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第一章
オーランの秘密 1
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イレーナが連れ去られて一週間が過ぎた。
オーランは特に何かするわけでもなく、イレーナを自由にさせていた。
姫巫女の力を使えと、強要されることもない。
国王だからか政務に忙しく昼間はほとんどいない。
夜、時間があればイレーナの寝室にやってきてイレーナを抱く。
イレーナは完全にオーランの慰みものとして扱われていた。
オーランに抱かれた次の日は体が重く、一日中ベッドから起き上がることができなかった。
城内と庭を自由に散歩できる許可が下りていて、イレーナは調子がいいときと、オーランがいないときはよく庭に出ていた。
「姫巫女様、どちらへ?」
「庭を散歩してくるわ」
「お気をつけて」
イレーナ専属の侍女、メアリに告げて広い庭に出た。
城内の至るところに騎士がいて、門にも騎士が常時待機している。
世間知らずなイレーナでもこの城内から逃げられないことは分かっていた。
だからオーランも自由にさせているのだろう。
広い庭に出ると綺麗に整えられた芝が一面に広がり、庭の中央には大きな噴水が設置されていた。
ふと空を見上げれば雲一つない夜空に大きな満月と星々が一面に輝いていて、思わずうっとりする。
「綺麗……」
イフラー国の神殿からみた星と同じだ。母国を思い出し、イレーナは胸が締め付けられた。
オーランの考えていることが分からなかった。
ただイレーナを慰みものにするためだけに攫ったのだろうか?
それだけのために戦まで仕掛けるはずがない。
「国王様! お待ちください!!」
人の声が聴こえてイレーナは慌てて木の陰に隠れた。
「うるさいぞ。ユーグ」
オーランといつも一緒にいる男が回廊から外へと出てくる。
イレーナのすぐ近くまで来て足を止めた。
イレーナは身を潜めつつ二人の会話に聞き耳をたてる。
「どうしてすぐに姫巫女の力を使わないのですか? 何のために姫巫女を連れ去ったと」
「俺は反対していた」
ーえ?
オーランの言葉にイレーナは目を丸くする。
「まだおっしゃってるんですか? 議会で決定したことでしょう。どうして躊躇っておられるんですか?」
「ー身勝手に連れてこられた姫巫女の気持ちを思うと、な」
本当にあのオーランの言葉なのだろうか。イレーナは耳を疑った。
強引に連れ去り無理やりイレーナの純潔を奪った男のー。
「俺よりも重症の騎士を先に姫巫女にみせる」
「一番重症なのはあなたのはずですがー」
重症ー? オーランが?
なぜかイレーナの鼓動がどくんと跳ねた。
オーランの体躯は逞しく、とても病を患ってるようには見えなかった。
「国王様っ!? 大丈夫ですか?」
ふいにユーグの声が切羽詰まったものに変わり、イレーナは思わず顔をのぞかせた。
「……!?」
オーランがその場に倒れそうになっていて、ユーグが大きな体を支えていた。
「っ、大丈夫、だ。執務室に、連れて行ってくれ」
顔色はここからでは見ることはできないけれど、いつも凛としたよく響く声ではなく息切れをしていて、ひどく苦しそうだった。
思わず足が出そうになってイレーナは踏みとどまる。
「いいえ。このまま、姫巫女のところへ行きましょう」
「ユーグ!!」
その場が凍りつくような凄みのある声が静かな庭園に響いた。
イレーナもユーグもその迫力に気圧され、身動きができなかった。
「頼む。執務室へ……連れて行ってくれー」
「……分かりましたー」
腑に落ちない声で承諾したユーグは、歩くのもままならないオーランを支え、戻って行った。
イレーナは混乱していた。イレーナを攫ったのはオーランの意志に背くことだったのだろうか。
オーランは戦で負傷した騎士を診てほしいと言っていた。
だけど本当はオーラン自身が病にかかっていて、国が国王を助けるためにイレーナを攫ったー?
