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第一章 緊張の初夜 1
一人寝室に取り残されたティアナは呆然としていた。
式での出来事があまりにも強烈過ぎて、今の今まで忘れていた。
一人になり冷静になって、今度は顔を青くする。
これから新婚の夫婦にとって、一大イベントが待っているのだ。
意識すると急に心臓が高鳴る。
(ど、どうしよう、どうすればいいの!?)
困惑し一人、寝台の上でおろおろとする。これから何が行われるのか知らないわけではない。
そのことについても軽い知識程度なら教わったが、とても冷静な状態で迎えられる気分ではなかった。
自然と自分の体を隠すように布団をかぶる。
このまま眠ったふりをしてしまおうかと、どうにかこの状況から逃れられないか思案していたとき。
ガチャリと扉が開く音がして、ティアナは布団の中でびくりと身を竦ませる。
「ーティアナ?」
いきなり低い声音で名前を呼ばれて、どきっとした。
ティアナはそろそろと布団から顔を出す。
「何をしている」
寝台の上で布団にくるまった新妻をみて、エイリスは訝しげな視線を投げかけた。
「す、すみません・・・・・・」
ティアナは咄嗟に謝罪の言葉を口にしていた。コバルトブルーの瞳がティアナをじっと見据える。
エイリスも薄い夜着に着替えていて、逞しい体躯が一層引き締まって見え思わず見惚れてしまった。
「どこか具合でも? 昼間も顔を赤くしていたな」
心配してくれているのだろうか。だとすれば今のティアナは彼に対して失礼な態度をとっていることになる。
「も、申し訳ありません。そうではなくて・・・・・・」
はじめて交わす夫との会話。とはいえティアナは恥ずかしくて夫の顔をまともに見れなかった。
一歩、エイリスが近づく足音がする。コツコツと規則正しい足音がぴたりとティアナのいる寝台の前でとまって、思わず顔を上げる。
エイリスの瞳と視線がかち合ってティアナは息を呑んだ。
しばしの沈黙の後、エイリスが静かに口を開く。
「あなたも望まない結婚に意義を唱えたいのだろう」
「え・・・・・・?」
思いもよらない言葉と、同情の眼差しを向けられてティアナは戸惑った。
この結婚に反対していたわけではない。ただ困惑したままその日を迎えてしまっただけ。
だけど。
エイリスはあなたもーと言った。
(やっぱりモーガン様はこの結婚を望んでなどいなかったのね)
王命で仕方なくといったところだろう。最初からこの結婚に愛などない。
分かっていたことだけれど、改めて本人の口から聞かされると少し胸が痛んだ。
もしかしたら彼には他に好いた女性がいたのかもしれない。
それなのにダリスが無理矢理、王女と結婚をさせた。
沈黙したままのティアナの隣に、エイリスがそっと腰を落として座る。その近い距離にどきっとした。
「モーガン様・・・・・・」
恐る恐る夫となったばかりのエイリスの顔を見上げると、彼はなぜか苦笑をこぼした。
「エイリスと呼べ。腑に落ちないかもしれないが、これもー義務だと思ってすればいい」
義務ー。
またもティアナも胸がちくりと痛んだ。
エイリスなりに落ち込んでいる哀れな妻を励まそうとしているのだろう。
運命とか義務とかそんな言葉で簡単に片付けられるなんて、寂しいと思った。
エイリスはすでに割り切っているのだ。感情もなにもない結婚だと。
式での出来事があまりにも強烈過ぎて、今の今まで忘れていた。
一人になり冷静になって、今度は顔を青くする。
これから新婚の夫婦にとって、一大イベントが待っているのだ。
意識すると急に心臓が高鳴る。
(ど、どうしよう、どうすればいいの!?)
困惑し一人、寝台の上でおろおろとする。これから何が行われるのか知らないわけではない。
そのことについても軽い知識程度なら教わったが、とても冷静な状態で迎えられる気分ではなかった。
自然と自分の体を隠すように布団をかぶる。
このまま眠ったふりをしてしまおうかと、どうにかこの状況から逃れられないか思案していたとき。
ガチャリと扉が開く音がして、ティアナは布団の中でびくりと身を竦ませる。
「ーティアナ?」
いきなり低い声音で名前を呼ばれて、どきっとした。
ティアナはそろそろと布団から顔を出す。
「何をしている」
寝台の上で布団にくるまった新妻をみて、エイリスは訝しげな視線を投げかけた。
「す、すみません・・・・・・」
ティアナは咄嗟に謝罪の言葉を口にしていた。コバルトブルーの瞳がティアナをじっと見据える。
エイリスも薄い夜着に着替えていて、逞しい体躯が一層引き締まって見え思わず見惚れてしまった。
「どこか具合でも? 昼間も顔を赤くしていたな」
心配してくれているのだろうか。だとすれば今のティアナは彼に対して失礼な態度をとっていることになる。
「も、申し訳ありません。そうではなくて・・・・・・」
はじめて交わす夫との会話。とはいえティアナは恥ずかしくて夫の顔をまともに見れなかった。
一歩、エイリスが近づく足音がする。コツコツと規則正しい足音がぴたりとティアナのいる寝台の前でとまって、思わず顔を上げる。
エイリスの瞳と視線がかち合ってティアナは息を呑んだ。
しばしの沈黙の後、エイリスが静かに口を開く。
「あなたも望まない結婚に意義を唱えたいのだろう」
「え・・・・・・?」
思いもよらない言葉と、同情の眼差しを向けられてティアナは戸惑った。
この結婚に反対していたわけではない。ただ困惑したままその日を迎えてしまっただけ。
だけど。
エイリスはあなたもーと言った。
(やっぱりモーガン様はこの結婚を望んでなどいなかったのね)
王命で仕方なくといったところだろう。最初からこの結婚に愛などない。
分かっていたことだけれど、改めて本人の口から聞かされると少し胸が痛んだ。
もしかしたら彼には他に好いた女性がいたのかもしれない。
それなのにダリスが無理矢理、王女と結婚をさせた。
沈黙したままのティアナの隣に、エイリスがそっと腰を落として座る。その近い距離にどきっとした。
「モーガン様・・・・・・」
恐る恐る夫となったばかりのエイリスの顔を見上げると、彼はなぜか苦笑をこぼした。
「エイリスと呼べ。腑に落ちないかもしれないが、これもー義務だと思ってすればいい」
義務ー。
またもティアナも胸がちくりと痛んだ。
エイリスなりに落ち込んでいる哀れな妻を励まそうとしているのだろう。
運命とか義務とかそんな言葉で簡単に片付けられるなんて、寂しいと思った。
エイリスはすでに割り切っているのだ。感情もなにもない結婚だと。
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