74 / 152
10-2
しおりを挟む
明日の朝、沙耶さんも合流する。彼女も友達と旅行に来ていて、明日の朝ご飯を一緒に食べることになった。帰りも俺達と同じ時間に帰ると言っていた。俺のことを心配してくれていた。女性に心配をかけたくないから、大丈夫だと言ったけれど、沙耶さんが黒崎に何か言っていたから、彼の気持ちに気づいているのかもしれない。沙耶さんも、俺の方から黒崎から告白されたことを話すのを待ってくれているのだと思った。
「夏樹。機嫌が悪いだろう。俺が何かしたのか?」
「さっき意地悪を言ったじゃん。帰り道は沙耶さんの車に乗るよ。意地悪をされたくないから」
「そういうことを言うな」
「だって……」
「こっちを向け」
「嫌だよ!」
こんなに早い段階で喧嘩をしてしまった。嫌みさえ言わずにいればいいのに、そうできなかった。楽しいよ。有難う。さっきの景色は綺麗だったね。猫がいたね。可愛かったね。そういう言葉が出そうになるたびに、恥ずかしくて言い出せない。良い雰囲気になるのが怖いからだ。それなのに、黒崎との一泊旅行に来てしまった。友達づきあいの再スタートだと思えば良いと自分に言い聞かせたところだ。深呼吸していると、黒崎から頭を撫でられてホッとした。やっといつもの関係に戻れた気がするからだ。
「不器用なことは分かっている。少しずつ変えていけばいい。ズケズケ言うわりには、肝心なことを言えないことも知っているんだぞ。部屋に入ろう。スイーツを頼むといい。アイスクリームにエスプレッソを掛けたものが人気だそうだ。お前は小食だからな。食事が入る程度にしておけ」
「ありがとう。嬉しいよ」
ありがとう。この一言が自分から出てきてホッとした。やっとお礼が言えたからだ。黒崎から微笑み返しを受けた。距離はいつものままだ。何もされそうに無くて良かったと思った。
「そうか。機嫌が直ったみたいだな」
「俺は最初から……、ううん。機嫌が悪かった。ごめんなさい……」
「部屋に入ろう」
「うん」
今夜泊まる部屋へ入ると、ひと口サイズのフルーツタルトが用意されていた。地元で人気のある洋菓子店のものだ。さらにアイスクリームまで食べると晩ご飯が入らなくなりそうだと思った。そう言うと、黒崎が笑っていた。おかげで照れくさいような気まずい空気が消えて、俺も自然に笑えるようになった。
「夏樹。機嫌が悪いだろう。俺が何かしたのか?」
「さっき意地悪を言ったじゃん。帰り道は沙耶さんの車に乗るよ。意地悪をされたくないから」
「そういうことを言うな」
「だって……」
「こっちを向け」
「嫌だよ!」
こんなに早い段階で喧嘩をしてしまった。嫌みさえ言わずにいればいいのに、そうできなかった。楽しいよ。有難う。さっきの景色は綺麗だったね。猫がいたね。可愛かったね。そういう言葉が出そうになるたびに、恥ずかしくて言い出せない。良い雰囲気になるのが怖いからだ。それなのに、黒崎との一泊旅行に来てしまった。友達づきあいの再スタートだと思えば良いと自分に言い聞かせたところだ。深呼吸していると、黒崎から頭を撫でられてホッとした。やっといつもの関係に戻れた気がするからだ。
「不器用なことは分かっている。少しずつ変えていけばいい。ズケズケ言うわりには、肝心なことを言えないことも知っているんだぞ。部屋に入ろう。スイーツを頼むといい。アイスクリームにエスプレッソを掛けたものが人気だそうだ。お前は小食だからな。食事が入る程度にしておけ」
「ありがとう。嬉しいよ」
ありがとう。この一言が自分から出てきてホッとした。やっとお礼が言えたからだ。黒崎から微笑み返しを受けた。距離はいつものままだ。何もされそうに無くて良かったと思った。
「そうか。機嫌が直ったみたいだな」
「俺は最初から……、ううん。機嫌が悪かった。ごめんなさい……」
「部屋に入ろう」
「うん」
今夜泊まる部屋へ入ると、ひと口サイズのフルーツタルトが用意されていた。地元で人気のある洋菓子店のものだ。さらにアイスクリームまで食べると晩ご飯が入らなくなりそうだと思った。そう言うと、黒崎が笑っていた。おかげで照れくさいような気まずい空気が消えて、俺も自然に笑えるようになった。
0
あなたにおすすめの小説
俺の推し♂が路頭に迷っていたので
木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです)
どこにでも居る冴えない男
左江内 巨輝(さえない おおき)は
地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。
しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった…
推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???
ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!
はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。
********
癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー!
※ちょっとイチャつきます。
有能副会長はポンコツを隠したい。
さんから
BL
2.6タイトル変更しました。
この高校の生徒会副会長を務める僕・東山 優真は、普段の仕事ぶりから次期生徒会長の最有力候補と言われている。……んだけど、実際は詰めの甘さやうっかりミスを根性論でカバーしてきたポンコツだ。
こんなに頑張れているのは、密かに思いを寄せている安西生徒会長のため。
ある日、なんの奇跡か会長に告白され晴れて恋人同士となった僕は、大好きな人に幻滅されないためにポンコツを隠し通すと決めたけど……!?(内容は他サイト版と同じですが、こちらの方がちょっと読みやすいはずです)
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】
三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。
皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。
涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥
上司×部下BL
極度の怖がりな俺、ド派手な先輩とルームシェアが決まる
雪 いつき
BL
幽霊が怖い極度の怖がりな由井 明良(ゆい あきら)は、上京した翌日に、契約した部屋が事故物件だと知る。
隣人である鴫野 聖凪(しぎの せな)からそれを聞き、震えながら途方に暮れていると、聖凪からルームシェアを提案される。
あれよあれよと引っ越しまで進み、始まった新生活。聖凪との暮らしは、予想外に居心地のいいものだった。
《大学3年生×大学1年生》
《見た目ド派手な世話焼きバンドマン攻×怖がりピュアな受》
バズる間取り
福澤ゆき
BL
元人気子役&アイドルだった伊織は成長すると「劣化した」と叩かれて人気が急落し、世間から忘れられかけていた。ある日、「事故物件に住む」というネットTVの企画の仕事が舞い込んでくる。仕事を選べない伊織は事故物件に住むことになるが、配信中に本当に怪奇現象が起こったことにより、一気にバズり、再び注目を浴びることに。
自称視える隣人イケメン大学生狗飼に「これ以上住まない方がいい」と忠告を受けるが、伊織は芸能界生き残りをかけて、この企画を続行する。やがて怪異はエスカレートしていき……
すでに完結済みの話のため一気に投稿させていただきますmm
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる