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リビングのテーブルに料理が並ぶ光景は、ここに引っ越してきてから二度目だ。普段はダイニングテーブルしか使わないからだ。ホットカーペットもセットしたから温かいと思う。
テーブルに並んでいるのは、早瀬さんの差し入れが並んだ和洋折衷の料理だ。スパニッシュオムレツや、ハニーマスタードドレッシングを使ったカボチャサラダもある。これが絶品だ。悠人がどれがお勧めなのか、教えてくれた。俺にとっては全部お勧めだ。みんなが食べ始めると、うちが用意した料理を食べて、悠人が喜んでくれた。
「これ、美味しいよー」
「それはねえ、近所の店のやつ」
「買いに行きたいなあ」
お義父さんに再度声を掛けたが、お邪魔になるからと返事をされた。このメンバーは誰も遠慮しないのに。蔵之介さんはワタベ電機側の人として、何度も会食の場で会っているそうだ。子供の頃には、佐久弥と一緒にいる時に話したことがあるようだ。
(あれ?早瀬さんとも話したことがあるんじゃないかな?3人ともが近所に住んでいたんだし)
「早瀬さーん。佐久弥と蔵之介さんは、小さい頃にお義父さんと会ってるんだよね?早瀬さんとも会ったことがあるんじゃない?」
「覚えていないんだよ。会ったかも知れないなあ。佐久弥、覚えているか?」
「いやー、俺も覚えいないぞ。蔵之介がいじめっ子から守ってくれた時、たまたま社長が来ていた。裕理はどうだったかなー。たしか引っ越してきた頃だったぞ」
「そうか。4歳の頃なら覚えていないな……」
「お義父さんは覚えてるかもね。子供だったのが想像できない。興味があって……」
「ふむふむ。今も子供だよー?蔵之介さんだけが大人だよー」
「ウンウン。黒崎さんも同じ。大きな子供だよ」
「ははははー」
早瀬さんが笑った。どんな子だったのか興味がある。当時のお義父さんがどんな人だったのかも。並んで座っている黒崎の方を向いた。蔵之介さんとビールを注ぎ合っている。晩酌に付き合ってもらえて嬉しそうだ。すると、黒崎が思い出したかのように振り向いた。
「早瀬の親父さんと深川さんは友人同士だ。ハロウィンイベントに来てくれたことがある。小学三年生の裕理を連れて来た」
「そんなに前からの付き合いだったわけ?」
「同じ業界同士だ。交流はあるぞ」
「へえ~」
ライバル企業に勤める者同士でも、意外と交流があることを知った。大学が同じだったり、色んな企業に知り合いがいて、繋がるらしい。
「子供の頃に会ったのはその時だけだ。大学で再会した。写真はどこだったか……」
「持っているよ。悠人に見せたことがある。スマホに保存した」
早瀬さんが言ったことに、一斉に見たいと声が上がった。黒崎からも写真を見せてもらったことがある。その時は、拓海さんと沙耶さんと怜さんが写っていた。さっそく早瀬さんが見せてくれた。アルバムを写したものだ。日付を見ると、黒崎が中学1年生、早瀬さんが小学3年生の時だ。
写真には、赤い着物を着ている拓海さんもいた。賢そうな男の子と、気の強そうな背の高い子が並んでいる。早瀬さんと黒崎だ。そして、拓海さんと沙耶さんと怜さんが顔を寄せ合って笑っている。拓海さんは優しそうな顔をしている。お義父さんと似ているが、雰囲気がまるで違う。沙耶さんがキャッキャッと笑っている。何か言ったのだと思う。
「ぎゃははは。黒崎さんは当時からイケメンだなーー」
「ふむふむ。大人になったら女遊びを……。ひいいいいっ」
「うんうん。いいんだよ~。その通りだよ」
賑やかになってきたところで、今夜のメインのビーフシチューの登場だ。悠人がそわそわと落ち着かない様子だ。早く食べたいとせがまれている。
「手伝ってねー」
「おおーーっ」
キッチンへ歩いて行くと、先に悠人が小走りに到着した。鼻をピクピクさせて、お鍋の中を見つめている。さっそくお皿に注ぎ入れて嬉しそうな顔をした。
「ビーフシチューが好きだよねえ。小さい頃から?早瀬さんが作ってくれたから?」
「それもあるけど。おばあちゃんの得意料理だったんだ。俺も大好きだから、夏休みにも作ってもらったよ。カレーが多いだろ?うちはそうじゃなかったんだ。でさー、ビックリすることがあるんだけど」
「うんうん……」
「まだ藍生は食べれるものは限られているんだ。でも、ビーフシチューを見て、食べさせろーーってさ。あれはすごかったよ。俺と好みが似ているんだ。へへへ……」
「ゆうとー、それが言いたかったんだよね?」
「そそそそんなことは?ない、ですよ?」
照れくさそうに笑って、トレーのビーフシチューを運んでいった。自然とステップを踏んでいるような足取りで。可愛くて仕方がないようで、子供服のカタログを眺めて選んでいる姿は珍しくない。
(実家でも集まりたいなあ。3年ぶりになるかな?)
