49 / 265
5-8
しおりを挟む
リビングに戻ると、佐久弥が悠人のことを苛めていた。まるで兄弟げんかのようで。それを見ているうちに、伊吹のことを思い出した。
「もうーーー」
「ぎゃははは。お堅い考え方だから、選んだポテトが固かったんだぞーー?」
「きいいいっ」
「黒崎さーん。お兄ちゃんに電話しようかな~」
「そうか。伊吹君の誕生日だったな」
すると、周りからの反応が返って来た。クリスマスイヴ生まれだから伊吹なのか?と。きっと狙って付けられた名前だと答えると、一斉に笑いが起こった。伊吹は自分の名前を高校生までは嫌がっていた。今は取引先との会食のネタにしている。
「聡太郎君とゆっくりしてるよね~」
「まだいいだろう。かけてやれ」
「うんっ。あ、お兄ちゃんからだ」
噂をすれば影だ。向こうから掛けてくる時は、99%ロクな話ではない。さっきと思っていることが逆だ。自分にツッコミを入れながら電話に出ると、爽やかな声が聞こえてきた。
「……夏樹。メリークリスマス・イブキ」
「元気そうだね~。ご飯を食べてるからさ。また明日ね!」
「……夏樹。テレビのチャンネルを変えろ。ヴィジブルレイのことが放送されているぞ!お母さんとの感動のシーンと、俺との兄弟愛がクローズアップされている。もちろん録画しているぞ。うひゃひゃひゃーー」
スピーカーから聞こえたのだろう。黒崎がチャンネルを変更し、母に抱きついている俺の姿がアップで映し出された。みんなから笑いが起きている。
「チャンネルを変えてよーーっ」
「変えない」
「変えてってば」
リモコンを奪い取ろうとしたが、反射神経では勝てるはずもない。諦めているうちに番組が進行していき、自分たちの楽曲プロモが流れはじめた。
スマホのスピーカーからは、すすり泣きが聞こえてきた。小さかった子が、体の弱かった子がと言っている。お母さん達が喜んでいるぞ。そんなことを聞かされて、だんだんと視界がぼやけてきた。しかし、すぐに涙が止まった。伊吹の含み笑いが始まったことによって。
「……このおかげでな。株式会社ブロッコリーの業績が好調だ。俺がインタビューに出たことが話題になって、会食でも盛り上がっている。今度ライスシャワーmaxに出るんだろう?お兄ちゃんのことを話してくれ。ちょうど4月から新規事業が……」
「お兄ちゃん。それが言いたかったのかよ?」
「……80%がこの用件だ。コネがいけないのか?何を言っているんだ。物事を円滑に進めるための ”姑息な手段” だ。臆することはないぞ!」
「ご飯を食べているからさ。もう切るよ~」
「……残り20%の話題に移る。そろそろ風邪を引く頃だ。いい民間療法がある」
「ネギを首に巻く方法だよね?去年聞いたよ~。もういいからさ~~」
「……去年は試さなかっただろう?アリシンという成分がいい。疲労回復や殺菌効果、血行促進作用、免疫力を高める。九条ネギがあるだろう。それを使うといい」
「うんうん。九条ネギで試すよ」
「……結果を教えてくれ。お兄ちゃんは風邪を引かないから分からない」
まさか本当に風邪を引いていないのかも知れない。そう心の中で呟いた後、通話を終えた。なんだか佐久弥の目が輝いている。伊吹と気が合いそうだと言うと、みんなが大きく頷いた。
「もうーーー」
「ぎゃははは。お堅い考え方だから、選んだポテトが固かったんだぞーー?」
「きいいいっ」
「黒崎さーん。お兄ちゃんに電話しようかな~」
「そうか。伊吹君の誕生日だったな」
すると、周りからの反応が返って来た。クリスマスイヴ生まれだから伊吹なのか?と。きっと狙って付けられた名前だと答えると、一斉に笑いが起こった。伊吹は自分の名前を高校生までは嫌がっていた。今は取引先との会食のネタにしている。
「聡太郎君とゆっくりしてるよね~」
「まだいいだろう。かけてやれ」
「うんっ。あ、お兄ちゃんからだ」
噂をすれば影だ。向こうから掛けてくる時は、99%ロクな話ではない。さっきと思っていることが逆だ。自分にツッコミを入れながら電話に出ると、爽やかな声が聞こえてきた。
「……夏樹。メリークリスマス・イブキ」
「元気そうだね~。ご飯を食べてるからさ。また明日ね!」
「……夏樹。テレビのチャンネルを変えろ。ヴィジブルレイのことが放送されているぞ!お母さんとの感動のシーンと、俺との兄弟愛がクローズアップされている。もちろん録画しているぞ。うひゃひゃひゃーー」
スピーカーから聞こえたのだろう。黒崎がチャンネルを変更し、母に抱きついている俺の姿がアップで映し出された。みんなから笑いが起きている。
「チャンネルを変えてよーーっ」
「変えない」
「変えてってば」
リモコンを奪い取ろうとしたが、反射神経では勝てるはずもない。諦めているうちに番組が進行していき、自分たちの楽曲プロモが流れはじめた。
スマホのスピーカーからは、すすり泣きが聞こえてきた。小さかった子が、体の弱かった子がと言っている。お母さん達が喜んでいるぞ。そんなことを聞かされて、だんだんと視界がぼやけてきた。しかし、すぐに涙が止まった。伊吹の含み笑いが始まったことによって。
「……このおかげでな。株式会社ブロッコリーの業績が好調だ。俺がインタビューに出たことが話題になって、会食でも盛り上がっている。今度ライスシャワーmaxに出るんだろう?お兄ちゃんのことを話してくれ。ちょうど4月から新規事業が……」
「お兄ちゃん。それが言いたかったのかよ?」
「……80%がこの用件だ。コネがいけないのか?何を言っているんだ。物事を円滑に進めるための ”姑息な手段” だ。臆することはないぞ!」
「ご飯を食べているからさ。もう切るよ~」
「……残り20%の話題に移る。そろそろ風邪を引く頃だ。いい民間療法がある」
「ネギを首に巻く方法だよね?去年聞いたよ~。もういいからさ~~」
「……去年は試さなかっただろう?アリシンという成分がいい。疲労回復や殺菌効果、血行促進作用、免疫力を高める。九条ネギがあるだろう。それを使うといい」
「うんうん。九条ネギで試すよ」
「……結果を教えてくれ。お兄ちゃんは風邪を引かないから分からない」
まさか本当に風邪を引いていないのかも知れない。そう心の中で呟いた後、通話を終えた。なんだか佐久弥の目が輝いている。伊吹と気が合いそうだと言うと、みんなが大きく頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
恋人はメリーゴーランド少年だった~永遠の誓い編
夏目奈緖
BL
「恋人はメリーゴーランド少年だった」続編です。溺愛ドS社長×高校生。恋人同士になった二人の同棲物語。束縛と独占欲。。夏樹と黒崎は恋人同士。夏樹は友人からストーカー行為を受け、車へ押し込まれようとした際に怪我を負った。夏樹のことを守れずに悔やんだ黒崎は、二度と傷つけさせないと決心し、夏樹と同棲を始める。その結果、束縛と独占欲を向けるようになった。黒崎家という古い体質の家に生まれ、愛情を感じずに育った黒崎。結びつきの強い家庭環境で育った夏樹。お互いの価値観のすれ違いを経験し、お互いのトラウマを解消するストーリー。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる