20 / 265
3-7
しおりを挟む
いよいよ収録が始まった。スタッフの指示通りの位置に立った。グーンと音を立てて、数台のカメラが動いている。自分の鼓動も耳元まで響いてきた。
今回出演する番組は、音楽専門のチャンネルの”ウエストイースト”だ。今話題のミュージシャンのステージとトークをやっている。10月から始まった新しい番組だ。ゲストはロックバンド、R&Bなどジャンルが固定されていないそうだ。
「ナツキさん。ユートさん。佐久弥さんと並んでくださーーい」
出演者はヴィジブルレイだけではない。R&Bの歌手の羽音さんと、心のドアを歌った歌手の勅使河原さんがゲストだ。まさか共演できるなんてと、ここに到着した時から浮足立っている。羽音さんは真羽の従兄弟だ。バンドコンテストの時に会いに来てくれた。まさか共演が叶うなんて思っていなかった。
羽音さんは勅使河原さんのようなハイトーンボイスの歌声をしているが、全く印象が違う。勅使河原さんが落ち着いたヴァイオリンの音色だとしたら、羽音さんはオーケストラの華やかな演奏だ。今回は二人のコラボをスタジオで聴かせてもらえる。
スタジオ入りした時に勅使河原さんに挨拶に行くと、フレンドリーに接してもらえた。佐久弥とも交流があるという。年齢は49歳。歌手歴は30年の大先輩だ。羽音さんはまだ到着していない。コラボ前に挨拶しようと決めた。
ガーーーー。
カメラが回りだした時、悠人もブルブル震えだした。どうしたのだろう?もう収録が始まっているのに。トイレだろうか。
「ゆうとー、トイレに行きたいんだろ?声をかけてあげるよ」
「なつきー、違うよー」
「我慢は良くないよ。落ち着いていられないだろ?」
「怖いんだよー」
「ええええ?」
さっきまで大人びた感じだったのに。見栄を張っていたのかな?なんせクールな男を目指しているのだから。せめて肩を寄せ合おう。並んで立っているから違和感はないはずだ。革のジャケット越しに、お互いの存在を感じた。
だんだんと悠人の震えが小さくなり、自分の心も落ち着いた。佐久弥からは何も言われなかった。一つだけ分かったのは、仕事モードに切り替わっていることだ。
(仕事なんだ。プロなんだ。自分だって同じだ……)
「夏樹、悠人、こっちへ移動するぞー」
「はーーい」
司会者が座っているコーナーに移動した。緊張しながらも歌うことが楽しいこと、楽曲で楽しんでもらいたい箇所を語った。伝わるといいなと思いながら。悠人は、さっそく笑いを取っていた。本人はそのつもりはないのに。ひいいいいっという、お馴染みのフレーズにより、大爆笑が起こった。
「ヴィジブルレイさん、ステージ収録に移りますーー!」
「はい、了解しましたーー」
今度は、いよいよ、ステージをつとめる。観客はカメラとスタッフだ。ライブとは違う感じでやる必要がありそうだ。そのままでいいぞ、とは言われている。
ポジショニングの確認、マイクやイヤモニを取り付ける音声スタッフ、もう一度、ヘアメイクを施された。バタバタしているのにスムーズな動きだ。このステージが終われば仕事も終わりだ。この後は、勅使河原さん達のコラボステージ収録だ。
「スターーート。いきまーーす!」
なんと、植本さんと布川さんが見学している。佐久弥が文句を言っていた。プレッシャーでガチガチになるだろう?と。その発言に対して、スタジオ内に笑いが起こった。そのおかげで緊張感が和らいだ。そして、バンド演奏しか聴こえなくなり、普段通りに歌声を上げることができた。
おーーーー!
「……you life will pass…… you life will pass……ray of light!……angel of ーー!」
パチパチパチパチ!
