40 / 152
5-8
しおりを挟む
俺も自分のことを大人しいタイプだと思っている。でも、歌うとさらにもっと歌いたくて、藤沢達と週に三回もカラオケ店に行った時がある。
歌うことが好きだと思ったきっかけは、高校に入った後だった。音楽の授業で賛美歌を習ったとき、同じクラスの子達からとても上手だと褒めて貰ったからだ。それ以来、歌うことが好きだと思うようになった。今の学校に入って良かったと思った。
(あ……。どうしたんだろう……)
するとその時だ。黒崎から声をかけられた。学校のことを思い出していたから、うわの空だったようだ。黒崎が心配そうに俺のことを見つめていた。
「黒崎さん。ごめんなさい。学校のことを思い出していたんだ。大丈夫だよ。楽しいことだからさ」
「来週、うちのマンションに泊まりに来ないか?俺はピアノを弾くのが好きだ」
「行きたいよ。かっこいいなーーー」
黒崎からの提案に驚いた。そして、嬉しいと思った。でも、夜だと騒音が気にならないだろうかと心配になった。しかし、その心配はいらないそうだ。夜でも練習できる環境だそうだ。それを聞いて、羨ましいと思った。俺は部屋で鼻歌を歌うときでも気にしているというのに。それを話すと、黒崎が笑い出した。
「夏樹。機嫌が直って良かった」
「ありがとう。いろんな話を聞かせてくれて」
「どういたしまして」
黒崎から頭を撫でられた。喜んでもらえて良かったと言っている。車の中で少しだけ密着しているのに、さっきのようにドキドキしなかった。
(あ……。そうか……)
そこで、俺は気づいた。黒崎に対して持っているのは恋愛感情ではなくて、かっこいい人に対して持っている憧れの気持ちでは無いかということに。そう思ったとき、不思議と胸の痛みが消えた。きっとそうなのだと思った。小さい頃、伊吹に憧れていた時に似ていると思ったからだ。
「夏樹。どうした?」
「何でも無いよ。大丈夫だよ」
「そうか。そうだ。この曲はどうだ?」
「これも面白い歌詞だよね!黒崎さんって詳しいね」
さらに黒崎が新しい曲を選んでくれた。これも面白い歌詞の曲だった。こうして過ごしていると、さっきまで言い争いをしていたことが嘘のように思えた。やっと仲直りできて良かったと思った。
(あ……。もう帰るのかな……)
もっと黒崎と一緒にいたいと思ったとき、彼が時計を見て、俺に声をかけてきた。このままだと帰るのが遅くなりそうだと言っている。
「今日も色んな話ができて良かった。今晩、ゆっくり寝てくれ。俺のことを恋人候補に入れて貰いたい。その返事がまだだぞ」
「また変なことを言うなよ。ありがとう。俺も楽しかったよ」
「恋人候補の返事を聞かせてくれ」
「よく分からないよ」
こういう冗談を言われるとつらいと思う。黒崎に恋愛感情のようなものを持ち始めているからだ。でも、黒崎は冗談を言っている。つまりは俺の片想いだ。胸の奥がチクチクする痛みを隠そうと思った。良いよと答えたら、冗談だと言ってひっくり返されてしまうに決まっている。まるでレストランで出会った夜のように、俺のことを笑わせてくれているのだろう。
俺が返事をしないでいると、黒崎が笑い出した。やっぱり冗談だったのだと分かった。
「さあ。車を出すぞ」
「うん」
さあそろそろ帰ろうと黒崎が言った後、車が発進された。そして、俺のことを家に送り届けてくれた。こうして、突然湧き上がった恋愛感情と憧れの気持ちに戸惑いながら、送迎三日目が終わった。
歌うことが好きだと思ったきっかけは、高校に入った後だった。音楽の授業で賛美歌を習ったとき、同じクラスの子達からとても上手だと褒めて貰ったからだ。それ以来、歌うことが好きだと思うようになった。今の学校に入って良かったと思った。
(あ……。どうしたんだろう……)
するとその時だ。黒崎から声をかけられた。学校のことを思い出していたから、うわの空だったようだ。黒崎が心配そうに俺のことを見つめていた。
「黒崎さん。ごめんなさい。学校のことを思い出していたんだ。大丈夫だよ。楽しいことだからさ」
「来週、うちのマンションに泊まりに来ないか?俺はピアノを弾くのが好きだ」
「行きたいよ。かっこいいなーーー」
黒崎からの提案に驚いた。そして、嬉しいと思った。でも、夜だと騒音が気にならないだろうかと心配になった。しかし、その心配はいらないそうだ。夜でも練習できる環境だそうだ。それを聞いて、羨ましいと思った。俺は部屋で鼻歌を歌うときでも気にしているというのに。それを話すと、黒崎が笑い出した。
