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「よかったですね。エイリス様とお出かけできて」
嬉しそうに笑みを浮かべるニーナに、ティアナはどこか不満げに口を尖らせ
た。
「エイリス様、ただ頷いただけだったわ。なんだかどうでもいいような返事だっ
た」
楽しみだと言ってくれたけれど、もっと馬の話しとかしてくれればいいのに
ー。
表情を曇らせるティアナにニーナは優しく諭した。
「仕方ありませんわ。エイリス様は口下手なようですし。ですからこの機会に二
人の親睦を深めればいいのですよ」
「自信ないわ」
いい案だと思ったけれど、エイリスと二人仲良くしている情景が見えてこな
い。
不安な気持ちのまま、あっという間に三日がたった。
エイリスが管理しているという馬小屋にやってくると、エイリスは馬の手入れをしていた。
エイリスの馬は毛並みがよく、目付きや顔立ちがどこか凛々しく見える。
間近で馬をみるとやはり、あの時の出来事が走馬灯のように蘇った。
エイリスは愛しそうに馬を撫でている。
(あんな顔もするんだ)
柔和に笑みを見せながら馬に声を掛ける様子は、普段のエイリスとは違って見
えた。
少し馬に焼きもちを焼いてしまう。
いつまでも遠目で見ていて近寄ってこないティアナに、エイリスが不思議そう
に声を掛けてきた。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「え、いえ! 大丈夫です」
ティアナは慌てて頭をふり否定した。
「それならいい。準備が出来たぞ」
「え、ええ」
恐る恐るティアナは馬に近づくと、馬と目が合い思わず後退りしてしまう。
馬は特に気にする様子もなく前を向いた。
(どうしよう。やっぱり怖い)
自分から乗馬に誘っておいて、今さらやめるとは言い難い。
馬に乗れないことは事前に伝えてあったが、怖い思いをしたことは言っていな
い。
エイリスに支えられながら馬に乗ろうとするけれど、どうしても体が強ばって
しまう。
そんなティアナの様子を見て察したエイリスに聞かれた。
「もしかして馬が怖いのか?」
ティアナはこくりと頷いて謝った。
「ごめんなさい。黙ってて……」
罰が悪くて顔向けができない。俯くティアナにエイリスはそっと頭を撫で
た。
「謝ることはない。俺こそ気づいてやれなくてすまなかった」
逆にエイリスに謝られ、ティアナはますます恐縮する。
「小さい頃、馬に乗せてもらったことがあるんです。そのときの馬がいきなり暴
れ出してー」
「そうか。それは怖い思いをしたな。それなのになぜ乗馬に行こうと?」
尤もな疑問を投げかけられて、ティアナは恥ずかしく思いながらも答えた。
「エイリス様が乗馬がお好きなので、乗馬なら一緒に出かけることができるかと
……」
赤面して下を向くティアナに、エイリスは驚いた顔を見せる。
「ー俺と出かけたかったのか?」
「はい。エイリス様ともっと仲良くなりたくてー」
正直に自分の気持ちを伝えると、エイリスはますます驚愕した。
「すまない。君の気持ちに気づいてやれなくて」
罰の悪そうな顔をするエイリスに、ティアナは慌てて頭を振る。
「謝らないでください。私こそ迷惑掛けてごめんなさい」
なんだか気まずい空気になってしまい、二人とも黙り込んでしまう。
「こいつは俺に対して絶対の信頼関係を築いている。俺が乗っている間は決して
暴れたりしない。それは君が一緒に乗っても同じことだ」
馬を愛しそうに撫でながらエイリスは真剣な眼差しで言った。
「もし、万が一にも暴れるようなことがあれば俺は全力で君を護ると誓う」
「エイリス様ー」
エイリスの力強い言葉にティアナはドキッとする。
「それでも無理なら遠慮なく言ってくれ」
どうする?と視線で投げかけられ、ティアナは大丈夫ですと答えた。
エイリスの言葉に、さっきまであった恐怖心が薄らいでいった。
もちろん完全に消えたわけではないけれど、エイリスと一緒なら大丈夫という
強い確信がある。
「ーいいのか?」
