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さらにまた緊張してきた。黒崎が普段と違う人に見えるからだ。さらに彼から微笑みかけられて、また顔が赤くなったのが分かった。黒崎が心配そうにしている。そして、彼が首をかしげる仕草をした。俺が引きつった笑い方をしているからだと思う。
「どうしたんだ?」
「緊張しているからだよ。あんたの前じゃ皆そうなるんじゃないのかな。だって、迫力あるもん」
「まだ俺のことを知らないからだろう。自己紹介程度しかしていない。何が好きか、休みの日は何をしているか話さないか?」
「そうだね!」
「先にどうぞ。家族構成からだ」
「うん……。両親と兄の伊吹と妹の万理との五人家族だよ。お兄ちゃんは東京に住んでいるんだ。大学在学中に起業したんだ。電子書籍コンテンツの仕事だよ。忙しくなった後で休学したんだ。たまに帰ってくるよ。あ、これはお兄ちゃんから言っていいよって言われたから言うんだけどね。お兄ちゃんが付き合っている人は男性なんだ。俺も知っている人だよ。幼馴染みなんだ。優しい人だよ」
「そうだったのか。お兄さんのことは好きか?」
「もちろん好きだよ。でも、好きじゃないときもある。図々しい人なんだ。思い込みが激しくてさ……」
「そうか」
黒崎が肩を揺らして笑い出した。いつもこうして笑えばいいのにと思った。ごく普通のお兄さんに見えるからだ。
「今度は黒崎さんの番だよ。普段は何をしているの?家族構成は?本当は彼女がいるんじゃないの?」
「ほとんど仕事だ。決まった曜日に休みはない。普段は19時には家に帰るが、会食があれば深夜になる。帰ってきたら、ピアノを弾いている。5分だけでも弾いている。家族構成は父と兄だ。俺の家は9人兄弟で、俺は一番下だ。実家は東京都内で、ここには母方の祖父母がいたから住んでいる。中学生から高校生までここに住んでいた。大学入学後に実家に戻った。彼女はいない。この間、別れたばかりだ」
「そうなんだ……」
彼女がいないのか。良かったと反射的に思って戸惑った。どうしてホッとしたのだろう。やっぱり俺は黒崎に恋愛感情を持っているのだろうか。それを隠したくて、運ばれてきたお水を飲んだ。そして、黒崎の家族の話を聞くことにした。
「黒崎さんは末っ子なんだね、意外だよ。俺の相手をするのが上手だよね。弟がいるかと思ってた」
「そうか。家族の話はこれで終わりでいいか。父とは仲が悪い。次はどんな話がいいか。仕事の話がいいか?」
「ごめんね。いろいろ聞いて。泊まりに行った日にピアノを聴かせてほしい。知らないこととはいえ、彼女のことを聞いて、ごめんなさい」
「気にするな。3か月で別れた。よくフラれるから慣れている。何でも聞いてくれ」
そんなに早く別れるのか。黒崎に原因があるのか、相手が悪いのか。どんなタイプが好きだろう。聞くとセクハラ行為になるだろうかと言うと、今回はそうではないと言われた。遠慮しなくていいということだった。
「ふーー。よかった。黒崎さんと話すと肩が凝るんだよーーー。あんたがモテるからフラれるのかな?優しいから大事にするよね?黒崎さんの方から付き合おうって言っているの?どんな人がタイプ?」
「仕事優先だから愛想を尽かされる。共通するタイプはないと思う。興味がわかないときもあるが、付き合ってきた人達はいた。今はいない。お前以外は」
「何だよそれ?来るもの拒まずだろ。自分から好きになったことがないのかよ。あんたの大事にしたっていうレベルは、どこだよ?」
「食事をして、話し相手になっていた」
「それだと友達と変わらないだろ?」
「大事なことあるぞ。いや、何でもない」
「ふうん。ヤリたかったんだろ。デートの目的がそれだけなんだ?」
「本当にストレートに言う奴だな」
「ヤリたくなるのは本能だよ。ムラムラした時に相手がいれば、そうなるよね?」
「下品だからやめろ」
黒崎から不機嫌そうに眉間に皺を寄せられた。嫌味たらしい表情だと思った。どうして嫌な言い方をされるのか、納得がいかない。
「男同士だからいいだろ?俺は付き合ったことがないから分からないけど、そういうときがあるそうだよ。頭の中でいろいろと考えるんだ。黒崎さんもそうだろ?好みの女の人がいたらさ~」
「なんのことだ?」
「いろいろ考えるとさ~」
これぞ男同士の会話だろう。クラスの子が話していた通りのことを口にしてみた。これでも黒崎に気を遣っているのに、まだ不機嫌な顔をされている。
「何度も言わせるな!クラスの子から襲われるかもしれない」
「すごく淡白だから、話題に出していないよ。”あの女の子とヤリたい”って思わないし」
「それならよかった……」
「なにが?俺の性衝動の淡白さを心配しろよ」
「ヤリたい、ムラムラ、性衝動の単語を使うな!」
近くにいた女性達がざわつき始めた。小声なのに聞こえていたということは、会話を盗み聞きをしたとしか思えない。この話題を控える必要があるが、苛立ちを抑えられなかった。
「どさくさに紛れてキスをしたもんね。すけべじじい」
「いい加減にしろ。腹の立つ言い方をするな」
「あんたの方が悪いんだろ!」
「泣き顔が可愛かったからだ」
「女の人を泣かし過ぎて飽きたから、今度は俺のことを泣かせたんだ?」
