【完結】堅物騎士様は若奥様に溺愛中!

くみ

文字の大きさ
16 / 44

2

 風邪も治りティアナはすっかり元気になった。


 一緒に乗馬してから二人の間には確実に変化が起きた。


 一番変わったのはエイリスの態度だ。


 エイリスは時間がある時は必ず側にいてくれるようになった。


 今朝もティアナが少しつまづいて転びそうになっただけで慌てて、こちらが気後れするくらい心配していた。


「なんだか私が側にいては申し訳ないですね」


 二人の微笑ましいやり取りに、ニーナは笑みを零す。


「もう、ニーナったら……」


 からかわないでよと口を尖らせるも、自然と頬は緩んでしまう。


「エイリス様がお戻りになりました」


 警護のブレッドに声を掛けられてティアナは急いで出迎える。


「お帰りなさい」


「ああ、ただいま」


 出迎えの挨拶も今まではそっけなかったけれど、今は照れながらも笑みをみせてくれる。


「少し話がある。夕食のときにでも話す」


「何の話ですか?」


 改まって言われて少しどきっとする。もしかして何かあったのだろうか。


 不安な表情を浮かべるティアナにエイリスは苦笑した。


「悪い知らせは何もないから安心しろ」


「よかった……」


 エイリスの言葉にほっと胸をなで下ろす。


 先のことばかり気にしないと思っていても、やっぱり心の中では常に不安は付き纏っている。


 とにかく今は国の情勢が悪くならないことを祈るばかりだ。


(今、エイリス様と離ればなれになったらー)


 俯いたまま考え込んでいると、いきなりエイリスに顎を持ち上げられた。


 間近に迫るエイリスにティアナは目を大きく見開かせる。


「エ、エイリス様……?」


 コバルトブルーの瞳が真っ直ぐにティアナを見据える。


 ドキドキして心臓が止まるかと思った刹那。


「っつ……!」


 いきなり唇を押しつけられてティアナはさらに目を見開かせた。


「んっ……」


 不意打ちに舌を入れられて、突然のことに肩を震わす。


 久しぶりのキスにティアナの身体は一瞬で火照った。


 角度を変えて何度も唇を奪われ、頭の中が真っ白になって力が入らない。


 ガクッと膝から力が抜けて崩れ落ちそうになったところで、エイリスに支えられる。


「今夜は一緒に寝よう」


 耳元で低く甘い声音で囁かれて、ティアナは顔から火が出そうになった。


 夕食時、まだドキドキしているティアナとは反対にエイリスは平然としていた。


「ティアナ様? 顔が赤いようですけれど大丈夫ですか?」


 事情を知らないニーナに心配されて、ティアナは咳払いをする。


「だ、大丈夫よ。そ、それよりエイリス様。お話というのは?」


 話題を逸らそうとエイリスに話を振ると、彼はめずらしく声を出して笑った。


 なんだか面白くなくてティアナはむう、と頬を膨らませる。


「すまない。実は俺の親友のギルドが一緒に食事をしたいと言っていてな」


「エイリス様の親友ですか? 会ってみたいです」


「まだ日にちは決まってないから、また決まったら教える」


「どんな方なんですか?」


「他の男に興味があるのか?」


 今度はエイリスがムスッとしてティアナは面食らう。


「それはエイリス様の親友ですもの。どんな方なのか興味あります」


 エイリスが普段どんな人と一緒にいるのか知りたい。


 ただ純粋にそう思っているのに、なぜかエイリスは不機嫌になってしまった。


「やはり会わせるのをやめるか……」


「え?」


 ポツリと呟いた言葉が聞き取れなくて、聞き返すとエイリスは何でもないと頭を振った。

 


 
感想 1

あなたにおすすめの小説

助けた騎士団になつかれました。

藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。 しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。 一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。 ☆本編完結しました。ありがとうございました!☆ 番外編①~2020.03.11 終了

行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。 夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。 形のない愛は信じない。 でも、出来立ての肉は信じてしまう。 肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。 これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

碧眼の小鳥は騎士団長に愛される

狭山雪菜
恋愛
アリカ・シュワルツは、この春社交界デビューを果たした18歳のシュワルツ公爵家の長女だ。 社交会デビューの時に知り合ったユルア・ムーゲル公爵令嬢のお茶会で仮面舞踏会に誘われ、参加する事に決めた。 しかし、そこで会ったのは…? 全編甘々を目指してます。 この作品は「アルファポリス」にも掲載しております。

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

【完結】女当主は義弟の手で花開く

はるみさ
恋愛
シャノンは若干25歳でありながら、プレスコット伯爵家の女当主。男勝りな彼女は、由緒ある伯爵家の当主として男性と互角に渡り合っていた。しかし、そんな彼女には結婚という大きな悩みが。伯爵家の血筋を残すためにも結婚しなくてはと思うが、全く相手が見つからない。途方に暮れていたその時……「義姉さん、それ僕でいいんじゃない?」昔拾ってあげた血の繋がりのない美しく成長した義弟からまさかの提案……!? 恋に臆病な姉と、一途に義姉を想い続けてきた義弟の大人の恋物語。 ※他サイトにも掲載しています。

婚約破棄された令嬢は騎士団長に溺愛される

狭山雪菜
恋愛
マリアは学園卒業後の社交場で、王太子から婚約破棄を言い渡されるがそもそも婚約者候補であり、まだ正式な婚約者じゃなかった 公の場で婚約破棄されたマリアは縁談の話が来なくなり、このままじゃ一生独身と落ち込む すると、友人のエリカが気分転換に騎士団員への慰労会へ誘ってくれて… 全編甘々を目指しています。 この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。