この家と環境に慣れてきた。デビューステージというハードルもクリアできた。まだまだ先はあるが、やっと振り返れた状況だ。母の身体はどうだろうか?明日電話をしようと決めた。
テーブルに並んでいるのは、早瀬さんの差し入れが並んだ和洋折衷の料理だ。スパニッシュオムレツや、ハニーマスタードドレッシングを使ったカボチャサラダもある。これが絶品だ。悠人がどれがお勧めなのか、教えてくれた。俺にとっては全部お勧めだ。みんなが食べ始めると、うちが用意した料理を食べて、悠人が喜んでくれた。
「これ、美味しいよー」
「それはねえ、近所の店のやつ」
「買いに行きたいなあ」
お義父さんに再度声を掛けたが、お邪魔になるからと返事をされた。このメンバーは誰も遠慮しないのに。蔵之介さんはワタベ電機側の人として、何度も会食の場で会っているそうだ。子供の頃には、佐久弥と一緒にいる時に話したことがあるようだ。
(あれ?早瀬さんとも話したことがあるんじゃないかな?3人ともが近所に住んでいたんだし)
「早瀬さーん。佐久弥と蔵之介さんは、小さい頃にお義父さんと会ってるんだよね?早瀬さんとも会ったことがあるんじゃない?」
「覚えていないんだよ。会ったかも知れないなあ。佐久弥、覚えているか?」
「いやー、俺も覚えいないぞ。蔵之介がいじめっ子から守ってくれた時、たまたま社長が来ていた。裕理はどうだったかなー。たしか引っ越してきた頃だったぞ」
「そうか。4歳の頃なら覚えていないな……」
「お義父さんは覚えてるかもね。子供だったのが想像できない。興味があって……」
「ふむふむ。今も子供だよー?蔵之介さんだけが大人だよー」
「ウンウン。黒崎さんも同じ。大きな子供だよ」
「ははははー」
早瀬さんが笑った。どんな子だったのか興味がある。当時のお義父さんがどんな人だったのかも。並んで座っている黒崎の方を向いた。蔵之介さんとビールを注ぎ合っている。晩酌に付き合ってもらえて嬉しそうだ。すると、黒崎が思い出したかのように振り向いた。
「早瀬の親父さんと深川さんは友人同士だ。ハロウィンイベントに来てくれたことがある。小学三年生の裕理を連れて来た」
「そんなに前からの付き合いだったわけ?」
「同じ業界同士だ。交流はあるぞ」
「へえ~」
ライバル企業に勤める者同士でも、意外と交流があることを知った。大学が同じだったり、色んな企業に知り合いがいて、繋がるらしい。
「子供の頃に会ったのはその時だけだ。大学で再会した。写真はどこだったか……」
「持っているよ。悠人に見せたことがある。スマホに保存した」
早瀬さんが言ったことに、一斉に見たいと声が上がった。黒崎からも写真を見せてもらったことがある。その時は、拓海さんと沙耶さんと怜さんが写っていた。さっそく早瀬さんが見せてくれた。アルバムを写したものだ。日付を見ると、黒崎が中学1年生、早瀬さんが小学3年生の時だ。
写真には、赤い着物を着ている拓海さんもいた。賢そうな男の子と、気の強そうな背の高い子が並んでいる。早瀬さんと黒崎だ。そして、拓海さんと沙耶さんと怜さんが顔を寄せ合って笑っている。拓海さんは優しそうな顔をしている。お義父さんと似ているが、雰囲気がまるで違う。沙耶さんがキャッキャッと笑っている。何か言ったのだと思う。
「ぎゃははは。黒崎さんは当時からイケメンだなーー」
「ふむふむ。大人になったら女遊びを……。ひいいいいっ」
「うんうん。いいんだよ~。その通りだよ」
賑やかになってきたところで、今夜のメインのビーフシチューの登場だ。悠人がそわそわと落ち着かない様子だ。早く食べたいとせがまれている。
「手伝ってねー」
「おおーーっ」
キッチンへ歩いて行くと、先に悠人が小走りに到着した。鼻をピクピクさせて、お鍋の中を見つめている。さっそくお皿に注ぎ入れて嬉しそうな顔をした。
「ビーフシチューが好きだよねえ。小さい頃から?早瀬さんが作ってくれたから?」
「それもあるけど。おばあちゃんの得意料理だったんだ。俺も大好きだから、夏休みにも作ってもらったよ。カレーが多いだろ?うちはそうじゃなかったんだ。でさー、ビックリすることがあるんだけど」
「うんうん……」
「まだ藍生は食べれるものは限られているんだ。でも、ビーフシチューを見て、食べさせろーーってさ。あれはすごかったよ。俺と好みが似ているんだ。へへへ……」
「ゆうとー、それが言いたかったんだよね?」
「そそそそんなことは?ない、ですよ?」
照れくさそうに笑って、トレーのビーフシチューを運んでいった。自然とステップを踏んでいるような足取りで。可愛くて仕方がないようで、子供服のカタログを眺めて選んでいる姿は珍しくない。
(実家でも集まりたいなあ。3年ぶりになるかな?)
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