眠れる森の星空少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 レストランの中に入った。大きな敷地内に建っている店だ。外から見ると2階建て以上に見えたのに、店内は1階のフロアだけだった。天井が吹き抜けになっているからで、店内が広く感じた。お客さんは、駅周辺で見かけるような仕事帰りのような人ばかりだ。この間の鉄板焼き店といい、この店といい、大人ばかりがいるから、気後れしている。

「緊張しないように個室にしたよ。もっと力を抜いてみようね」
「無理だよ。ファミレスか、ファーストフードしか入らないもん」
「キスのことは気にしていないんだね。嬉しいよ」 
「それは別だよっ」 

 さっきのキスを忘れたわけではない。 大人の世界の店内に面食らっただけだ。 むかむかした気分のままだと、食事が美味しくないと思う。さっさと帰りたくなったが、ここは知らない場所だ。方向音痴だから、迷子になるのは分かり切っている。寮に帰り着いた後で、二度と会わないで済む口実を考えようと思った。

「お箸を頼んでくれたんだよね?ありがとう」
「ナイフとフォークは慣れていないって聞いたからだ。気になって、美味しく食べれないだろう?」 
「その通りだよ。わあー、美味しそう」 

 前菜とスープが終わった後、メインの肉料理が運ばれてきた。和牛を焼いたものだと聞いた。大食いだから、お腹が張るものは大歓迎だ。

「食べっぷりがいいね」 
「よく言われるよ。大食いだし、食べることが好きなんだ。おばあちゃんから作り甲斐があるって言われていたよ」
「へえ。ご健在なのか?」 
「ううん。高校に入る前に亡くなった。両親が忙しくて、おばあちゃんに面倒を見てもらっていたから、寂しかった」 

 どうしてだろう。あんなキスをされたのに話している。早瀬が聞き上手だから、どんどん話題を引き出されている。さらに肩の力が抜けて、落ち着いてきた。

「悠人君の家族構成は?」 
「両親との3人だよ。早瀬さんは?」 
「両親と妹がいる。都内に実家があるけど、ひとり暮らしをしているよ」 
「夏樹から聞いたよ。黒崎製菓の前は黒崎ホールディングスっていう会社で働いていたって。会社の合併で都内へ来たんだよね?いじめっ子上司……、えーっと……」
「いじめっ子上司だと?黒崎さんのことか?」
「ああ……」 

 こっそり黒崎さんのことをいじめっ子のようだと思っていたことがバレてしまった。口が滑ってしまったのは、早瀬の前だと調子が狂うからだ。 失礼なことを口走ったのに、早瀬が吹き出して大笑いをしている。大らかな人だと思った。こういうタイプの人は好きだ。

「言い当てたね。本人に伝えるよ。ははは」 
「やめてよーっ」
「さあ、どうしようかなー?」

 早瀬がいじめっ子のような顔になり、嫌な予感がした。当たってほしくない予感だ。
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