「夏樹。機嫌が直って良かった」
「ありがとう。いろんな話を聞かせてくれて」
「どういたしまして」
黒崎から頭を撫でられた。喜んでもらえて良かったと言っている。車の中で少しだけ密着しているのに、さっきのようにドキドキしなかった。
(あ……。そうか……)
そこで、俺は気づいた。黒崎に対して持っているのは恋愛感情ではなくて、かっこいい人に対して持っている憧れの気持ちでは無いかということに。そう思ったとき、不思議と胸の痛みが消えた。きっとそうなのだと思った。小さい頃、伊吹に憧れていた時に似ていると思ったからだ。
「夏樹。どうした?」
「何でも無いよ。大丈夫だよ」
「そうか。そうだ。この曲はどうだ?」
「これも面白い歌詞だよね!黒崎さんって詳しいね」
さらに黒崎が新しい曲を選んでくれた。これも面白い歌詞の曲だった。こうして過ごしていると、さっきまで言い争いをしていたことが嘘のように思えた。やっと仲直りできて良かったと思った。
(あ……。もう帰るのかな……)
もっと黒崎と一緒にいたいと思ったとき、彼が時計を見て、俺に声をかけてきた。このままだと帰るのが遅くなりそうだと言っている。
「今日も色んな話ができて良かった。今晩、ゆっくり寝てくれ。俺のことを恋人候補に入れて貰いたい。その返事がまだだぞ」
「また変なことを言うなよ。ありがとう。俺も楽しかったよ」
「恋人候補の返事を聞かせてくれ」
「よく分からないよ」
こういう冗談を言われるとつらいと思う。黒崎に恋愛感情のようなものを持ち始めているからだ。でも、黒崎は冗談を言っている。つまりは俺の片想いだ。胸の奥がチクチクする痛みを隠そうと思った。良いよと答えたら、冗談だと言ってひっくり返されてしまうに決まっている。まるでレストランで出会った夜のように、俺のことを笑わせてくれているのだろう。
俺が返事をしないでいると、黒崎が笑い出した。やっぱり冗談だったのだと分かった。
「さあ。車を出すぞ」
「うん」
さあそろそろ帰ろうと黒崎が言った後、車が発進された。そして、俺のことを家に送り届けてくれた。こうして、突然湧き上がった恋愛感情と憧れの気持ちに戸惑いながら、送迎三日目が終わった。
0
あなたにおすすめの小説
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
有能副会長はポンコツを隠したい。
さんから
BL
2.6タイトル変更しました。
この高校の生徒会副会長を務める僕・東山 優真は、普段の仕事ぶりから次期生徒会長の最有力候補と言われている。……んだけど、実際は詰めの甘さやうっかりミスを根性論でカバーしてきたポンコツだ。
こんなに頑張れているのは、密かに思いを寄せている安西生徒会長のため。
ある日、なんの奇跡か会長に告白され晴れて恋人同士となった僕は、大好きな人に幻滅されないためにポンコツを隠し通すと決めたけど……!?(内容は他サイト版と同じですが、こちらの方がちょっと読みやすいはずです)
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
極度の怖がりな俺、ド派手な先輩とルームシェアが決まる
雪 いつき
BL
幽霊が怖い極度の怖がりな由井 明良(ゆい あきら)は、上京した翌日に、契約した部屋が事故物件だと知る。
隣人である鴫野 聖凪(しぎの せな)からそれを聞き、震えながら途方に暮れていると、聖凪からルームシェアを提案される。
あれよあれよと引っ越しまで進み、始まった新生活。聖凪との暮らしは、予想外に居心地のいいものだった。
《大学3年生×大学1年生》
《見た目ド派手な世話焼きバンドマン攻×怖がりピュアな受》
バズる間取り
福澤ゆき
BL
元人気子役&アイドルだった伊織は成長すると「劣化した」と叩かれて人気が急落し、世間から忘れられかけていた。ある日、「事故物件に住む」というネットTVの企画の仕事が舞い込んでくる。仕事を選べない伊織は事故物件に住むことになるが、配信中に本当に怪奇現象が起こったことにより、一気にバズり、再び注目を浴びることに。
自称視える隣人イケメン大学生狗飼に「これ以上住まない方がいい」と忠告を受けるが、伊織は芸能界生き残りをかけて、この企画を続行する。やがて怪異はエスカレートしていき……
すでに完結済みの話のため一気に投稿させていただきますmm
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる