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銀行のATMコーナーに入った。たくさん人が並んでいて混雑していた。大きな店舗で何台も機械が置いてあるから、すぐに順番が来るだろうと思った。貯金では足りなくて全額は返せないから、半額だけでも黒崎に受け取ってもらおうと思った。自動ドアの向こうへ視線を向けると、黒崎が立っていた。誰かと電話をしている。心配だからと言って、後ろからついてきていた。
ATMコーナーから人がどんどん出て行き、あっという間に自分の番になった。貯金を下ろした後、壁の方で財布をリュックの中に入れた。外を見ると、まだ黒崎が電話をしていた。そばに行って待とうかと思ったけれども、電話の邪魔になるといけないから、端の方で待つことにした。
(黒崎さんは受け取ってくれるかな。強引だよね。あ、誰だろう?)
どれぐらい時間が経っただろうか。ぼんやりしていると、後ろから声を掛けられた。久しぶりだねと言っている。振り向くと、知らない男性が立っていた。誰だろうと思って首をかしげると、さらに相手が親しげに近くに来た。学校の先生ではない。誰か分からないから困っていると、彼が俺のことを見て微笑みかけてきた。
「こんにちは。マリーズカフェで隣の席だったんだよ。あの店にはよく行くの?」
「そうだったんですか。たまに行きます。あの……、待ち合わせなんで失礼します」
「そうなのか。一緒に待ってあげるよ」
「おかまいなく。すぐ近くにいますから」
「どこに?」
「そこに。電話をしている人です。あれ?いない……」
黒崎の方を向いたら、そこにはいなかった。場所を変えたようだ。声をかけてきた男性から、友達との待ち合わせなら、自分も一緒に遊びに行きたいと言われたから、ナンパ目的だと分かった。今日はこれで二人目だ。週末はナンパが多いのだと思った。黒崎のことを探している俺を見て、さらに彼から声をかけられた。
「怖がらなくてもいいんだよ」
「おかまいなく」
「はっきり言うんだね。そういう子は好きだよ。一緒に待つよ」
「待たれても困ります」
「怒らせたお詫びをさせてよ。美味しいお店が近くにある」
「やめてください。向こうで人が待っているので。あ……、黒崎さん……」
男性から強引に肩を抱かれた。するとその時だ。反対方向から歩いてきた人に腰を抱かれて、彼から引き離された。振り向くと、黒崎が立っていた。やっとナンパから解放されたと思ってホッとした直後、背中に冷たい汗が流れた。黒崎が怒った顔をしていたからだ。さらに、黒崎が男性に声をかけた。
「この子に何か用ですか?」
「知ってる子に似ていたからです!あの……っ」
男性の顔が引きつった。知っている人だったようだ。そして、男性は黒崎の仕事の取引先のようだと思った。もめ事を起こしてしまったことを後悔した。黒崎に謝った方がいいかと思って声をかけようとしたとき、彼から止められた。お前が悪いのでは無いと言われた。そして、ナンパならはっきり断れと叱られてしまった。さらに、黒崎が男性に声をかけた。
「MA企画の原田さんでしたね?」
「は、はいっ。いつも弊社がお世話になっています!」
「こちらこそ。仕事の話は脇に置きましょう。この子に用はありませんね?」
「はいっ。弟さんとは知らずに、申し訳ございませんっ」
「僕の恋人です」
「あの、友達です」
「し、失礼しました。あの、提案させて頂いた件ですが、まさか白紙に……」
「これはプライベートですよ」
「失礼しました!」
「来週、星野でお会いしましょう」
「はいっ」
黒崎が俺のことを恋人だと言った。俺は友達だと訂正させてもらった。これで話は終わりですと黒崎が男性に言うと、彼の顔が真っ赤になった。来週、仕事で食事をする予定があるそうだ。男性が軽く頭を下げると、黒崎が軽く頷いた。そして、男性も頷いた後、足早に立ち去った。その彼の後ろ姿を見送りながら、俺達は車に戻った。
ATMコーナーから人がどんどん出て行き、あっという間に自分の番になった。貯金を下ろした後、壁の方で財布をリュックの中に入れた。外を見ると、まだ黒崎が電話をしていた。そばに行って待とうかと思ったけれども、電話の邪魔になるといけないから、端の方で待つことにした。
(黒崎さんは受け取ってくれるかな。強引だよね。あ、誰だろう?)
どれぐらい時間が経っただろうか。ぼんやりしていると、後ろから声を掛けられた。久しぶりだねと言っている。振り向くと、知らない男性が立っていた。誰だろうと思って首をかしげると、さらに相手が親しげに近くに来た。学校の先生ではない。誰か分からないから困っていると、彼が俺のことを見て微笑みかけてきた。
「こんにちは。マリーズカフェで隣の席だったんだよ。あの店にはよく行くの?」
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「おかまいなく。すぐ近くにいますから」
「どこに?」
「そこに。電話をしている人です。あれ?いない……」
黒崎の方を向いたら、そこにはいなかった。場所を変えたようだ。声をかけてきた男性から、友達との待ち合わせなら、自分も一緒に遊びに行きたいと言われたから、ナンパ目的だと分かった。今日はこれで二人目だ。週末はナンパが多いのだと思った。黒崎のことを探している俺を見て、さらに彼から声をかけられた。
「怖がらなくてもいいんだよ」
「おかまいなく」
「はっきり言うんだね。そういう子は好きだよ。一緒に待つよ」
「待たれても困ります」
「怒らせたお詫びをさせてよ。美味しいお店が近くにある」
「やめてください。向こうで人が待っているので。あ……、黒崎さん……」
男性から強引に肩を抱かれた。するとその時だ。反対方向から歩いてきた人に腰を抱かれて、彼から引き離された。振り向くと、黒崎が立っていた。やっとナンパから解放されたと思ってホッとした直後、背中に冷たい汗が流れた。黒崎が怒った顔をしていたからだ。さらに、黒崎が男性に声をかけた。
「この子に何か用ですか?」
「知ってる子に似ていたからです!あの……っ」
男性の顔が引きつった。知っている人だったようだ。そして、男性は黒崎の仕事の取引先のようだと思った。もめ事を起こしてしまったことを後悔した。黒崎に謝った方がいいかと思って声をかけようとしたとき、彼から止められた。お前が悪いのでは無いと言われた。そして、ナンパならはっきり断れと叱られてしまった。さらに、黒崎が男性に声をかけた。
「MA企画の原田さんでしたね?」
「は、はいっ。いつも弊社がお世話になっています!」
「こちらこそ。仕事の話は脇に置きましょう。この子に用はありませんね?」
「はいっ。弟さんとは知らずに、申し訳ございませんっ」
「僕の恋人です」
「あの、友達です」
「し、失礼しました。あの、提案させて頂いた件ですが、まさか白紙に……」
「これはプライベートですよ」
「失礼しました!」
「来週、星野でお会いしましょう」
「はいっ」
黒崎が俺のことを恋人だと言った。俺は友達だと訂正させてもらった。これで話は終わりですと黒崎が男性に言うと、彼の顔が真っ赤になった。来週、仕事で食事をする予定があるそうだ。男性が軽く頭を下げると、黒崎が軽く頷いた。そして、男性も頷いた後、足早に立ち去った。その彼の後ろ姿を見送りながら、俺達は車に戻った。
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