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第Ⅰ章 明暗分かれる姉妹 ~The Doppelgangers~
#15 闇の逃避行 その2
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「有り得ません。栄耀教会の魔力鑑定で、私の魔力は皆無と言われましたから……」
「それこそ有り得ない。魔力はあらゆる生物が保有するエネルギー、故に皆無ということは無い。鑑定が杜撰だったか、でなければ嘘を言われたんだろう」
「いえ、本当に皆無なのです。その証拠に鑑定水晶は微弱な反応も示しませんでした。だからこそ私は『聖女』とは見做されず命を狙われて、気付いた時にはあの墓所に──」
すると突然、ダスクが耳を疑ったようにハッとして、
「待て……今、何て言った? 『聖女』と言ったのか……!?」
今までで一番険しい顔付きで、ダスクが私の肩を掴んで詰め寄る。
「本当に『招聖の儀』で『聖女』が召喚されたのか? 『邪神の息吹』はどうなった……!?」
「いえ、その……」
何故こんなにも真剣になって訊き出そうとするのか分からず、その気迫に圧されてしまって上手く言葉が出ない。
「おい、敵が居たぞ! こっちだ!」
話を遮るように、また新手の聖騎士が出て来た。
「……話は後だ。逃げるぞ」
この大聖堂から脱出しなくては、私にもダスクにも明日は訪れない。
そして、明日へ続く道を行かせまいと、前方に立ちはだかる白い甲冑たち。
「そこまでだ」
待ち構えていたのは、テルサやラモン教皇に命じられて私を別室に移し、あの客室で襲って来た者たちの指揮官、聖騎士団長ゼルレーク。
隣にはラウルやザッキスも居り、先程蹴られた体の痛みがまた疼き出した。
「気を付けて下さい。あの人、私を襲った聖騎士団長です……」
「らしいな。今までの三下とは圧が違う」
ダスクが警戒している所を見ると、腕の方も確かなのだろう。
「そこの貴様、ヴァンパイアだな?」
「だったら何だ」
害虫でも見るかのような、怒りと嫌悪が入り混じった強烈な眼差しがダスクへ向けられていた。
日神サウルを信奉する栄耀教会、その剣であり盾でもある聖騎士にとって、闇に息衝き人を喰らうアンデッドは不倶戴天の敵であり、それがこの神聖な総本山に居ること自体、彼らにとっては許し難いのだろう。
「それにしても、大罪人とヴァンパイアのカップルとは……いやはや、実にお似合いだね」
ザッキスが相変わらずの嘲笑を披露する。
「大罪人? ……君は何か罪を犯したのか?」
「……いいえ。この世界に来てからは、何も……」
「この世界?」
罪人であることは否定できないし、前の世界でも非難されてきた。
「覚悟せよ、邪悪なる者共。我ら聖騎士団が浄滅してくれる……!」
「覚悟を決めるのはお前たちの方だ。血を吸い尽くされて搾りカスになる覚悟をな」
ここまでに見てきたダスクの力ならば彼ら全員を始末することも可能だとは思うが、今度ばかりは楽勝とはいかない様子だ。
「如何に罪人とアンデッドが相手とは言え、大勢で囲み殺しては聖騎士の名折れ。このゼルレーク・ブリル・エーゲリッヒが直々に、一対一で相手をしよう」
「そう言って俺とカグヤを引き離し、まず彼女を先に仕留めようという腹積もりだろう? そんな見え透いた手に乗るほど俺も馬鹿じゃない」
「案ずるな、決してそのような卑劣な真似はしない。我々としてもこれ以上、同志を失いたくはないのでな」
ここに来るまでにダスクが倒した聖騎士は、両手の指の数を優に超えている。