スタジオ内から拍手が起こった。植本さんと布川さんからガッツポーズを貰えて胸がいっぱいになった時、その後ろの方に勅使河原さんがいるのを見つけた。拍手をもらっている。
信じられない心地のままで歌い終えた。高揚感と放心状態が同時に起こって、収録が終わったのに動けなくなった。悠人が俺の左側に立ち、ずるずると引きずられるようにしてサイドに戻った。
今回出演する番組は、音楽専門のチャンネルの”ウエストイースト”だ。今話題のミュージシャンのステージとトークをやっている。10月から始まった新しい番組だ。ゲストはロックバンド、R&Bなどジャンルが固定されていないそうだ。
「ナツキさん。ユートさん。佐久弥さんと並んでくださーーい」
出演者はヴィジブルレイだけではない。R&Bの歌手の羽音さんと、心のドアを歌った歌手の勅使河原さんがゲストだ。まさか共演できるなんてと、ここに到着した時から浮足立っている。羽音さんは真羽の従兄弟だ。バンドコンテストの時に会いに来てくれた。まさか共演が叶うなんて思っていなかった。
羽音さんは勅使河原さんのようなハイトーンボイスの歌声をしているが、全く印象が違う。勅使河原さんが落ち着いたヴァイオリンの音色だとしたら、羽音さんはオーケストラの華やかな演奏だ。今回は二人のコラボをスタジオで聴かせてもらえる。
スタジオ入りした時に勅使河原さんに挨拶に行くと、フレンドリーに接してもらえた。佐久弥とも交流があるという。年齢は49歳。歌手歴は30年の大先輩だ。羽音さんはまだ到着していない。コラボ前に挨拶しようと決めた。
ガーーーー。
カメラが回りだした時、悠人もブルブル震えだした。どうしたのだろう?もう収録が始まっているのに。トイレだろうか。
「ゆうとー、トイレに行きたいんだろ?声をかけてあげるよ」
「なつきー、違うよー」
「我慢は良くないよ。落ち着いていられないだろ?」
「怖いんだよー」
「ええええ?」
さっきまで大人びた感じだったのに。見栄を張っていたのかな?なんせクールな男を目指しているのだから。せめて肩を寄せ合おう。並んで立っているから違和感はないはずだ。革のジャケット越しに、お互いの存在を感じた。
だんだんと悠人の震えが小さくなり、自分の心も落ち着いた。佐久弥からは何も言われなかった。一つだけ分かったのは、仕事モードに切り替わっていることだ。
(仕事なんだ。プロなんだ。自分だって同じだ……)
「夏樹、悠人、こっちへ移動するぞー」
「はーーい」
司会者が座っているコーナーに移動した。緊張しながらも歌うことが楽しいこと、楽曲で楽しんでもらいたい箇所を語った。伝わるといいなと思いながら。悠人は、さっそく笑いを取っていた。本人はそのつもりはないのに。ひいいいいっという、お馴染みのフレーズにより、大爆笑が起こった。
「ヴィジブルレイさん、ステージ収録に移りますーー!」
「はい、了解しましたーー」
今度は、いよいよ、ステージをつとめる。観客はカメラとスタッフだ。ライブとは違う感じでやる必要がありそうだ。そのままでいいぞ、とは言われている。
ポジショニングの確認、マイクやイヤモニを取り付ける音声スタッフ、もう一度、ヘアメイクを施された。バタバタしているのにスムーズな動きだ。このステージが終われば仕事も終わりだ。この後は、勅使河原さん達のコラボステージ収録だ。
「スターーート。いきまーーす!」
なんと、植本さんと布川さんが見学している。佐久弥が文句を言っていた。プレッシャーでガチガチになるだろう?と。その発言に対して、スタジオ内に笑いが起こった。そのおかげで緊張感が和らいだ。そして、バンド演奏しか聴こえなくなり、普段通りに歌声を上げることができた。
おーーーー!
「……you life will pass…… you life will pass……ray of light!……angel of ーー!」
パチパチパチパチ!
スタジオ内から拍手が起こった。植本さんと布川さんからガッツポーズを貰えて胸がいっぱいになった時、その後ろの方に勅使河原さんがいるのを見つけた。拍手をもらっている。
信じられない心地のままで歌い終えた。高揚感と放心状態が同時に起こって、収録が終わったのに動けなくなった。悠人が俺の左側に立ち、ずるずると引きずられるようにしてサイドに戻った。
0
あなたにおすすめの小説
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる