ドラゴン観察日記

早瀬 竜子

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尊敬?

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 王様に会うための部屋は、思ったより広くなくてホッとした。
 しかし、王様を待つ間は緊張して身じろぎ一つできなかった。

 しばらくすると、王様が部屋に入って来た。
 その貫禄のある姿に、目を伏せて視線を合わせないように気をつけた。
 隣に立つライドさんが礼をしたので、私も真似して同じようにした。

「そう畏まらんでもよい」

 王様がそう言ってくれたけど、私はそのままじっとしていた。

「竜の子を見せてくれるか」

 王様の言葉に、私はライドさんに促されてバスケットの蓋を開けた。

 キューちゃんはまだ眠っていた。
 そっと抱き上げてバスケットから出し、それからどうしたらいいのか分からずにライドさんを見た。
 ライドさんはグレイス様を見たので、私もそっちに顔を向けた。
 するとグレイス様が片手を出したので、私はキューちゃんをそっとその手のひらの上に乗せた。

 グレイス様はそのまま王様の前に行って、キューちゃんを見せるように差し出した。

「ふむ。ずいぶん小さいのだな」

 キューちゃんを見て、王様はグレイス様と同じことを言った。

「幼少期が長いために、なかなか成長しないのかと」

 グレイス様がそう答えていた。
 グレイス様は、王様の前でもいつもと変わりがないようだった。

 さすが偉いだけある!

 この時初めて、私はグレイス様を尊敬した。

「グレイス、そちらの子供に竜術士の素質があるというのは本当か」

 王様が私に視線を向けたのでドキッとした。

「はい。竜の湖に連れて行きましたが、ずいぶんと竜達に好かれていました」
「そうか。……おまえの弟子にするのか?」
「はい」
「初めての弟子だな。頑張れよ」
「……はい」

 グレイス様、私が初めての弟子なんだ。
 そう聞くと、やっぱり少し不安になってくる。
 いや、大丈夫! ライドさんが、優秀だって言ってたし。
 いまいち信用しきれないけど、とにかくライドさんの言葉を信じたかった。

 そんなことを考えているうちに王様が退場して、私はやっと気を抜くことができた。

 結局キューちゃんは一度も起きることなく、グレイス様から手渡されてバスケットに入れたのだった。

 キューちゃんって図太いのかな。
 私はあんなに緊張したのにキューちゃんは呑気に寝ていたのだから、その図太さが羨ましかった。


 ……こうして、王様との謁見は終了した。

 これから、竜術士の弟子として頑張ろうと思った。
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