大聖堂の警備を担当していたのだから、それなりに優秀な者たちだったと思われ、それを失うのは聖騎士団にとって大きな損失ということなのだろう。
「その言葉、サウル神に誓えるのか?」
「貴様如きが神の御名を口にするか! 身の程を弁えろ!」
途端にザッキスが吼えるが、ゼルレーク聖騎士団長はそれを手で制し、
「良かろう。私と貴様の一対一、正々堂々と決着を付ける。誰にも手出しは許さないと、神の御名に誓おうではないか」
堂々と宣言するゼルレーク聖騎士団長に対し、
「なら俺が勝ったその時は、俺達の脱出を邪魔しないで貰おう」
「いいだろう。この島を出るまでは、だが」
ダスクの強さを知っていて一対一の決闘を申し込むのだから、余程の自信があるのだろう。
ゼルレーク聖騎士団長のハンドサインで、彼以外の聖騎士が一斉に武器を下げて構えを解いた。
流石は団長、見事な統率だ。
ダスクとゼルレーク聖騎士団長が進み出て対峙する。
「──推して参る」
一足飛びにゼルレーク聖騎士団長が斬り掛かる。
魔法で身体能力を増強させているのか、聖甲冑の方にそうした機能があるのか、或いはその両方か、ゼルレーク聖騎士団長の動きはダスクと比べても見劣りしないものだった。
「成程、団長の肩書きは伊達ではないらしいな」
しかし、ゼルレーク聖騎士団長の超人的な攻撃にもダスクは動じず、彼の斬撃に合わせて剣を振るう。
剣に込められた魔力がぶつかり合い、凄絶な波動が拡散する。
ヴァンパイア相手に剣技では不利と思ったのか、ゼルレーク聖騎士団長がダスクへ左の掌を向けた。
「『紫陽の閃光花』」
何が起きるか分かったのだろう、ダスクが横に飛び退いて距離を置いた直後、ゼルレーク聖騎士団長の手から紫の輝きが放射された。
「ダスクさん、今の魔法は……!?」
「太陽光と同じ効果を持つ、対アンデッドの光属性魔法だ。浴びればこうなる」
躱し切れなかったダスクの側頭部が、まるで灼けた鉄棒でも当てられたように爛れていた。
色と効果から推測するに、今の『紫陽の閃光花』とやらの正体は紫外線と思われる。
「それこそ有り得ない。魔力はあらゆる生物が保有するエネルギー、故に皆無ということは無い。鑑定が杜撰だったか、でなければ嘘を言われたんだろう」
「いえ、本当に皆無なのです。その証拠に鑑定水晶は微弱な反応も示しませんでした。だからこそ私は『聖女』とは見做されず命を狙われて、気付いた時にはあの墓所に──」
すると突然、ダスクが耳を疑ったようにハッとして、
「待て……今、何て言った? 『聖女』と言ったのか……!?」
今までで一番険しい顔付きで、ダスクが私の肩を掴んで詰め寄る。
「本当に『招聖の儀』で『聖女』が召喚されたのか? 『邪神の息吹』はどうなった……!?」
「いえ、その……」
何故こんなにも真剣になって訊き出そうとするのか分からず、その気迫に圧されてしまって上手く言葉が出ない。
「おい、敵が居たぞ! こっちだ!」
話を遮るように、また新手の聖騎士が出て来た。
「……話は後だ。逃げるぞ」
この大聖堂から脱出しなくては、私にもダスクにも明日は訪れない。
そして、明日へ続く道を行かせまいと、前方に立ちはだかる白い甲冑たち。
「そこまでだ」
待ち構えていたのは、テルサやラモン教皇に命じられて私を別室に移し、あの客室で襲って来た者たちの指揮官、聖騎士団長ゼルレーク。
隣にはラウルやザッキスも居り、先程蹴られた体の痛みがまた疼き出した。
「気を付けて下さい。あの人、私を襲った聖騎士団長です……」
「らしいな。今までの三下とは圧が違う」
ダスクが警戒している所を見ると、腕の方も確かなのだろう。