「くしゅん」
長いこと夜風にあたっていて、すっかり体は冷えてしまった。
イレーナは複雑な思いのまま、重い足取りで自室に戻る。
今夜、オーランが自室に来ることはなかった。
オーランは特に何かするわけでもなく、イレーナを自由にさせていた。
姫巫女の力を使えと、強要されることもない。
国王だからか政務に忙しく昼間はほとんどいない。
夜、時間があればイレーナの寝室にやってきてイレーナを抱く。
イレーナは完全にオーランの慰みものとして扱われていた。
オーランに抱かれた次の日は体が重く、一日中ベッドから起き上がることができなかった。
城内と庭を自由に散歩できる許可が下りていて、イレーナは調子がいいときと、オーランがいないときはよく庭に出ていた。
「姫巫女様、どちらへ?」
「庭を散歩してくるわ」
「お気をつけて」
イレーナ専属の侍女、メアリに告げて広い庭に出た。
城内の至るところに騎士がいて、門にも騎士が常時待機している。
世間知らずなイレーナでもこの城内から逃げられないことは分かっていた。
だからオーランも自由にさせているのだろう。
広い庭に出ると綺麗に整えられた芝が一面に広がり、庭の中央には大きな噴水が設置されていた。
ふと空を見上げれば雲一つない夜空に大きな満月と星々が一面に輝いていて、思わずうっとりする。
「綺麗……」
イフラー国の神殿からみた星と同じだ。母国を思い出し、イレーナは胸が締め付けられた。
オーランの考えていることが分からなかった。
ただイレーナを慰みものにするためだけに攫ったのだろうか?
それだけのために戦まで仕掛けるはずがない。
「国王様! お待ちください!!」
人の声が聴こえてイレーナは慌てて木の陰に隠れた。
「うるさいぞ。ユーグ」
オーランといつも一緒にいる男が回廊から外へと出てくる。
イレーナのすぐ近くまで来て足を止めた。
イレーナは身を潜めつつ二人の会話に聞き耳をたてる。
「どうしてすぐに姫巫女の力を使わないのですか? 何のために姫巫女を連れ去ったと」
「俺は反対していた」
ーえ?
オーランの言葉にイレーナは目を丸くする。
「まだおっしゃってるんですか? 議会で決定したことでしょう。どうして躊躇っておられるんですか?」
「ー身勝手に連れてこられた姫巫女の気持ちを思うと、な」
本当にあのオーランの言葉なのだろうか。イレーナは耳を疑った。
強引に連れ去り無理やりイレーナの純潔を奪った男のー。
「俺よりも重症の騎士を先に姫巫女にみせる」
「一番重症なのはあなたのはずですがー」
重症ー? オーランが?
なぜかイレーナの鼓動がどくんと跳ねた。
オーランの体躯は逞しく、とても病を患ってるようには見えなかった。
「国王様っ!? 大丈夫ですか?」
ふいにユーグの声が切羽詰まったものに変わり、イレーナは思わず顔をのぞかせた。
「……!?」
オーランがその場に倒れそうになっていて、ユーグが大きな体を支えていた。
「っ、大丈夫、だ。執務室に、連れて行ってくれ」
顔色はここからでは見ることはできないけれど、いつも凛としたよく響く声ではなく息切れをしていて、ひどく苦しそうだった。
思わず足が出そうになってイレーナは踏みとどまる。
「いいえ。このまま、姫巫女のところへ行きましょう」
「ユーグ!!」
その場が凍りつくような凄みのある声が静かな庭園に響いた。
イレーナもユーグもその迫力に気圧され、身動きができなかった。
「頼む。執務室へ……連れて行ってくれー」
「……分かりましたー」
腑に落ちない声で承諾したユーグは、歩くのもままならないオーランを支え、戻って行った。
イレーナは混乱していた。イレーナを攫ったのはオーランの意志に背くことだったのだろうか。
オーランは戦で負傷した騎士を診てほしいと言っていた。
だけど本当はオーラン自身が病にかかっていて、国が国王を助けるためにイレーナを攫ったー?
「くしゅん」
長いこと夜風にあたっていて、すっかり体は冷えてしまった。
イレーナは複雑な思いのまま、重い足取りで自室に戻る。
今夜、オーランが自室に来ることはなかった。
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