恋人はメリーゴーランド少年だった。

夏目奈緖

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 明日の朝、沙耶さんも合流する。彼女も友達と旅行に来ていて、明日の朝ご飯を一緒に食べることになった。帰りも俺達と同じ時間に帰ると言っていた。俺のことを心配してくれていた。女性に心配をかけたくないから、大丈夫だと言ったけれど、沙耶さんが黒崎に何か言っていたから、彼の気持ちに気づいているのかもしれない。沙耶さんも、俺の方から黒崎から告白されたことを話すのを待ってくれているのだと思った。

「夏樹。機嫌が悪いだろう。俺が何かしたのか?」
「さっき意地悪を言ったじゃん。帰り道は沙耶さんの車に乗るよ。意地悪をされたくないから」
「そういうことを言うな」
「だって……」
「こっちを向け」
「嫌だよ!」

 こんなに早い段階で喧嘩をしてしまった。嫌みさえ言わずにいればいいのに、そうできなかった。楽しいよ。有難う。さっきの景色は綺麗だったね。猫がいたね。可愛かったね。そういう言葉が出そうになるたびに、恥ずかしくて言い出せない。良い雰囲気になるのが怖いからだ。それなのに、黒崎との一泊旅行に来てしまった。友達づきあいの再スタートだと思えば良いと自分に言い聞かせたところだ。深呼吸していると、黒崎から頭を撫でられてホッとした。やっといつもの関係に戻れた気がするからだ。

「不器用なことは分かっている。少しずつ変えていけばいい。ズケズケ言うわりには、肝心なことを言えないことも知っているんだぞ。部屋に入ろう。スイーツを頼むといい。アイスクリームにエスプレッソを掛けたものが人気だそうだ。お前は小食だからな。食事が入る程度にしておけ」
「ありがとう。嬉しいよ」

 ありがとう。この一言が自分から出てきてホッとした。やっとお礼が言えたからだ。黒崎から微笑み返しを受けた。距離はいつものままだ。何もされそうに無くて良かったと思った。

「そうか。機嫌が直ったみたいだな」
「俺は最初から……、ううん。機嫌が悪かった。ごめんなさい……」
「部屋に入ろう」
「うん」

 今夜泊まる部屋へ入ると、ひと口サイズのフルーツタルトが用意されていた。地元で人気のある洋菓子店のものだ。さらにアイスクリームまで食べると晩ご飯が入らなくなりそうだと思った。そう言うと、黒崎が笑っていた。おかげで照れくさいような気まずい空気が消えて、俺も自然に笑えるようになった。
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