再度念を押され、ティアナはもう一度しっかりと頷いた。
嬉しそうに笑みを浮かべるニーナに、ティアナはどこか不満げに口を尖らせ
た。
「エイリス様、ただ頷いただけだったわ。なんだかどうでもいいような返事だっ
た」
楽しみだと言ってくれたけれど、もっと馬の話しとかしてくれればいいのに
ー。
表情を曇らせるティアナにニーナは優しく諭した。
「仕方ありませんわ。エイリス様は口下手なようですし。ですからこの機会に二
人の親睦を深めればいいのですよ」
「自信ないわ」
いい案だと思ったけれど、エイリスと二人仲良くしている情景が見えてこな
い。
不安な気持ちのまま、あっという間に三日がたった。
エイリスが管理しているという馬小屋にやってくると、エイリスは馬の手入れをしていた。
エイリスの馬は毛並みがよく、目付きや顔立ちがどこか凛々しく見える。
間近で馬をみるとやはり、あの時の出来事が走馬灯のように蘇った。
エイリスは愛しそうに馬を撫でている。
(あんな顔もするんだ)
柔和に笑みを見せながら馬に声を掛ける様子は、普段のエイリスとは違って見
えた。
少し馬に焼きもちを焼いてしまう。
いつまでも遠目で見ていて近寄ってこないティアナに、エイリスが不思議そう
に声を掛けてきた。
「どうした? 気分でも悪いのか?」
「え、いえ! 大丈夫です」
ティアナは慌てて頭をふり否定した。
「それならいい。準備が出来たぞ」
「え、ええ」
恐る恐るティアナは馬に近づくと、馬と目が合い思わず後退りしてしまう。
馬は特に気にする様子もなく前を向いた。
(どうしよう。やっぱり怖い)
自分から乗馬に誘っておいて、今さらやめるとは言い難い。
馬に乗れないことは事前に伝えてあったが、怖い思いをしたことは言っていな
い。
エイリスに支えられながら馬に乗ろうとするけれど、どうしても体が強ばって
しまう。
そんなティアナの様子を見て察したエイリスに聞かれた。
「もしかして馬が怖いのか?」
ティアナはこくりと頷いて謝った。
「ごめんなさい。黙ってて……」
罰が悪くて顔向けができない。俯くティアナにエイリスはそっと頭を撫で
た。
「謝ることはない。俺こそ気づいてやれなくてすまなかった」
逆にエイリスに謝られ、ティアナはますます恐縮する。
「小さい頃、馬に乗せてもらったことがあるんです。そのときの馬がいきなり暴
れ出してー」
「そうか。それは怖い思いをしたな。それなのになぜ乗馬に行こうと?」
尤もな疑問を投げかけられて、ティアナは恥ずかしく思いながらも答えた。
「エイリス様が乗馬がお好きなので、乗馬なら一緒に出かけることができるかと
……」
赤面して下を向くティアナに、エイリスは驚いた顔を見せる。
「ー俺と出かけたかったのか?」
「はい。エイリス様ともっと仲良くなりたくてー」
正直に自分の気持ちを伝えると、エイリスはますます驚愕した。
「すまない。君の気持ちに気づいてやれなくて」
罰の悪そうな顔をするエイリスに、ティアナは慌てて頭を振る。
「謝らないでください。私こそ迷惑掛けてごめんなさい」
なんだか気まずい空気になってしまい、二人とも黙り込んでしまう。
「こいつは俺に対して絶対の信頼関係を築いている。俺が乗っている間は決して
暴れたりしない。それは君が一緒に乗っても同じことだ」
馬を愛しそうに撫でながらエイリスは真剣な眼差しで言った。
「もし、万が一にも暴れるようなことがあれば俺は全力で君を護ると誓う」
「エイリス様ー」
エイリスの力強い言葉にティアナはドキッとする。
「それでも無理なら遠慮なく言ってくれ」
どうする?と視線で投げかけられ、ティアナは大丈夫ですと答えた。
エイリスの言葉に、さっきまであった恐怖心が薄らいでいった。
もちろん完全に消えたわけではないけれど、エイリスと一緒なら大丈夫という
強い確信がある。
「ーいいのか?」
再度念を押され、ティアナはもう一度しっかりと頷いた。
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