周りから悲鳴が起きた。さすがに恥ずかしくなり押し黙った。それなのに、黒崎は楽しそうに笑っていた。不可解な人だと思う。これ以上言い合いすると、お店の迷惑になってしまう。場所を変えようと黒崎が言い、レストランを出ることにした。
「どうしたんだ?」
「緊張しているからだよ。あんたの前じゃ皆そうなるんじゃないのかな。だって、迫力あるもん」
「まだ俺のことを知らないからだろう。自己紹介程度しかしていない。何が好きか、休みの日は何をしているか話さないか?」
「そうだね!」
「先にどうぞ。家族構成からだ」
「うん……。両親と兄の伊吹と妹の万理との五人家族だよ。お兄ちゃんは東京に住んでいるんだ。大学在学中に起業したんだ。電子書籍コンテンツの仕事だよ。忙しくなった後で休学したんだ。たまに帰ってくるよ。あ、これはお兄ちゃんから言っていいよって言われたから言うんだけどね。お兄ちゃんが付き合っている人は男性なんだ。俺も知っている人だよ。幼馴染みなんだ。優しい人だよ」
「そうだったのか。お兄さんのことは好きか?」
「もちろん好きだよ。でも、好きじゃないときもある。図々しい人なんだ。思い込みが激しくてさ……」
「そうか」
黒崎が肩を揺らして笑い出した。いつもこうして笑えばいいのにと思った。ごく普通のお兄さんに見えるからだ。
「今度は黒崎さんの番だよ。普段は何をしているの?家族構成は?本当は彼女がいるんじゃないの?」
「ほとんど仕事だ。決まった曜日に休みはない。普段は19時には家に帰るが、会食があれば深夜になる。帰ってきたら、ピアノを弾いている。5分だけでも弾いている。家族構成は父と兄だ。俺の家は9人兄弟で、俺は一番下だ。実家は東京都内で、ここには母方の祖父母がいたから住んでいる。中学生から高校生までここに住んでいた。大学入学後に実家に戻った。彼女はいない。この間、別れたばかりだ」
「そうなんだ……」
彼女がいないのか。良かったと反射的に思って戸惑った。どうしてホッとしたのだろう。やっぱり俺は黒崎に恋愛感情を持っているのだろうか。それを隠したくて、運ばれてきたお水を飲んだ。そして、黒崎の家族の話を聞くことにした。
「黒崎さんは末っ子なんだね、意外だよ。俺の相手をするのが上手だよね。弟がいるかと思ってた」
「そうか。家族の話はこれで終わりでいいか。父とは仲が悪い。次はどんな話がいいか。仕事の話がいいか?」
「ごめんね。いろいろ聞いて。泊まりに行った日にピアノを聴かせてほしい。知らないこととはいえ、彼女のことを聞いて、ごめんなさい」
「気にするな。3か月で別れた。よくフラれるから慣れている。何でも聞いてくれ」
そんなに早く別れるのか。黒崎に原因があるのか、相手が悪いのか。どんなタイプが好きだろう。聞くとセクハラ行為になるだろうかと言うと、今回はそうではないと言われた。遠慮しなくていいということだった。
「ふーー。よかった。黒崎さんと話すと肩が凝るんだよーーー。あんたがモテるからフラれるのかな?優しいから大事にするよね?黒崎さんの方から付き合おうって言っているの?どんな人がタイプ?」
「仕事優先だから愛想を尽かされる。共通するタイプはないと思う。興味がわかないときもあるが、付き合ってきた人達はいた。今はいない。お前以外は」
「何だよそれ?来るもの拒まずだろ。自分から好きになったことがないのかよ。あんたの大事にしたっていうレベルは、どこだよ?」
「食事をして、話し相手になっていた」
「それだと友達と変わらないだろ?」
「大事なことあるぞ。いや、何でもない」
「ふうん。ヤリたかったんだろ。デートの目的がそれだけなんだ?」
「本当にストレートに言う奴だな」
「ヤリたくなるのは本能だよ。ムラムラした時に相手がいれば、そうなるよね?」
「下品だからやめろ」
黒崎から不機嫌そうに眉間に皺を寄せられた。嫌味たらしい表情だと思った。どうして嫌な言い方をされるのか、納得がいかない。
「男同士だからいいだろ?俺は付き合ったことがないから分からないけど、そういうときがあるそうだよ。頭の中でいろいろと考えるんだ。黒崎さんもそうだろ?好みの女の人がいたらさ~」
「なんのことだ?」
「いろいろ考えるとさ~」
これぞ男同士の会話だろう。クラスの子が話していた通りのことを口にしてみた。これでも黒崎に気を遣っているのに、まだ不機嫌な顔をされている。
「何度も言わせるな!クラスの子から襲われるかもしれない」
「すごく淡白だから、話題に出していないよ。”あの女の子とヤリたい”って思わないし」
「それならよかった……」
「なにが?俺の性衝動の淡白さを心配しろよ」
「ヤリたい、ムラムラ、性衝動の単語を使うな!」
近くにいた女性達がざわつき始めた。小声なのに聞こえていたということは、会話を盗み聞きをしたとしか思えない。この話題を控える必要があるが、苛立ちを抑えられなかった。
「どさくさに紛れてキスをしたもんね。すけべじじい」
「いい加減にしろ。腹の立つ言い方をするな」
「あんたの方が悪いんだろ!」
「泣き顔が可愛かったからだ」
「女の人を泣かし過ぎて飽きたから、今度は俺のことを泣かせたんだ?」
周りから悲鳴が起きた。さすがに恥ずかしくなり押し黙った。それなのに、黒崎は楽しそうに笑っていた。不可解な人だと思う。これ以上言い合いすると、お店の迷惑になってしまう。場所を変えようと黒崎が言い、レストランを出ることにした。
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