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第二章
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アイザックは三日ほど滞在して帰国の途についた。
「また何かあればいつでも力になるからな」
「ああ。頼りにしている」
握手を交わしアイザックが馬車に乗り込む寸前、オーランの隣に控えていた
イレーナにそっと声を掛けた。
「君たちの婚姻の知らせを首長ーくして待ってるよ」
「っつ……!!」
オーランに聞こえないような小声で耳打ちし、ウインクまでされる。
にっこりとアイザックは笑い、馬車に乗って去って行った。
「ー何を言われた?」
隣でアイザックが仏頂面を浮かべながら聞いてくる。
「い、いえ。ただ頑張ってと応援をされましたー」
咄嗟にそうごまかしたけれど、オーランには嘘だと見抜かれているだろう。
痛いほどの強い視線を感じてイレーナは押し黙る。
「まあいい。戻るぞ」
オーランはさりげなくイレーナの腰に手を回しす。ぐっと引き寄せられ距離
が縮まり戸惑う。
「オ、オーラン?」
嫌悪感はなく嬉しいと思い始めている自分がいて、慌ててその気持ちに蓋を
した。
*
毒の治療から回復したオーランは、すぐに調査を始めた。
「南国ということはケーロビアがー」
「まだ断言はできませんがその可能性が高いかと」
オーランはため息を吐いて苦渋の顔を浮かべる。
ケーロビアとは古くからいがみ合ってきた国だ。
戦もしたことがあるが当然、ザフラが圧倒的に勝利をし今では配下
に入っている。
「最近は大人しくしていたと思っていたがー」
「やはり姫巫女の存在では?」
ユーグが棘のある口調で意見を述べる。否定をしたかったが、あながち間違
ってはいない。
「問題は誰が今回のことを実行に移したかーだな。外部の人間か自国のスパイ
か」
外部の国の人間は証明書を提示すれば自由に入国できる。
「出かけるぞ」
「ーどちらに?」
「あの宿の亭主に話しをつける」
部屋の外に出ようとしてオーランは足をつまずかせた。
「陛下!!」
ユーグが慌てて倒れそうになった体を支える。
「ー体が熱い。まだ熱があるのでは? そんな体でお出かけなど」
「かまわん」
勢いよくユーグの手を払い姿勢を正す。
「お前は心配しすぎだ。もう少し俺を信用しろ」
「できません。陛下は何も私に話してくれないではないですか」
心配してくれるのはありがたいが、ここまで過保護だと辟易する。
(イレーナも心配していたな)
ユーグ以外の人間に心配されることなどなかったから、正直心が動いた。
今まで体調を崩し心配してくれる者はいたが、それは政治が滞るから心配し
てくれるだけで純粋なものではない。
イレーナは冷たく扱われてもしつこく心配してくる。
はじめて誰かに心配されるのが心地いいと思い、素直に手を差し伸べてみたくなったがすんでの所で踏みとどまった。
イレーナの顔を思い浮かべて慌てて頭を振る。
「陛下? やはりお辛いのでは」
「しつこい。すぐに馬をまわせ」
ぞんざいに振り払い仕事に集中する。余計な思考は勘を鈍らせるだけだ。
馬に跨がりユーグと数人の護衛を連れて宿に出向いた。
「また何かあればいつでも力になるからな」
「ああ。頼りにしている」
握手を交わしアイザックが馬車に乗り込む寸前、オーランの隣に控えていた
イレーナにそっと声を掛けた。
「君たちの婚姻の知らせを首長ーくして待ってるよ」
「っつ……!!」
オーランに聞こえないような小声で耳打ちし、ウインクまでされる。
にっこりとアイザックは笑い、馬車に乗って去って行った。
「ー何を言われた?」
隣でアイザックが仏頂面を浮かべながら聞いてくる。
「い、いえ。ただ頑張ってと応援をされましたー」
咄嗟にそうごまかしたけれど、オーランには嘘だと見抜かれているだろう。
痛いほどの強い視線を感じてイレーナは押し黙る。
「まあいい。戻るぞ」
オーランはさりげなくイレーナの腰に手を回しす。ぐっと引き寄せられ距離
が縮まり戸惑う。
「オ、オーラン?」
嫌悪感はなく嬉しいと思い始めている自分がいて、慌ててその気持ちに蓋を
した。
*
毒の治療から回復したオーランは、すぐに調査を始めた。
「南国ということはケーロビアがー」
「まだ断言はできませんがその可能性が高いかと」
オーランはため息を吐いて苦渋の顔を浮かべる。
ケーロビアとは古くからいがみ合ってきた国だ。
戦もしたことがあるが当然、ザフラが圧倒的に勝利をし今では配下
に入っている。
「最近は大人しくしていたと思っていたがー」
「やはり姫巫女の存在では?」
ユーグが棘のある口調で意見を述べる。否定をしたかったが、あながち間違
ってはいない。
「問題は誰が今回のことを実行に移したかーだな。外部の人間か自国のスパイ
か」
外部の国の人間は証明書を提示すれば自由に入国できる。
「出かけるぞ」
「ーどちらに?」
「あの宿の亭主に話しをつける」
部屋の外に出ようとしてオーランは足をつまずかせた。
「陛下!!」
ユーグが慌てて倒れそうになった体を支える。
「ー体が熱い。まだ熱があるのでは? そんな体でお出かけなど」
「かまわん」
勢いよくユーグの手を払い姿勢を正す。
「お前は心配しすぎだ。もう少し俺を信用しろ」
「できません。陛下は何も私に話してくれないではないですか」
心配してくれるのはありがたいが、ここまで過保護だと辟易する。
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今まで体調を崩し心配してくれる者はいたが、それは政治が滞るから心配し
てくれるだけで純粋なものではない。
イレーナは冷たく扱われてもしつこく心配してくる。
はじめて誰かに心配されるのが心地いいと思い、素直に手を差し伸べてみたくなったがすんでの所で踏みとどまった。
イレーナの顔を思い浮かべて慌てて頭を振る。
「陛下? やはりお辛いのでは」
「しつこい。すぐに馬をまわせ」
ぞんざいに振り払い仕事に集中する。余計な思考は勘を鈍らせるだけだ。
馬に跨がりユーグと数人の護衛を連れて宿に出向いた。
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