレとよりを戻すことにしました。」
「元カレとよりを戻すことにしました。」
…
嫌だ。
夢だから良かったけど、現実になってしまう気がして焦る。
そして唐突に蘇る最後の言葉。
「高橋さんって、私のこと好きなんですか?」
チクリと胸が痛む。
「うるせぇな。…めちゃくちゃ好きだよ。」
深いため息と共に吐き出した。
汐ちゃんに拒絶されてから5日たった。
それ以来、それまでほぼ毎日見ていたエッチな夢は全く見なくなった。
代わりに色んなシチュエーションで汐ちゃんに振られる夢を見ている。
淫夢同様、何度も続くと少しづつ慣れて来るのだが、さっきの夢は久しぶりにかなり心に来た。
元カレとよりを戻すなんて。
例え俺と汐ちゃんが上手くいかなくても、それだけは絶対に許してはいけないだろう。
許す、許さないとか言える立場じゃないけどな…。
枕元のデジタル時計を見る。
土曜日の朝8時過ぎ。
俺は10時からのバイトに向けて支度をするべく、重たい身体を起こした。
昼過ぎの休憩室。
離れた端の席に汐ちゃんとヒナちゃんがいる。
ほんの少しそちらを気にしつつも、椅子に全体重を預け、天井を見上げてボーッと脱力する。
今朝は酷い夢を見た。
きっと今夜も見るのだろう。
もううんざりだ。
「高橋さん。」
急に現実に引き戻される。
慌てて辺りを見渡す。
声の主はすぐ隣に座ってこちらを見ているユナちゃんだった。
「ああ、ユナちゃん。」
体勢を整え座り直す。
「おつかれ。」
挨拶をして顔を向けると、ニッコリ微笑んだユナちゃんは小声で踏み込んだ質問をしてきた。
「高橋さん。汐さんと何かありました?」
ドキッとして言葉に詰まる。
何をどこまで知っているのか。
もしや汐ちゃんが話したのか?
いや、それより鋭いユナちゃんが勘づいたという線が濃厚な気がする。
隠しても仕方ないので、感じたままに答える。
「何もねぇよ。残念ながら。」
「ふーん…。」
ユナちゃんは含みのある顔で頷いた。
「何もないのが残念なら、何かおこせば良いのに。」
「簡単に言うねぇ…。」
ちょっとイラついたのを思わず態度に出してしまった。
大人気ねぇな、俺。
「何かをおこす前に拒否られたんだよ。」
「ふーん…。」
納得いってなさそうに相槌を打つユナちゃん。
何が知りたくて俺に絡んで来たのか。
いい加減ムカついてきた。
「でも…。…ユナ、今の高橋さんならアリだけどなぁ。」
ビクッと身体が跳ねる。
突然何を言い出したのか。
ユナちゃんは俺のお気に入りの笑顔でニコニコしている。
え、マジで?
あー、やっぱり可愛い。
本当にめちゃくちゃタイプ。
と、一瞬前までムカついていた筈なのに、心がグラグラと揺れる。
なんて現金なんだと自分に呆れてしまう。
だけど、もう以前の俺とは違う。
勿体ねぇとか、一緒にいたら確実に好きになるでしょとか、悪魔の囁きも聞こえてはくるが、胸の中に汐ちゃんがドカッと居座って、どうしてもどいてくれない。
他に入り込む余地なんて少しもないと気付かされる。
「ユナちゃん、俺さ…」
「高橋さん。」
突然、後ろから声がして振り返る。
汐ちゃんが立っていた。
まさか汐ちゃんから話しかけられると思っていなかったので固まってしまう。
「休憩中すみません。戻る時にトイレ個室用の電球一つと脚立を濱田さんに持って行ってくれませんか?」
「…わ、わかった。」
かなり緊張した。
ただの業務連絡だったけど。
なんだ。とちょっと残念な気持ちと、悪い話じゃなくて安堵したのとで、心がごちゃ混ぜになる。
「濱田さんが、誰でも良いから男の人に頼めって言うから…。すみませんが、お願いします。」
ペコッと頭を下げて去っていく背中を見送る。
ちょっと前まで、ペコッと頭を下げられる度に笑い合っていたのに。
そして誰でも良いって言葉にも悲しくなる。
それでも、例え業務連絡だけでも、避けないで話してくれたことに希望を見い出せなくもないが…。
「何で高橋さんなんですかねぇ?」
一緒に汐ちゃんの背中を見送りながらユナちゃんが呟いた。
「ねぇ、他にも男の人何人かいるのに、高橋さんの所に来ましたよ?何ででしょうね?」
いたずらっぽい顔で覗き込んで来る。
この子、俺のことアリとか嘘でしょ。
絶対俺をからかって遊んでいる。
「俺が、こん中で一番背が高いからじゃね?」
室内を見渡して適当に答える。
「持っていくだけなのに?電球替えてきてって言う話じゃないですよ。しかも他の人も別に小さい訳じゃないし。てか、急ぎじゃないとはいえ、高橋さんより早く休憩上がりそうな人他にいるのに、何で高橋さんなんだと思います?」
本当にイイ性格してやがる。
ユナちゃんの意図はわかている。
俺とユナちゃんの話している姿にヤキモチを妬いた汐ちゃんが、仕事を口実に話しかけてきたって思ってるって白状させたいんだろう。
でもそれは俺の願望であって事実ではない。
そして、そんな思い上がった思考は、願望であっても口にしたくない。
口にした途端惨めになりそうだ。
「あはは。」
悶々と思考を巡らせている俺を、ユナちゃんは笑い飛ばした。
「高橋さんって本当に全部顔に出る。」
心底愉快そうだ。
「どうせ、またごちゃごちゃ捏ねくり回して、でもとかだってとか言いながら色んな方向から考えて、勝手に結論出してるんでしょう?良いですか?今あった事実は『ユナと高橋さんが楽しそうにお話していたら汐さんが仕事の話で遮ってきた。』ってことです。これを客観的に見たらどう思います?殆どの人が『あー、あの子ヤキモチ妬いてんな。』って思いますよ。」
俺は言葉を探して、黙り込む。
そんなに都合よく考えても良いのだろうか。
「人って結局はシンプルですよ。特に余裕がない時程。汐さんだってそうですよ。」
高校生とは思えない大人びた顔でユナちゃんは俺を諭す。
「2人の間で何があったのか知らないですけど、2人とももっと素直になれば良いのにってユナは思いますよ。」
そう言って今まで見た事のない優しい顔で笑った。
ユナちゃんってこんな柔らかい顔出来るんだ。
思えば今まで作り笑顔と怒った顔しか向けて貰えなかった。
チャラついていた俺が原因なんだが。
一人の人間としてやっと認めて貰えたようで嬉しい。
可愛い女の子としてしか見ていなかったが、ユナちゃんとも一人の人間として接していたら、この先学ぶことが沢山あるのかもしれない。
「んー。でもなー。」
グーッと伸びをしながらユナちゃんが声を発した。
「ユナ、やっぱ、今の高橋さんもナイわー。」
「はー?そっちから言い出したのに何なんだよ。」
冗談ぽい空気になり、俺も笑顔で文句を言う。
「だって、他の女の子で頭いっぱいの人なんてナイでしょ。」
そう言い切ると席を立ち、ユナちゃんも店に戻って行った。
スマホで時間を確認する。
休憩はまだ10分程残っているが、じっとしている気分じゃない。
なんだか直ぐに動き出したい気持ちでソワソワして座っていられない。
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