恋人はメリーゴーランド少年だった。

夏目奈緖

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 15時30分。

 部屋で黒崎と二人で今夜の予定を話しているところだ。この部屋はゆったりした和室だから、贅沢な気分になった。大きなベッドがふたつある。黒崎から一緒に寝ようと言われて断った。一つを二人で寝ても十分な広さがあるから試してみたいという理由だ。それなら俺は布団を敷いて寝ようと思った。寝込みを襲われたくないからだ。黒崎が何かしそうだ。遠慮無く文句を言い返した。

「一回聞いたら分かるよ。でも、俺は布団を敷いて寝たい。仲居さんに聞いたらOKだったよ。さっき聞いたんだ」
「せっかくの寝心地のいいベッドだ。支配人がこだわって選んだ物だ。寝てやってくれ。若い子の新鮮な感想を聴きたがっている」
「あんたの知り合いなの?」
「ああ。学生時代からの付き合いだ」

 そう言われると断れない。ここへ到着した時から、仲居さんから親切にしてもらっている。おかげで楽しく過ごせている。部屋に案内された後、美味しい和菓子と、お茶をご馳走になった。見たことのないぐらい綺麗なもので、お皿には花まで添えられていた。ベッドも寝心地がいいに決まっている。来たときから楽しみにしていた。

「分かったよ。ベッドで寝るよ。そんなに嬉しいのかーーー。頼み込まれたんだね」
「なかなか訪ねて来られなかった。感想を聞かせてやってくれ」
「そっか。だったら尚更、協力したいね。でも一緒に寝ないからね」
「分かっている。冗談だ。緊張している」

 黒崎の言葉に頷いた。俺も同じだ。初めての旅行だからなのか、お互いに緊張している。黒崎はそう見えなかったのに、部屋に入った後は落ち着かない様子だ。物静かな人なのに、口数が多くなったから、そういうことだと思う。この旅館に着いた後で館内を案内されて、庭を探索し、お土産物の相談をした。俺の方は楽しいから疲れていない。黒崎はどうだろうかと気になった。

「黒崎さんは疲れていない?大丈夫?」
「俺は大丈夫だ。お前の方こそ疲れているんじゃないのか?」
「そんなに気を遣わないでよ」
「楽しませてやりたい。怪我が治って顔色がよくなった。楽しめているか?温泉が好きだと聞いて良かった」
「うん。大丈夫だよ。ゆっくり風呂に浸かるのが好きだよ」
「知らなかった」
「新しいことが見つかるね」

 黒崎が笑ったから、俺も笑った。むずがゆい思いをしながら話していると、黒崎から大浴場に行かないかと誘われた。俺も楽しみにしていた。さっそく頷いた。黒崎と一緒に入りたいと思っていた。

「晩ご飯の後で行こうよ。でも、晩御飯の後で散歩に出かけるんだよね?イルミネーションの公園を見に行くんだろ?食事の前にする?」
「先に入っておこう。祭りが開かれているから、商店街も遅くまで開いているそうだ。食事の後は眠くなるだろう?大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。行きたいよ。今から入りに行こうよ。ゆっくり浸かりたいんだ」
「億劫じゃないのか?正直に言ってくれ」
「ああ、うん……」

 傷のことを心配してくれている。もうすっかり良くなっているから、温泉に入るのは大丈夫だと思う。でも、病院からはしばらくシャワーにした方がいいと言われている。せっかくだけれども、シャワーだけにしようと思った。
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