白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 デスクに到着した後、デジタルフォトフレームをセットした。夏樹の写真を眺めて癒やされるために。アルバムから選択したのは、”学食ビデオ通話”だ。編集して画像に取り込んだ。本人には内緒だ。

(……夏樹と友達、ステージ、アン、不機嫌な夏樹。これにしよう)

 10時からワタベ電機と会議が予定されている。業務提携を結んでから一年近く経った。お互いの業績は協調であり、成功したといえる。タッグを組む相手で市場は変化する。一番の立役者は早瀬だ。その本人がそばに来た。

「おはようございます。今日のアルバムは?」
「学食での夏樹だ」
「ははははー。相変わらずだね」
「……人のことは言えないだろう」
「言っていないだろ。俺も悠人の写真を眺めている」
「……堂々と眺めすぎだ」
「収録スタジオに迎えに行くけど、夏樹君も送り届けようか?」
「今日は迎えに行ける。ありがとう」

 なるべく夏樹の迎えに行っている。家の中でも一人にしたくないからだ。門の辺りを徘徊している人間がいるのは変わりない。俺が留守の時間に限ってだ。体調の面でも不安要素がある。

「もう一つ、耳に入れておきたい話がある」
「どうしたんだ?」
「早瀬家の祖父からの希望だ。俺と二葉さんとの縁談を申し込みたいそうだ」
「諦めていなかったのか?」
「ああ。さっき電話がかかってきた。突っぱねたけど、圭一さんに連絡を寄こすはずだ。社長にはストレートに電話しない。できない」
「娘だと知っているからか……」

 二葉が黒崎隆の娘だと公表していない。元妻と再婚相手との娘であり、O大志望のために都内に引っ越してきたと周りには伝えてある。このグループで勤務することは、社内で知らせていない。隠すことでもないが、話が広まりすぎいている。

「俺の秘書に配属するのは避けた方がよくないか?彼女からすると迷惑な話だ」
「悠人君が嫌がるか……」
「すでに話してある。俺よりも彼女の方を心配しているよ」
「二葉に好きな相手ができたと聞いたぞ。知っているか?」
「悠人から聞いた。如月君のことだ」
「……二葉は男を嫌っている。付き合うことはしないはずだ」
「……やっぱりそうか」

 家庭環境のせいなのか、二葉は男女の両方を避けている。夏樹とは違う意味での、人嫌いの一面を持っている。この企業に入るなら、本人に聞いておきたいことだ。表面上では男女平等を謳っていても、この内部では見えない出世の壁がいたるところに存在している。二葉に縁談が来る可能性はある。それを本人がどう受け取るかだ。

「親父に連絡を入れる。待ってもらえるか?」
「もちろんだよ」
「……常務の黒崎です。社長は10時に出社ですか。ありがとう」

 父のプライベートの番号へかけたが、留守電に切り替わった。縁談の件を帰ってから聞くとしよう。大笑いをして終わりだろう。モデルスクールのスポンサー企業が千尋製菓だ。これが二葉につながったのか。失敗したとは受け取らない。

「お前の家はしつこいだろう?」
「評判どおりだよ。俺もそうだから。親父はじっくり話を聞くタイプだ。……夏樹君の件はどうなった?」
「相談しようと思っていた。飲みに行かないか?家では話したくない」
「もちろんいいよ。初めてじゃない?俺たち……」
「デキている既成事実も作るか?」
「やっぱり行かない……」

 父は夏樹のことを可愛がっている。ステージに立てなくなった時に、別の道を歩かせる準備をしている。それが黒崎製菓グループでの仕事だ。俺も同じことを考えていた。
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