「そこの貴様、ヴァンパイアだな?」
「だったら何だ」
害虫でも見るかのような、怒りと嫌悪が入り混じった強烈な眼差しがダスクへ向けられていた。
日神サウルを信奉する栄耀教会、その剣であり盾でもある聖騎士にとって、闇に息衝き人を喰らうアンデッドは不倶戴天の敵であり、それがこの神聖な総本山に居ること自体、彼らにとっては許し難いのだろう。
「それにしても、大罪人とヴァンパイアのカップルとは……いやはや、実にお似合いだね」
ザッキスが相変わらずの嘲笑を披露する。
「大罪人? ……君は何か罪を犯したのか?」
「……いいえ。この世界に来てからは、何も……」
「この世界?」
罪人であることは否定できないし、前の世界でも非難されてきた。
「覚悟せよ、邪悪なる者共。我ら聖騎士団が浄滅してくれる……!」
「覚悟を決めるのはお前たちの方だ。血を吸い尽くされて搾りカスになる覚悟をな」
ここまでに見てきたダスクの力ならば彼ら全員を始末することも可能だとは思うが、今度ばかりは楽勝とはいかない様子だ。
「如何に罪人とアンデッドが相手とは言え、大勢で囲み殺しては聖騎士の名折れ。このゼルレーク・ブリル・エーゲリッヒが直々に、一対一で相手をしよう」
「そう言って俺とカグヤを引き離し、まず彼女を先に仕留めようという腹積もりだろう? そんな見え透いた手に乗るほど俺も馬鹿じゃない」
「案ずるな、決してそのような卑劣な真似はしない。我々としてもこれ以上、同志を失いたくはないのでな」
ここに来るまでにダスクが倒した聖騎士は、両手の指の数を優に超えている。
大聖堂の警備を担当していたのだから、それなりに優秀な者たちだったと思われ、それを失うのは聖騎士団にとって大きな損失ということなのだろう。
「その言葉、サウル神に誓えるのか?」
「貴様如きが神の御名を口にするか! 身の程を弁えろ!」
途端にザッキスが吼えるが、ゼルレーク聖騎士団長はそれを手で制し、
「良かろう。私と貴様の一対一、正々堂々と決着を付ける。誰にも手出しは許さないと、神の御名に誓おうではないか」
堂々と宣言するゼルレーク聖騎士団長に対し、
「なら俺が勝ったその時は、俺達の脱出を邪魔しないで貰おう」
「いいだろう。この島を出るまでは、だが」
ダスクの強さを知っていて一対一の決闘を申し込むのだから、余程の自信があるのだろう。
ゼルレーク聖騎士団長のハンドサインで、彼以外の聖騎士が一斉に武器を下げて構えを解いた。
流石は団長、見事な統率だ。
ダスクとゼルレーク聖騎士団長が進み出て対峙する。
「──推して参る」
一足飛びにゼルレーク聖騎士団長が斬り掛かる。
魔法で身体能力を増強させているのか、聖甲冑の方にそうした機能があるのか、或いはその両方か、ゼルレーク聖騎士団長の動きはダスクと比べても見劣りしないものだった。
「成程、団長の肩書きは伊達ではないらしいな」
しかし、ゼルレーク聖騎士団長の超人的な攻撃にもダスクは動じず、彼の斬撃に合わせて剣を振るう。
剣に込められた魔力がぶつかり合い、凄絶な波動が拡散する。
ヴァンパイア相手に剣技では不利と思ったのか、ゼルレーク聖騎士団長がダスクへ左の掌を向けた。
「『紫陽の閃光花』」
何が起きるか分かったのだろう、ダスクが横に飛び退いて距離を置いた直後、ゼルレーク聖騎士団長の手から紫の輝きが放射された。
「ダスクさん、今の魔法は……!?」
「太陽光と同じ効果を持つ、対アンデッドの光属性魔法だ。浴びればこうなる」
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