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序章ー白翠の乱ー
氷雨side
しおりを挟む「翠国へ発つ準備を進めておきます」
泣き崩れる母上、真っ直ぐに私を見つめ頷く父上を背に、部屋を出た。
きっと翠国は白華の提案を断らないーー。私にはその確信があったし、父上も私と同じ考えであったからこそ、この提案を受け入れたのだ。
“白華の王女は年頃になれば海の向こうの大国、烈国に嫁入りさせ、強き同盟を結ぶ計画であった”との偽りの情報を翠国の王の耳に入れる。烈国とは四国全ての力を持ってしても互角かどうか、それほどの力を持つ大国である。その大陸と白華が同盟を結ばれると不利なのは、現在白華との国交が皆無で不仲である翠国。
あまり後先考えずの戦を行なっている翠国は必ずこの情報に食いつくはずーーー。
そうなれば白華の王女の人質としての価値は十分にあるはずだ。
ーーーこわくないはずがない。人質とはいえ敵国に行くのだ。殺されるかもしれない。父と母と離れたくない。知らない土地はおそろしいーーー。
だがそれよりも弟を死なせたくない。
その一心でした提案だった。
ーーー部屋を出ると、そこには王女付きの護衛がいた。
真っ黒な髪の毛、薄い茶色の瞳、中性的な顔立ちのその男はただ真っ直ぐに私を見つめ、
「俺も行きます」
ーーーーーそう言った。
それから協定は無事結ばれ二月後、皮肉にも十歳の誕生日の前日に、私は正式に翠国に引き渡されることとなった。
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