白い雫の天使~親愛なる人への旋律

夏目奈緖

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 先週の月曜日に、心臓の検診を受けに行った。毎回、黒崎が付き添っている。先生からの説明にも同席している。恥ずかしいが割り切った。それで安心するなら簡単なことだ。背中の痛みと眠気は、心臓からの影響だと言われた。喉の違和感も症状に入る。狭心症を予防する貼り薬があるが、使うほどではない。今は様子を見ている。すぐに悪くなる話ではないのに。

「診察の結果が気になるんだろ。今までも同じことがあったじゃん。去年の今頃もそうだったよ。良くなったからさ~」
「心配するだけしか出来ないのか。手遅れになったら後悔する。徐々にはこない。突然、来るものだ」
「分かったよ~。今日はダラダラするからさ」

 黒崎の様子がおかしい。先生の説明を聞いた後は、心配そうにしていたが、そう変わりなかった。もしかしたら、俺が夢でうなされていたのか?よく眠れているのに。昔の記憶が蘇らないからだ。それは万理と俺に起きた出来事のことだ。記者から向けられたカメラを忘れたことはない。

 今の俺は、仕事上で取材を受けている。思い出をクリアして、血の通った人間同士として対応している。黒崎も知っていることだ。

(寝ている時に痛みが起きていたら言うだろうし。病院へ行くぞって。喉が腫れたのは、治ってきたし……)

 お義父さんに何かあったのかな。アンの散歩で遠くまで行ったけれど、元気そうに帰ってきた。午後からは、晴海さんと映画を観に行くそうだ。一貴さんは、デートだと言っていた。

 じっと見つめていると、やっと笑った。心配させた仕返しに、耳たぶをつまんで引っ張ってやった。

「お仕置きだよ。理由を話すまで離さないよ?」
「もっと悩め。器用貧乏になるな」
「え?」
「すぐに成長するな。すくすくと」
「すくすくって。ひゃひゃひゃ。それが理由なのかよ?出来ることが増えたから?」
「そのとおりだ」

 黒崎が目を逸らせた後、覆いかぶさってきた。目元にキスをして、最後に左側の額へ触れられた。成長が理由ではない。誤魔化している。会話が回り道で、普段のような直球ではない。

「俺、黒崎夏樹になっただろ。テレビでも堂々と、傷跡を見せているんだよ。アップで映っても、ナツキだって、分かっていいじゃん。もう怪我をしないから」
「抱くのは問題ないのか。優しくしているが……」
「それだよ~。聞くなよ。いくら先生でも……」

 俺の方が深刻な気分になった。。黒崎がベッドのことを質問しそうになっていた。俺の前で質問するなと言い返したかった。一刻も早く、診察室から出ることしか考えられずにいた。
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